クーラーが効きすぎているように感じたので、近くにいたデザイナー小竹に「ちょっと冷えない?」と聞いてみた。「は?」と聞き返されたので「クーラーが効きすぎて肌寒くないですか」と丁寧に言いなおしたら、「あ、すいません、いま『無』でした」という答えが返ってきた。すかさず「禅か!」と突っ込んだが、オフィスは静寂の極み。「いま『無』でした」がツボに入り、ひとり笑いをこらえていた私は、心のなかでもういちど(禅の道場か)とつぶやいた。それにしても、無我になりうる書体づくりとはいったい、である。