タイププロジェクトのデザイナーやエンジニアが、書体関連のあれこれを投稿していくブログです。書体デザイン・組版の豆知識や開発の裏話、スタッフおすすめの書籍紹介など幅広い内容でお届けします。

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コピペできない“木”03「テンの4画目」

4画目をテンにする「木」があるとシリーズ初回記事で紹介しましたが、このテンは文字に応じて時には他の筆画より大胆と思える程の調整が入ります。木偏などでは右側にくる要素とぶつかりやすいので、小さくしたり起筆の位置を下げたりしてこれを回避しています。どの文字でも小さく統一すれば良いということはなく、空間に余裕があるときは理想的な大きさと位置に整えます。文字全体から見ると小さなテンかも…

フォントの組版機能09「JIS90字形(jp90)」

図には2種類の「ちまた」という字を並べてみました。皆さん、なじみのある字はどちらでしょうか? 辞書に載っているのは、左のほうです。右は、一時期コンピュータでよく見られた形で、そのころは一部の雑誌や書籍でもこちらの形が使われていましたが、今ではもう、あまり見かけることはなくなりました。 現在タイププロジェクトが提供している日本語フォントは「AXIS Font ProN」「TP明朝…

今月の一冊(2023年7月)『活字に憑かれた男たち』

今回は、片塩二朗著の『活字に憑かれた男たち』を紹介します。 昭和初期の日本を中心に、年号や国を跨ぎながら11人の活字版印刷に深く関わる人物を取り上げています。日本の活字文化の歴史を知るのにおすすめの一冊です。歴史の中で様々な活字が開発され、しかしせっかく揃えられた活字も、多くが戦禍を被り溶かされました。淡々とした歴史書ではなく、それぞれの人物にまつわるエピソードや当時の世情とと…

コピペできない“木”02「幅と高さ」

「村榑樹」など木偏では「木」が縦長になりますが、右側に来る要素に合わせて「木」の幅を細かく変えています。逆に、高さの調整が必要な「宋栄榮」などの漢字もありますし、「棊」のように被さる要素と合わせるときは幅と高さ両方の調整をします。さらに「保新欝」などであれば小さな「木」が必要です。 一緒になる要素とぶつかってしまうなら、一部の筆画を切るようにして混雑を回避することもあります。こ…

TPフォント使用事例紹介 「webサイト その1」

パッケージや書籍、Webサイト、広告など各媒体でのタイププロジェクトのフォントの使われ方を事例を元にご紹介していきます。今回は、Webサイトをまとめてご紹介します。*2023年5月での情報です。 日本ヒューレット・パッカード合同会社 URL:https://www.hpe.com/jp/ja/home.html 【使用されているタイププロジェクトのフォント】 AXIS Font…

TPの書庫から『時代をひらく書体をつくる。』

今回は、雪朱里著の『時代をひらく書体をつくる。 書体設計士・橋本和夫に聞く 活字・写植・デジタルフォントデザインの舞台裏』を紹介します。 本書は、活字・写植・デジタルフォントの三世代に渡って書体を制作、監修し、重要な部分を築いてきた橋本和夫さんのインタビューを通して日本語書体の流れについて触れられる内容になっています。 橋本さんが携わり、各時代を取り巻く環境のもとで作られ使われ…

Webフォントのデザインテクニック05「混植してみよう」

セルフホスティングの場合、フォントの読み込みには @font-face を使います。そのプロパティである unicode-range を使うことで、フォントの使用する文字範囲を指定できるため、複数書体の混植ができます。 ただし、 unicode-range には、フォントデータをサブセットする機能はなく、表示している文字以外のフォントデータも全てダウンロードされることに注意して…

Webフォントのデザインテクニック04「字形を変更しよう」

Webフォントの中には、OpenType機能を使って字形を変更できるものがあります。 たとえば、濱明朝イタリックにはリガチャ liga と任意の合字 dlig が含まれています。これらは CSS で font-feature-settings を指定することで、利用を制御できます。 以下は liga と dlig をそれぞれ有効/無効にしたものを並べたものです。 通常、ブラウザ…

コピペできない“木”01「ハライとテン」

今回からは「木」だけに注目して、漢字制作でどのような調整をしているかの紹介です。「札杉村極機樹呆栄柴新欝…」など「木」が入っている漢字は非常に多く、しかし全ての「木」をコピー&ペーストして使いまわしでは文字として不自然なアウトラインになってしまうので、様々な調整をして一文字一文字に合わせていきます。 まず大きな変更点として、4画目をハライにするかテンにするかの2パターンがありま…

TPの書庫から『江戸の瓦版-庶民を熱狂させたメディアの正体-』

今回は、森田健司著の『江戸の瓦版-庶民を熱狂させたメディアの正体-』を紹介します。 売り子は顔を隠し、作り手の名前もわからない。「瓦版」はそんな怪しげな非合法の印刷物でしたが、江戸から明治にかけて庶民を夢中にさせました。本書ではその瓦版の出版事情や実際に注目された記事が紹介されています。 瓦版はただ無機質に事実を報道するのではなく、分かりやすく面白くニュースを編集して伝えること…

