午前中に漢字制作を切り上げて、Webキャンパス「schoo」で行なう授業の準備に取りかかる。大枠が出来たら社内で見てもらってすこし安心したい。今回二度目とはいっても、生放送というのはかなりのプレッシャーなのだ。ただでさえお腹が弱いのに、この風邪が治らなかったらドタキャンしてやる。
玉川上水のせせらぎを横に木もれ日を抜けて武蔵野美術大学へ。この道はほんとうに気持ちが良い。学生はあまり興味なさげだが、十年経ったら大切な思い出になっていることだろう。流されてしまった時間はすべて忘れてしまうのに、水や雲の流れをぼんやりと眺めていた時間とその風景のことはいつまでもなつかしく思い出される。穏やかな感情を伴った記憶とは不思議なものである。
新人デザイナーがつくった漢字のデザインチェックを行ない、修正箇所をプルーフに書き込み口頭で伝える。基本は骨格。ニュアンスが伝わりにくい数文字だけ私が手を入れる。終日漢字制作。次のステップを考慮して丁寧につくっておく。午後に届いたメールは、帰宅してからまとめて受信返信。特別な一日ではないけど充実した一日。
ジャンプ連載当時に第二部までは読んでいた『ジョジョの奇妙な冒険』を文庫版で第五部まで読み終えた。スタンドが超絶カッコイイ。コミックス版『ジョジョ』の「前巻までのあらすじ」にはピコカジュアルが使われている。70年代前半にこういう書体を世の中に出した小塚さんもカッコイイ。
名古屋快晴。野良着を着て畑仕事をする母と、作業着を着て大工仕事をする父。見慣れた風景ながら、野良着と作業着がまことに板についている。夕食は串カツ。うまそうにビールを飲む父と母。
愛知芸大3年生、書体制作課題の講評会。民謡「こきりこぶし」書体、蜥蜴(トカゲ)書体、エロ俳句書体、細雪「ゆきこ」書体、夢見「にごりえ」書体など、例年にも増してバラエティ豊かな力作秀作がアトリエに並んだ。6週間でここまで作り込んでくるとは思っていなかったので、すこし大げさに言えば、課題に取り組む姿勢と作品の出来映えに感銘を受けた。別のかたちで構わないので、いつかどこかでこのチャレンジを活かしてほしいし、さらにブラッシュアップする人が出てきたら素晴らしいなと思わせる作品群だった。
『Typography 05』に、両見が関わっている日本デザインコミッティーフォントの記事掲載あり。別のコーナーで「最低限覚えておきたい書体メーカー」のひとつにタイププロジェクトの名前が挙がっていて、ちょっとうれしい。今月号の『ブレーン』(vol.647)では、伊藤香織さんがインタビューのなかで都市フォントのことに触れてくださっている。ちっちゃいけど「どぇりゃ〜名古屋」のポスターと金シャチフォントプロジェクト展の写真も載せていただいた。この内面的な「ちょっと」と、対外的な「ちっちゃいけど」の積み重ねが実はけっこう大事なのだ。
前のめりモードで終日漢字制作。来週中にいったん区切りをつけて、保留中プロジェクトの仮名に着手したい。わずか半歩でも前進するために次の仕事はある。
入学から1ヶ月が経ち、学生たちも落ち着きはじめ、筆を運ぶ姿も様になってきた。1クラス27名という編成は、コミュニケーションがとりやすく、全員の名前を覚えるのに時間がかからなくて良い。冷やし中華を食べて会社に戻り、アイスコーヒー片手に漢字制作。
午前中は漢字制作、午後から授業の資料づくり。今年はプレゼンやレクチャーの機会が例年に比べて多くなっている。頭の中を整理できるのは良いのだが、神経が休まらないのが辛いところ。日々の文字づくりと将来の種まき。手は抜けないし気も抜けない。まったく根気のいる仕事だ。