午前中は漢字制作。文字をつくりながら精神の安定をはかる。気分のムラを書体のユレに反映させないこと。昼はサーモンのスパゲティ。午後から書類関連もろもろ。デザイナー以外の人を対象にしたレクチャーの紹介文を書く。
漢字のデザイン修正を半日。議題の内容と意味を咀嚼しながら定例ミーティング。夜は経理と小競り合い。三月四月はてんこ盛りできりきり舞い必至。
愛知芸大デザイン科の卒業制作展へ。私の同期生が講評会に飛び入りで参加。例年のことながら作品に対するコメントはむずかしい。これでいいんだよと、これではだめなんだという気持ちが交錯する。学生さんたちと会食し、大学の先輩らとともに名古屋を発つ。
名古屋テレビ塔の二階でミラノに経つ友人の送別会。井藤さんの教え子を中心に130人が集まった。大人は早めに会場をひけて、焼き鳥屋で熱のこもったデザイン談義。くすぶった炭にはときどき新鮮な風を送りこむがよろし。
追加のサーバと関連ソフトウェアを注文し、インフラ的なところをパワーアップ。夕方まで漢字のブラッシュアップ。昼散髪、夜名古屋入り。移動中にどの本を読むか、どの資料に目を通すかまだ決めかねている。
2010年代の東京で書体をつくっていることの意味をときどき考える。時代と場所と巡りあわせについて考える。そこで見い出した意味に強い必然性と意義が感じられるならば、それは実現するに値すると考える。個と全が融即するとき、つくり手はもっとも自由になる。
都市フォントのテキスト見直しと図版のまとめ。都市フォントをどうやって事業化するか、これは難問である。文字=公共=無料という多くの人が抱く考えにどう向き合うか。開発のコスト、導入のコスト、保全のコストを誰がどう捻出するのか。そのあたりのことにも今回は触れている。日本のフォントメーカーであれば、1書体の年間売り上げで最低1人の人件費を稼ぐことができなければ、とても経営としては成り立たない。
終日漢字のブラッシュアップ。全体の品質を2%くらい上げるところに水準をおき、対象となる約3400字に赤入れをしながら手直ししていく。組んでみないと分からない部分もあるが、この段階でしっかり作っておくと後の工程が楽になる。
堅調な滑り出しのハイコントラストに続き、TP明朝ローコントラストの販売を開始した。書体に詰めた未来の種を芽吹かせるために、水と光を与えることを怠らずじっくり育てたい。リリースしてからがほんとうの始まりだ。
すぐれた本は劇場のようだ。読む者見る者を日常とは違った時間と空間にいざなってくれる。書物という劇場において書体は役者である。本の内容が中核にあるのはまちがいないが、書体の選び方と使い方で芝居の出来は左右される。そうしてみるとたしかに名優と名書体のありかたには似ているところがある。印刷博物館『世界のブックデザイン2012-13』最終日。たしかな質がそこにある。