仮名の描線の抑揚や曲線の質を調整する作業を終日。視覚補正にかかわる微細なところ。息を詰めてアウトラインを触る。ときおり深呼吸して息を整え、モニタから少しはなれて調整した結果を確認する。手で書く文字が呼吸と連動するのは自然なことだが、電子活字に気息を取り込むのは容易ではない。

課題がクリアされるにつれて徐々に見通しが良くなってきた。書体制作を粛々と進める。冬到来。カップ麺率が上がる。

17時に仕事を切り上げて武蔵美へ。1年生タイポグラフィ展『書く描く詩か字か』の講評会。会場が狭いせいでパネルが小さいのがいかにも残念だが、ていねいに見ていくと、かなり出来の良いタイプフェイスの卵が含まれている。拙いながらも、既存フォントと一線を画している点には価値がある。

ことばと向き合いつつ自分の手で文字を書くというぜいたくな時間をじゅうぶん取ったことで見えてきた景色、聞こえてきた音、描かれた筆線の瑞々しさを感じてもらえたらうれしい。

サンセリフのファミリーと明朝体のファミリーが揃ったことで、思いきって次の展開に向かうことができる。まだ端緒に就いところに過ぎないが、それでも二本柱は頼もしい。ツートップで点を取ってくれたら試合の組み立ても楽になる。

昼食を済ませてからレタースペースへ。漢字の修正作業。しばらくばたばたしそうなので進められるときに進めておく。チェック用のシートを出力して自宅で眺める。夜はスンドゥブ・チゲ。寝床で読書。

何年ぶりかでスーツを新調した。ついでにシャツとネクタイもコーディネートしてもらった。着用する状況と当方の要望を伝え、あとはまな板の鯉状態。プロの見立てを信じてお任せする形式は嫌いじゃないし、いろいろ勉強になることのほうが多い。主客どちらの立場であっても、「餅は餅屋」の感覚は大事にしたい。時代の趨勢がよろず屋だけに。

半日書体制作。梅おろしトンカツ。夕方打ち合わせ、プレゼン資料づくりに取りかかる。今年最後の大仕事に向けて。

フォントテスターをリニューアル。Webフォント化したTP明朝を、テキスト入力して確認できるようになった。同じウエイトでコントラストを変えたり、サイズを徐々に小さくしていって、明瞭さの度合いがどのように変わるかなど、さまざまな視点でデザインを吟味できる。このテスターを使っていちばん遊んでるのは、たぶん私だと思う。

いまやっている仕事の次の仕込みについてマネージャーと話しをする。侃々諤々。感覚と論理、将来性と実現性をぶつけ合う。いずれにしても、タイププロジェクトらしいことを、タイププロジェクトらしいやりかたでやるということに変わりはないのだけど。

書体制作のあいまに文章チェックやサイトの確認など。すこしずつ精度をあげていく。地味な改善でも、継続的に行なうことで伝わりかたは変わってくる。書体も文体も、見た目も内容も、磨きをかけなくてはくもりはとれない。実をいえば、作り手にとっては、心のくもりや目のくもりのほうが難敵なのだが。

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