税理士さんとの打ち合わせが終わったあと、編集者の方とシビックプライドをめぐって意見交換をおこなう。読み込んでおくべき資料がいろいろあって知恵熱が出そう。午後三時から七時近くまで、都市フォントの仕様とネーミングに関する社内ミーティング。

某誌に依頼されたエッセイ。五本書いて三つがお蔵入り。畑ちがいとはいえ、予想以上に手こずった。これまで意識していなかった過去の出来事が、いまある自分につながっていることに気づくなど、自己形成に関わる大切な風景を思い出すきっかけになったのは、苦心したからこそといえるだろう。

授業時間内に制作途中の作品を持ってくるように伝えても、ほとんどの学生が持ってこない。そして授業終了のチャイムがなってから列ができる。やはりひとりずつ名前を呼んでチェックしないといけないのか。学生の基礎的な能力に変わりはないが、スマートフォンに対する依存度や、教室・工房でのふるまいに質的な変化を感じる場面が少なくない。

契約とワークフローに関することでわたわたしているうちに一日が終わってしまう。そういえば、週末にこんな句をつくったのだった。ギンザ・グラフィック・ギャラリーのトークショーがはじまるまえ、色部さんが「福田平八郎の『漣(さざなみ)』が大好きで」という話をされていたことを思い出して。

漣や夏の終はりの銀と青    茶門

年内にはじまるかもしれない書体開発の下調べとスケッチ。雨で外出できず未見のDVD映画を観る。このあいだ弟から勧められた『ショーン・オブ・ザ・デッド』はなかなか面白かった。ゾンビ・コメディの走り『死霊のはらわた』は、30年以上まえに映画館で観て、スプラッターで笑わせるサム・ライミ監督の手腕に感服したものである。

『20世紀琳派 田中一光』の図録をひと通り読み終える。図版を眺めていて、これまで繰り返し見ていた、とある作品に小さな発見があった。単純な引用ではなく、意図して分かりにくい画面構成をおこなったのか、あるいは、見慣れた古典作品のエッセンスが手作業を通して自然に現れたのか、たいへん興味深い。

ギンザ・グラフィック・ギャラリーで、色部義昭さん・永井一史さんと鼎談。時間を20分ほどいただき、東京シティフォントをプレゼンした。予約いただいた80席がきれいに埋まったそうで、顔ぶれも一見してデザイナーではない方々が多く(色部さんと私の思惑どおりでもあるのだが)、緊張しながらも、できるだけ平易に、しかし、書体デザインの要点だけは伝えたいと思った。

午前中に小さい規模のプレス発表を行なったあと、AXISフィットフォントを公開した。TP明朝フィットフォントのときにはできなかった、文字サイズの変更とテキスト入力をUIに加え、操作性能を向上させた。
さらに、このフィットフォントサービスを軸に、モノタイプ社およびコマーシャルタイプ社と提携をおこなった。フォントメニューに表示されている両社の欧文フォントと、フィット機能で調整したAXIS Font、もしくはTP明朝と合わせ、ひとつのフォントファイルにして提供できるようになったことは、日本のコーポレートフォント市場にとって意味のある一歩だと考えている。

ギンザ・グラフィック・ギャラリー「WALL展」のオープニングへ。数年にいちどくらいしかこういう場に行かないので間を持てあましていたら、愛知芸大の先輩が三人いらしてくれた。ちゃんと連絡もしていないのに、本当にありがたいことである。いわゆる作家デザイナーが少なく、いつもと違う顔ぶれだねという感想を耳にした。夕食の席では、熱く、暑くるしいほどに、日本のグラフィックデザインについて討議が交わされた。

後期授業の初日はいつも緊張する。Mac使用経験の浅い一年生が、フォントにするためのデータをIllustratorで準備するという作業は、低いハードルではない。そこからラスト3週で、オリジナル書体を使って自分が選んだテキストを組んで作品を完成させるという一連の課題は、私にも小さくないプレッシャーがかかる。夏休み明けにもかかわらず、作品に取り組む学生の姿勢がすばらしく、きょう一日で複数のすぐれた書体をフォント化することができた。
遅い昼をとったあと、手洗い所でこれまで経験したことのない痛いにおそわれて、10分ほど身動きがとれなくなった。よたよた歩いて会社に戻り、しばらくしたら痛みは治まり始めたが、どうにもいやな感じである。

武蔵野の蝶みな黒く舞ひにけり    茶門

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