元岩田母型製造所社長の高内一さんのセミナーに参加するため阿佐ヶ谷専門美術学校へ。ベントン彫刻機にまつわるお話をたっぷり三時間半、90歳とは思えない矍鑠たる姿と記憶の確かさにおどろく。昭和二十年代の現場の様子がよく伝わってきたし、なにより当時の業界関係者の活字書体に対するスタンスや考え方について、小塚さん以外の証言を得られたことは収穫だった。私はベントン彫刻機を製造した精密工作機械メーカー津上製作所の存在を重く見る。

ブラウザ上で書体デザインの確認をおこなう。フォント指定で書体の組み合わせをいろいろ変えてみたら、なかば偶然おもしろいコンビネーションを発見した。午前中に面接ひとつ、午後は中期計画に関する長めのミーティング。

昨晩書いた依頼原稿の推敲をおこなう。贅を落として筋がつくよう、1500字ほど書いたテキストを900字まで煮詰め、文言を敲(たた)く。執筆におそろしく時間がかかるので長い文章はとても引き受けられないが、それでも得心のいく文章が書ければ嬉しいのはたしかである。締めの言葉が響けば望外。

今度の書体開発に関しては、数値を参照する効果は予想以上だった。最後は目が頼りとはいえ自分の経験値に足をすくわれた部分が少なからずあったことを認めざるを得ない。くりかえし修正をおこなった漢字にはいくつかの傾向があり、これは定石と考えていた作り方がじつは思いこみだったことを示している。感覚が重要なのはいうまでもないが、方法的なアプローチが軽視されるようなことがあってはならない。堂々めぐりをやめて、別の角度からもっと文字に驚こうじゃないか。

午前中は漢字の磨き上げ、午後から反映チェックと磨き残した文字の洗い出し。磨き作業が終わりしだいプロダクションの工程にバトンを渡す。昼はきのこのスープパスタ。

最終盤につき10時間ブラッシュアップに集中。感覚を鋭敏な状態に保てるのはいいのだが、眼精疲労でモニタの小さな文字がかすんできた。

数値上ではつじつまが合っていても、さいごは目を信じなければいけない。思い込みを避け、どう見えているかを受け入れること。細かな枝葉に目がいってしまうが、見るべきは木(個々の文字)、感じるべきは森(書体)である。

愛知芸大卒業制作展の講評会。例年より明らかにグラフィックの人数が多かったのはなぜだろう。フォントは中国の留学生が制作した一点のみ。授業の打ち合わせのあと卒展の打ち上げ。

朝一で漢字のブラッシュアップを始め、16時まで超集中モードで作業を続ける。そして名古屋へ。

AXISラウンド100、本日リリースを開始。アプリの機能を応用して角丸処理されたAXIS Fontはときどき見かけるが、ラウンド100%は品質維持が難しいせいかほとんど見たことがない。以前からAXISラウンドを求める声はありながらも、開発着手には至らず、ようやく3年前にAXIS Fontでラウンド化の実験をおこない、そこで予想外のユニークさを発見したことで開発を決めたわけである。これまでの力技的な提案とはちがい、自然な流れで出来たフォントといえるだろう。もちろん簡単にはいかなかったが、ここで開発した技術を今後のプロジェクトで活用できれば理想的だ。

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