日本橋の「吉野鮨」で江戸前の握りを食べ、界隈を撮影したあと「利久庵」で蕎麦を食べる。立ち寄った百貨店で江戸音曲を生で聴けたのは収穫だった。京橋まで歩いてLIXILギャラリーに行き「金沢の町家〜活きている家作職人の技」展を観る。きびきび立ち働く職人の姿とか、粋な端唄をさらりと披露する芸者の姿は惚れ惚れするね。
エンジニアリング作業の待ち時間を利用して、書体ファミリーの展開に関する実験を行なう。経験的・良識的な判断においていったんは却下したアイデアが、試しにつくってみると意外にいけることが分かった。一歩奥に踏み込む。一歩外へ踏み出す。既成の枠にとらわれてはいけないという教訓をこれまでなんど得ただろう。
日本橋にある伝統的なお店の撮影許可を取りつける。すぐに使うあてはないけれど、ネタを仕入れておいて目になじませておく。新しい主題に向かうとき、こうした準備が気分を盛り上げるのに役に立つ。
朝一の定例ミーティングが終わってから、書体の提供方法について打ち合わせ。さまざまな可能性を検討するも、先方のビジネスモデルが見えないため落としどころが決まらない。いずれにしても当面は個別対応になるだろうし、これもまた我々らしいスタートの切り方ではある。
朝から夕方まで強い雨。仕事場にこもって半角かなの制作。すこしあいだが空いたわりにはテンポよく進む。夕食は自宅でまぐろの山かけ丼。夜風が涼しい。
自分の書いた文章を読み返して頭のなかを整理する。カルピスでひと息。テーマつながりで買った本借りた本の一群を読み進める。歴史と文化は調べるほどに面白い。
予定がひとつキャンセルになったので、実家の本を整理したあと『岳』を読破して東京に戻る。夜はあっさりアジの干物と味噌汁。名古屋の味が濃かったもんで。
岐阜の淡水魚水族館アクア・トトで1.5メートル級のピラルクーとオオナマズを間近で見る。長良川の生態系を再現したコーナーも悪くないが、悠然と泳ぐ巨大魚の姿はまた別格である。こどものころ見た夢のなかでいちばん興奮したのが巨大な魚をつかまえる夢だった。
ホームに着いて新幹線の扉が開いた瞬間のむせかえるような熱気が、この時期の名古屋でないなんてちょっと記憶にない。実家に到着してすぐ畑でとれた西瓜を出してもらい、夕食は定番の海老フライと串カツをいただく。
図版の細部調整を指示し、テキストの推敲をおこなう。おおむね納得のいく内容と仕上がりになった。午後から半角ひらがなのデザインを進める。