フィットフォントサービスの紹介08「事例3」

これまで同シリーズではAlpine AXISやDENSOのコーポレートフォントをフィットフォントを利用した書体開発・提供の事例としてご紹介しましたが、3つ目の事例はTBSのブランディングフォントとコーポレートフォントのプロジェクトです。 この事例でタイププロジェクトはオリジナルの欧文フォントをデザインし、和文フォントと組み合わせて提供しました。TBSのブランディングフォントとし…

漢字の構成と制作ポイント05「整合性」

一つの部首の作り方に、ある筆画をテンにしたりハライにしたりと、いくつかのパターンが認められている場合があります。文字デザインを広く見たときには自由に選べる選択肢でも、1フォントのデザイン方針の中ではどれか一つだけに限定している場合が多いです。フォントの作りはじめの段階ではいくつかのパターンを試して良いものを選択していき、同じ部首ごとに漢字を並べて異なるパターンのものが混ざってい…

フィットフォントサービスの紹介07「事例 2」

同シリーズの前回記事でフィットフォントの技術を利用して書体開発・提供を行なった事例として「Alpine AXIS」をご紹介しましたが、2つめの事例はDENSOのコーポレートフォントのプロジェクトです。 この事例では、タイププロジェクトの和文フォントと企業側が指定した欧文フォントを組み合せた「組み合わせフォント」を提供しました。タイププロジェクトのAXISフォントのウェイトがKo…

TPの書庫から『書体を創る』

今回は、林隆男著の『書体を創る 林隆男タイプフェイス論集』を紹介します。 本書はタイプバンクの創立者、林隆男さんの追悼として刊行された一冊です。雑誌などに寄稿された書体に関する林さんの論文やインタビューと、親交の深かったデザイナーなど数々の人物から林さんへ寄せられた文章で構成されています。 論集は、フォントの基礎、書体の保護について、またデザインの側面からのみならず、印刷など出…

フォントの組版機能08「メトリクスカーニング」

メトリクスカーニングは、フォント内部の(フォントメーカーが設定した)情報に基づくカーニングです。和文のメトリクスカーニングでは、すでにプロポーショナルメトリクスが適用されていることを前提とした数値が設定されています。欧文はもともとプロポーショナルなので、直接カーニングを適用することが可能ですが、和文の場合、まずプロポーショナルにした上で特定の文字間をカーニングで調整するという二…

フィットフォントサービスの紹介06「事例1」

今回の記事では、フィットフォントの技術を利用して書体開発・提供を行なった事例を紹介します。1つめは、クライアントから提供された欧文フォントに合わせてタイププロジェクトの和文フォントを調整した事例です。 フランスの自動車メーカー AlpineにはProduction Typeによって開発された「Alpine Ascension」 という欧文コーポレートフォントがありました。彼らの…

TPの書庫から『文字の文化史』

今回は、藤枝晃著の『文字の文化史』を紹介します。 本書には象形文字から始まり漢字の誕生、印刷に至るまでの歴史や書体の変遷が書かれています。写経など貴重な図版も豊富です。 皇帝の文字、臣下の文字など現在までに生まれた書体がどのような立場の人のためのもので、その限られた人のものから万人のものになるまでの経緯は興味深かったです。 文字の造形や筆法にのみ焦点を当てたものではなく、筆など…

漢字の構成と制作ポイント04「囲む系」

囲む系の部首には「垂(たれ)」「繞(にょう)」「構(かまえ)」があります。囲む側は強め、中に入るものは弱めに見えるよう大きさを調整します。太さについては中に入るものを一段階細く作り、混雑を避け文字全体のトーンをならします。特に太いウエイトになるほどこの一段階で大きく差をつける傾向があります。以前紹介した「縦画は右に行くほど太く、横画は下に行くほど太く」という原則がありますが、こ…

フォントの組版機能07「カーニングのいろいろ」

特定の文字と文字の間の空きを調整するのが、カーニングです。InDesign/Illustratorのカーニングメニューには、和文等幅、メトリクス(Illustratorのバージョンによっては「自動」)、オプティカル、そして数値指定(手動)があります。 和文等幅は、ベタ組み用の設定です。ベタ組みの場合でも、欧文にはカーニングが効いて欲しいですよね。上図のカーニング0の例を見ると、…

フィットフォントサービスの紹介05「フィーチャーのマージツール」

わたしたちはこれまでの欧文組み合わせの経験からGPOS/GSUBフィーチャーを効率的に統合するためのツールを開発し、フィットフォントサービスでの和文フォントと欧文フォントの統合の際に利用しています。 欧文フォントと日本語フォントを組み合わせてひとつのフォントとする場合、OpenTypeフィーチャーの扱いには注意が必要です。日本語フォント側のグリフが欧文フォントのグリフで上書きさ…