アクの強い書体はひとまずおいて、書体の価値を云々する際の基準のひとつは、その書体でしか表現できない固有の雰囲気があるかどうか、だと思う。問題は、書体ごとの雰囲気の違いを感じとる人が少なく、まず圧倒的多数の人が書体のことを気にかけないという事実である。さらに、書体が書体をまねる傾向が強いため、なおさら固有の存在価値がうすれ、ますます違いが分かりにくくなっていくという悪循環を生んでいる。新鮮な空気を巡らせたいのであれば、新たな生息域を求めるべきなのかもしれない。これは実に書体の生き方の問題でもある。