スクーさんの授業に寄せられた質問のなかに「明朝体でCondensedタイプは難しいのでしょうか」という問いかけがあり、ちょっと考え込んだ。コンデンスの明朝体を作ること自体はそれほど難しくないはずだが、ほんのすこし明朝体に長体をかけただけでひどく違和感を感じるのはなぜだろう。簡単な考察から導き出した答えは、「筆の名残りをとどめている明朝体は、極度に様式化されているとはいえ、筆の勢いと抑揚を基盤に成立している。左右の幅が狭いCondensedでは、その勢いを活かすスペースが限られるため、明朝体の良さを出しにくい」というもの。これを延長していえば、書体の持ち味を活かす方向への変形は成立しても、その逆は、たとえ微細な変形でも書体の良さを削いでしまう。「 正方形の明朝体」が視覚的なデフォルトになっている影響は、おそらくもっと大きい。