午前中は欧文の出力物チェック。たらこスパを食べてから自宅を出、無人のオフィスで松山千春を熱唱しながら文字を作る。ザ・ベストテンの中継で『長い夜』を歌う松山千春の姿に、われわれ中学生は心臓をわしづかみにされたのである。そのあと出た『夜よ泣かないで』は、ヒットしなかったけど好きな曲。Sing a song, Make a kanji.

東京は朝から雪。きょうは山下達郎を聴きながら文字を作る。からっとした曲が多いので寒さが増すような気がするけど、ノリが良くて制作がはかどる。高校時代にいちばん聴いたアルバムはMELODIESだったな。なかでも『悲しみのJODY』は繰り返しなんども聴いたっけ。それ以降の曲ではヘロンがいい。しかしこんな雪の日に『ドーナツソング』は困る。無性に食べたくなる。チョコレートがたっぷりかかったオールドファッションが食べたくなる。

あまりに寒いので、予定をすこし変更して終日漢字制作。浜田省吾を聴きながら作りまくる。1983年のSand Castleから2005年のMy First Loveまでノンストップで流す。やっぱり『家路』の「道しるべもない道にひとり」のところはぐっとくるね。

きのうは書体のアイデンティティと開発意義について話しをし、きょうは過去のプロジェクトを別の文脈で再定義する意味について話しをする。具体的な問題意識や明確な目的意識から生じる会話には、さまざまな視点と論点が出来する。雑談は手軽な発火装置にちがいないが、問題意識という着火材がなければ火は熾きない。日ごろから着眼点に磨きをかけること。火ダネはそこらじゅうにある。

昼にベーコンとトマトのオムレツを注文して、三分の一くらい食べたところでお店の人が、「すいませーん、トマト入れ忘れちゃいましたー」と言いながら、ざっくり切った生トマトを皿に盛って現れた。口のなかでブレンドしてノープレブレム。

きのう食べたジンギスカン鍋は美味しかったなあと思いながら文字をつくる。初めて北海道でジンギスカンを食べたとき、隣りに居合わせた初老の夫婦の、惚れ惚れするような飲みっぷりもなつかしい。つぎつぎと大ジョッキが空になり、あっというまに8杯がテーブル並んだ。けっきょくその夫婦はほとんど肉には手をつけず、うちの家族で頂いたのだった。

平井和正が亡くなった。私とって平井和正は、幻魔大戦の人ではなく、圧倒的にウルフガイの作者である。中一のとき読んだ『狼の紋章』は、思春期の人格形成にかなり影響を及ぼした。平井は、石ノ森章太郎と夢枕獏にも影響を与えている。マッドマックスが北斗の拳を招来し、ジョジョへの流れをつくったように、平井原作による8マンは、サイボーグ009の導火線の役割を果たし、ウルフガイの美学がキマイラを降臨し、変化(へんげ)ものの系譜を刺激した。

『プルーストとイカ』が良書だったのでペーパーバックを買って読んでいるのだが、まるで歯が立たず、1日10ページくらい音読するのが精一杯。次はもう少し易しい内容の本にしよう。

昼にまぐろユッケ丼。しみじみうまい。ほおばりながら青春時代に観た映画の話し。高校生の目には、『ストリート・オブ・ファイヤー』のマイケル・パレとダイアン・レインがほんとに格好良く映ったものだった。『48時間』を撮ったウォルター・ヒルならではの、西部劇仕立ての痛快な展開にしびれまくった。30年ぶりに観たらどんなだろう。

小雨。漢字制作。文字を横目に麺、麺を片手に文字。ヌードルライフ。食後に濃いめの珈琲とオレオ。

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