以前描いた書体のアイデアスケッチを見直す。これはモノにならないかもという書体が、試作段階のある時点を境に固有の輝きを見せることがある。玉になるかどうかは磨いてみないと分からないというわけだ。だから書体づくりはやめられない。
近所のラーメン屋で冷やし担々麺を食べながら、プリントアウトした試作書体を眺め回す。書体ファミリーの展開を可視化するアイデアを青いペンで書き入れる。雷雨が降り出すまえに買いものを済ませ、自宅でフィッシュ&チップス&エビスビール。
夏休みの宿題をやっているらしき息子のうしろで仮名をつくる。小雨が降ったり止んだりの涼しい一日。読みかけの本を読み倒していく。
AXIS Font使用例の仕分けをおこなう。カタログやチラシをまとめて見るといろいろ発見があって面白い。TP明朝とAXIS Fontがコンビで使われている場面に出くわす日が待ち遠しい。午後から1階の仕事場で新入社員の撮影をおこなう。良い空気感の写真が撮れたようだ。次のサイト更新時にアップする予定。
クーラーが効きすぎているように感じたので、近くにいたデザイナー小竹に「ちょっと冷えない?」と聞いてみた。「は?」と聞き返されたので「クーラーが効きすぎて肌寒くないですか」と丁寧に言いなおしたら、「あ、すいません、いま『無』でした」という答えが返ってきた。すかさず「禅か!」と突っ込んだが、オフィスは静寂の極み。「いま『無』でした」がツボに入り、ひとり笑いをこらえていた私は、心のなかでもういちど(禅の道場か)とつぶやいた。それにしても、無我になりうる書体づくりとはいったい、である。
次期書体の仕様を両見さんと確認したあと、新人デザイナーにオリエンテーションをおこなう。漢字合字のデザインチェックと仮名の修正作業を半日。
昨晩進めておいた仮名をデザインチェック用の資料にまとめて先方に送付。お昼まえに別書体のプルーフを大量に出力し、ベーシックなうどんを食べながら眺める。試しにつくってみた図版から、たまたま錯視に関する知見を得る。
ツールの支援がスケジュール的に微妙なため、泥臭い方法で作業を進める。フォントになっている文字がどれほど便利か、こういうときに実感する。カタカナの制作と微調整を終日。定例ミーティングで各プロジェクトの進捗状況を確認する。
漢字が一段落したので、自宅にこもって仮名の試作を進める。進行中プロジェクトの枠組みから外れたアイデアも、とりあえず描いてみて筋の良し悪しを確かめ、書体スケッチとして残しておく。あとで見返して文字を追加したり、形を練ったり細部を磨いたりして、徐々に手ごたえの強さを高めていく。発端の感触は、手がかり足がかりとして重要なだけでなく、ときには中盤の迷いを払拭する拠りどころにもなる。突っ切って生まれるエッジもあれば、研磨のすえに輝くエッジもある。アイデアとフォルム、いずれを問わず。
所沢の古本まつりで資料になりそうな書籍を物色。めぼしい本は一冊だけ。所沢にかぎらず多くの古書市で感じるのは、客数といい古書の充実度といい、トーンダウンする傾向がますます強まっているのではないかということ。勢いとかやる気の有無は隠しようがない。