漢字制作。午前中の早い時間帯に波に乗ると、そのあとすこぶる調子が良い。気分が良ければ珈琲も美味い。16時から定例ミーティング。ぎりぎり感はそのままに粛々と。

ブライアン・アーサーの『テクノロジーとイノベーション』を読了。射程が広すぎて散漫な印象を与える『テクニウム』より手がたいアプローチで、テクノロジーの本質に迫ろうとしている。私には『テクノロジーとイノベーション』のほうが刺激の度合いが大きかった。とっつきにくかった三枝博音の『技術の哲学』も今なら面白く読み返せそうだ。夜は自宅でエビス黒とキムチ鍋。

きのう日中があたたかだっただけに今日はことさら寒く感じる。昼まえにレタースペースに入って、夕方まで書体制作に集中。いいペースで進んだ。腰はまだ本調子ではないが、先週に比べれば確実に良くなっている。

税理士さんから決算報告書の説明を受ける。油断は禁物。基盤は堅めるが、守りに入らない。昼はチキンカツのタルタルソース。午後から問い合わせの対応。返答のむずかしいものが複数あり。書体制作少々。師走まえのせわしない十一月のせつなさよ。

切りのいいところまで漢字をつくって、『Typography 06』を読みながら朝のコーヒーを飲む。巻頭特集は「タイプキャッシュが選んだ欧文70書体」。「新書体ができるまで」というコーナで、Source Han Sansとともに、TP明朝を取り上げていただいた。制作プロセスの図版とコンセプトの話題を中心に、4ページ分の記事が掲載されている。書店にて是非。

技術に対する要望と、当面の作業内容についてフリーディスカッションをおこなう。生産性を向上させる取り組みを、どれだけ根本に近いところまで掘り下げて考えるか。今日のところは、皆で意見を出し合って、アイデアを共有できたことをもって収穫としたい。

もろもろ改善に向けた検討と準備をおこなう。ソロホームランよりも、いまは手がたく塁を埋めることを優先させる。ヒットエンドランをかけるにしても、タイミングを逃しては元も子もないし、観客の喜ぶ派手な試合をやるにしても、結果と実力をともなってこそである。まだまだこれから。

直立二足歩行によって人類が手に入れた最大の武器が文字だとすれば、二足歩行の宿命ともいうべき病いは腰痛だろう。座業による文字づくりで腰を痛め、痛めた腰で文字をつくっていると、因果応報の四文字が頭にちらつく。以心伝心のテクノロジーが実現すれば、コミュニケーションのあり方は根底から変わるはずだが、そのとき人間の想像力や表象力が拡張するのか縮退するのか、おそらく、環境と身体がその鍵を握ることになるだろう。座ったままより歩いたほうが、すこしは腰も楽になる。

スイスタイポグラフィ30年:TM誌 1960-90』とアレクセイ・ブロドヴィッチの本が届いたので、ざっと目を通す。今回は図版の資料性よりも、内容を重視して購入を決めた。TM誌のエミール・ルーダー、ハーパーズ バザーのブロドヴィッチ、いずれも同時代および後世のデザイナーに与えた影響は計り知れない。写真と活字のレイアウトにおける圧倒的なクオリティは、自ら築いたシステムやフォーマットを揺さぶる、不断の実践と実験精神によって鍛え上げた独自のスタイルに支えられていた。アルゴリズムで到達できない領域を考えるべき時代に入った今、次のタイポグラフィはどこで生まれるのだろう。

三日前から腰の痛みがひかず、一年ぶりに近所の鍼灸院へ。鍼と電気刺激と整体の三点セットで治療をしてもらう。直後は快調。そのあと調子に乗って漢字をつくっているうちに再び痛みにおそわれ、さすがに自宅へ戻って横になる。ドゥルーズの『ベルグソンの哲学』をちびちびと。からだが動かないので観念する。

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