「先生、うまく書けません」と嘆く生徒には「この課題は上手に字を書くのが目的ではないので心配ない」と言う。拙くとも筆と墨で書かれた文字は瑞々しい。 おずおずと発せられる肉声を表すなら、むしろたどたどしい文字のほうが似つかわしい。書き手の素に近い文字、真率な声が聞こえるような文字はたいてい好ましい。