新しいスタイルの書体に取り組む前にひと通りの資料にあたってみるのだが、欧文活字のバラエティと資料の豊富さに比べると和文書体は圧倒的に少ない。書体づくりのアプローチや考え方を広げていかなければ、この状況はいっこうに変わらない。

進行中プロジェクトのスケジュールを確認し、次期プロジェクトの陣容を考える。できることがかぎられているぶん真剣にもなるし慎重にもなる。しかし10年後を本気で考えれば、挑戦しないわけにはいかない。

セオリーから外れるので試さなかったアイデアに意外な使い道があった。あなどれない。欧文ペアカーニングの確認など。

急ぎの取材対応が一件。図版をつくり解説を書いて先方に送る。夕食は久しぶりに家族で牛角。

タイププロジェクトの書体デザイナーとエンジニアを伴い小塚さんのもとを訪ねる。退院してから日が浅いのでちょっと心配していたが、お元気そうで何より。

漢字を試作しながら書体の仕様とファミリー構成を考える。それとともに、どういう順で作るか考える。順序はかなり重要。

お蔵入りにしていた書体を新しい文脈に置いてみると意外な一面を見せることがある。豊富な素材が蔵にあれば、いざというとき役に立つ。お客さんと夕食。色とりどりの野菜を食べながら書体デザインの話。

書体の用途を見すえつつ、書体の持ち味を活かせるファミリー構成を検討する。旨み成分を特定し、その旨みをさらに引き出すには、何を尖がらせどこを削るのか。実際には、作らなければいけないと確信が持てるまでは開発候補にも入らない。越えるべきハードルは高い。

開発中フォントに潜在している問題を特定し、修正の要不要および修正方法について意見を交わす。タイプデザインは、書体をデザインするだけでなく、ツールやワークフローと合わせて考えることが重要。

平成のダメな空気がそのまま令和に持ち越された感が強い。こういうときは次に向けた準備を粛々と進めるにかぎる。

 凩も吹かず日本の腑抜け哉    茶門

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