1日10時間文字を作り、作り直してはまた磨くという日々がいよいよ終わりに近づいている。昨年は夏季休暇をとらず、大晦日までブラッシュアップを継続し、微妙な感覚をこの書体にアジャストし続けた。ディレクターとして重要な仕事が次に控えているため、現在の感覚脳から目的志向の論理脳に移行する必要がある。欲をいえば、気分を切り替えるためのトランジット期間を少し取りたいところ。
きのう時間をかけて書き直した書体概要に目を通し、冗長な部分を削除する。この書体に注いだ熱量にともなう思い入れを抑えるのに苦心したが、慎重に言葉を選び、伝わりやすさを第一に考えた。どの部分がフックになるかは公開してみないとわからない。
午後からレタースペースに行って最新版フォントのチェックシートを出力する。全漢字のデザインを確認。赤の入る文字が30字ていどに収束してきた。リリース前のフォントは磨き上げてこそ、リリース後のフォントは、想定外の環境で使われ厳しい目を注がれてこそ。
テキストに入った修正の意図を読み取り、時間をかけて文章を推敲する。昼は自宅で揚げパン餃子。ケチャップで食べてよし、餃子ダレで食べてよし。おかずにはならないが、昼食のメインディッシュとしての満足度はかなり高い。
書体のコンセプトについて書き散らかしたメモを再読し、テキストを書き起こす。メモの内容はほとんど使いものにならず。要所は、時代の潮目と書体の節目について。
全漢字を対象にした品質チェックとブラッシュアップを一回につき150字ほど施し、フォントを更新してふたたび品質チェックという修正ループが60回を超えた。なかには10回以上磨き直した漢字も少なくない。仮名はもっと多いだろう。カップスープを食べながら仮名単語のチェックシートを眺め、詰め情報の赤入れを行う。こちらも最終段階。満足のいく組面になってきた。
ファミリー展開に必要な調査を新人デザイナーに説明し、土台となる資料の作成を任せ、エンジニアにファミリー展開の内容と意図を説明し、次の準備を依頼する。書体に関する視野と知見、手法に対する興味や仕事の幅はこういう時に広がるものであり、こういう事の積み重ねが会社の基礎体力を向上させる。
自信を持って作った書体に一定の評価が与えられることで、まちがいなく作り手は成長する。友人からの「いいね」評価をライト級とすれば、売り上げの数字はヘビー級の威力がある。鼻をへし折られ、打ちのめされそうになる気持ちを奮い立たせ、次の打開策を考える。フォントを買ってもらうのはたしかにむずかしい。しかし、声援を受けるに値するフォントなら必死で考えよ。そして次のパンチを繰り出すのだ。
複数の文字にまたがる問題を解決する作業に思いのほか時間がかかってしまった。重要な考えをまとめるタイミングと書体開発の最後の山場が重なって少しうわーっとなってる。いずれもここは丁寧にいくべき大事なところなので、まずは気持ちを落ちつかせよう。
タルタルソースを多めにつくってカキフライとエビフライ。エビス with ロブション「華やぎの時間」を飲む。合間にチーズを食べたらビールの味が飛んでしまった。これは刺身と一緒に飲むのが良さそう。