今年おそらくふたつある山場のひとつめが今週だ。乗り切れるかどうかではなく、どのように乗り越えたかが問われる重要な一里塚でもある。その成否によって次の山場が難しくもなり、楽にもなる。春の嵐、春の試練。

きょう誕生日を迎え、四度目の年男となる。次の12年でどこまでいけるか分からないが、書体開発を通じて文字の可能性を広げながら、会社の成長基盤をつくりあげていきたい。まずはこれまで以上に体力の維持促進につとめ、つねに気力を絶やさず、不足しがちな知力を養い、不断に行動力を高める必要がある。こうして書き連ねてみるといかにもたいへんだが、力まず、しかし結果にこだわらなければ、この先の成長は望めない。

来週の授業で使うPDFの資料を作成する。漢字書体の変遷を図版でダイジェスト。宿題との相乗効果を図る。漢字は、長い時間軸でデザインを考えるのに適した素材であり、いまなお日常で使用しているという点で、すぐれて身近な対象でもある。

駅のホームで石神井書林の内堀さんとばったりお会いした。お久しぶりですの挨拶も早々に、池袋に着くまで本の将来について語り合う。「文字はいいよね、動けるから」と内堀さん。いろいろな媒体を選べるぶんだけ紙の本より自由じゃないかと。なるほど。movable typeという名とは裏腹に、物理的な重さによって動きを阻まれている金属活字の現状を思い合わせずにはいられなかった。

来週木曜日に「フォントをデザインする人、フォントでデザインする人」というトークイベントで、ワイデン+ケネディ東京のディレクター 長谷川 踏太さんとご一緒することになった。打ち合わせの席で感じたのは、長谷川さんの柔らかい物腰と、ミニマムで明快な応答のコントラストである。つねにマックス(一杯いっぱい)で混線しがちな私との対比を会場にてお楽しみください。

開発ツールの改善項目をリストアップし、優先順位と担当エンジニアを決めてスケジュールに落とし込む。一つひとつの項目を着実に解決していって、理想のワークフローに近づけたい。二人の新人デザイナーが担当している書体のデザインチェックを行なう。文字サイズや文章のバリエーションなど、作業終盤での判断材料は多いほど良い。

武蔵美授業の初日。担当する1年生のクラス27人に、聴講の希望があった4年生の2人が加わることになった。文字、書体、活字、フォントって何だろうねという話から、持参してもらった雑誌、漫画、単行本を介して全員とコミュニケーションを図る。ファッション雑誌はときどき購読しているようだが、際立って人気の高いものはなく、みごとに趣味嗜好がばらけていた。Pinterestを使っている子は一人だけ。

使用しているSNSについて挙手してもらったら、LINEは9割以上の学生が、Twitterは6割から7割くらい、Facebookは3割ていどの使用率だった。少しおどろいたのは、6割以上の学生がiPhoneユーザーであるにも関わらず、Mac経験者 (1年生) が一人だけだったこと。スマホでだいたい事足りるという意識および生活様式が定着してからこの傾向に拍車がかかった。意外に多いなと感じたのは腕時計の使用率で、3割以上の学生が身につけている、もしくは持ち歩いているという事実である。

上の話をすべて合わせて考えてみると、つながり(ソーシャル)、やりとり(メッセージ)、見た目(ファッション)の3要素を凝縮したApple Watchがこの世代に受け入れられない理由は、実はほとんどないのではあるまいか。いずれ解消されるであろう価格面を除けば、盤石といえる製品なのかもしれない。

春泥をまたもひらめくふくらはぎ    茶門

雨で冷え込んだ東京。トークショーのスライドを大幅に減らす作業とサイトの記載内容に関する打ち合わせ。午後から某イベントのリハーサルを行なう。より分かりやすくなるようこちらはスライドを付け足すことにした。

武蔵美のオリエンテーション用PDFを作成。課題の内容と進め方を毎年すこしずつ変えているので、授業の準備段階から課題が軌道に乗るまでいつも緊張する。夜は自宅でジンギスカン。

ないと思っていた親知らずの存在を知らされておどろいた。歯がしっかりしているうちに抜いておいたほうが良いとの仰せ。三十年ぶりの治療なのでいろいろあるだろうなと覚悟はしていたのだが。

鶯や五十路をまえに親知らず      茶門

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