授業の構成を考えて今日中に提出すべしという宿題を昼休みに進める。疲労のせいか胃がガッチガチ。終日漢字制作。
雨。自宅にこもって書体のアイデアスケッチ。気ままに線を走らせて、あるていど納得のいく文字が出来た場合は細部を書き込んでいく。新規のアイデアというよりは、これまで何度か試してきた主題の変奏曲を描いているような感じ。習作を重ねて理想の書体像にアプローチする。
夜更かしと朝寝坊を満喫する。午後からレタースペースに行って漢字をつくり、きざみニンニクをたっぷり入れた野郎ラーメンを食べて帰宅。家人がいなくてハメを外すといってもこのていどなのが裏寂しい。
息子は名古屋、妻は出雲へ。私はオフィスに居残り漢字制作。昼はオムレツ、夜はレバニラ弁当。栄養バランス問題なし。
効力感を得られる仕事と無力感にさいなまれる仕事のギャップがはなはだしい。これまでもっとも苦手にしていたこと、たとえばプレゼンテーションなど人前で話すことは、生きるため稼ぐためというシンプルな目的をまえに、あるときから回避不可能と悟り、入念に準備を行ない場数をこなすことによってどうにかアガっていることを気づかれないていどにはできるようになった(と思いたい)。20代から30代の前半までは、声がふるえるのはもちろんのこと、足はガクガク汗はだらだら、卒倒寸前のありさまだったのだから。
朝と昼に本の片付け。使用頻度の高い本は手の届く範囲に置き、活力源となる本は目の届く範囲に置く。一冊の本がときに杖となりおにぎりとなって、書体制作を乗りきる伴侶となる。ひとり部屋にこもってAXIS Fontを作っていたとき、いつも私の背後にあって精神的な支柱になっていたのは『字統』だった。瞬間的な称賛や批判に一喜一憂したり、一時的な毀誉褒貶に惑わされていては書体の完成と普及はおぼつかない。自分のなかに芽生えた芯は、時間をかければかけるほど強くしなやかに成長する。
レタースペースの二階に追加した書棚に、日本文化と文字関連の大型本を収納した。重量級の本だけに、一階と二階を十数往復したあとは軽い筋肉痛。これで四月から新しいスタッフを迎え入れる空間は確保できた。午後からレディング大学の学生さんの訪問があり、作品を見る。主にコンセプトや指針に関するアドバイスをおくっておいた。
細切れ時間を寄せ集めての漢字制作はみごとに作業効率が落ちる。制作開始からエンジンがかかるまでにはあるていどの時間が必要で、そこからすみやかにトップスピードに乗せて、あとはどれくらい集中力を維持できるかで制作期間は大きく変わる。途中停車駅が多くては、次世代新幹線といえども性能を発揮することはできない。
漢字をすこし作ってから青山ブックセンターへ。雪朱里さんの司会進行で「ぼくたちのつくった書体の話」タイプデザイナー・トーク。小塚さんと同じ演壇で話をするのは今回が初めて。なつかしい顔ぶれを前にいろいろなことを思い出しかみしめた二時間だった。
昼からレタースペースで仕事。礼服を着て漢字をつくる。夕方にはネクタイを締めて恵比寿のウエスティンへ。礼服の下は半袖白シャツ、その下に黒の長袖ヒートテックという出で立ちで、タイプキャッシュ弓場さんの結婚式に参列し讃美歌を歌う。中村勇吾さんのユーモアあふれるスピーチとスライドで幕を開けた披露宴は、最後まで実にユニークな内容で、すっかり楽しませて頂いた。ガーナ出身のパーカッショニストである弓場さんの義兄と弓場さんのお姉さんが弾くピアノのセッションは圧巻だった。弓場さん、めぐみさん、末永くお幸せに。