フォントの組版機能17「ライニング数字とオールドスタイル数字(lnum/onum)」

たいていの日本語フォントでは、高さの揃ったライニング数字が採用されています。これに対して、組んだときに上下に凹凸のできる数字が、オールドスタイル数字です。オールドスタイル数字は「Text Figures」または「Lowercase Figures」とも呼ばれ、アルファベットの小文字とマッチするので、欧文組版の本文でよく使われます。 前回は、プロポーショナル数字(pnum)と等幅…

フォントの組版機能16「等幅数字とプロポーショナル数字(tnum/pnum)」

フォントに含まれている数字の話をするとき、「プロポーショナル」または「等幅」という用語が、ちょっとややこしいかんじになりがちです。 一般的な日本語フォントには、デフォルトの数字「0123456789」のほかに全角数字「0123456789」が入っています。一方、欧文フォントにはしばしばプロポーショナル数字(Proportional Figures)と等幅数字(Tabular F…

フォントの組版機能15「エキスパート字形(expt)」

IllustratorやInDesignの字形パネルメニューに「エキスパート字形」という項目がありますが、これって何?という話をします。なるべく専門用語を使わずに短く言うと、昔、JISの文字コード規格が略字を多めに採用していたころに、おそらく「略字ではなく正しい字体を出力する」という意図で策定・実装された文字セットをルーツとするグリフが「エキスパート字形」です。 図は珊瑚の「珊…

フォントの組版機能14「任意の合字(dlig)その2」

前回は、欧文フォントであるHama Mincho Itilicを例として、オプショナルなリガチャを呼び出す「任意の合字(dlig)」について紹介しました。日本語フォント場合、「任意の合字」は、「FAX」を「℻」に、「ミリバール」を「㍊」に、「株式会社」を「㍿」に置き換えるようなパターンのほかに、「JIS」を「〄」のような例もあります。そう言えば、話は完全に脱線しますが、JISマ…

フォントの組版機能13「任意の合字(dlig)」

前回は「欧文合字(liga)」を取り上げました。今回は「任意の合字(dlig)」を紹介します。「任意の合字」という名前がちょっとわかりにくいですが、英語ではDiscretionary Ligaturesです。訳すと「自由裁量合字」とかでしょうか。むしろ、ますますわかりにくくなりましたね。 「欧文合字(liga)」がデフォルトでの利用を想定しているのに対して、「任意の合字(dli…

フォントの組版機能12「欧文合字(liga)」

2つ以上の文字の組み合わせをまとめてデザインしたものを合字(リガチャ)と呼びます。図の例では、fとtが並んだときのくっつき加減の微妙さを、まとめてデザインすることによって解決しています。ftの横画をつなげるだけでなく、tの頭のカット角度も変えてありますね。 欧文合字はデフォルトでオンになっているアプリケーションも多いため、図に掲載したHama Mincho Italicの場合、…

フォントの組版機能11「JIS78字形(jp78)」

「強靱」「靱帯」などの語で使われる「靱」にはバリエーションが多く、字体おたく的には話が長くなりがちな例なのですが、ばっさり削って図には2つだけ並べました。 皆さん、なじみがあるのはおそらく左のほうではないでしょうか。右のほうは、一時期写植機の文字盤で使われていた形で、写植の時代には書籍でよく見かけました。この字体が、写植経由でJISの文字コード規格の1978年版に使用され、それ…

フォントの組版機能10「分数の仲間(afrc/frac)」

OpenTypeフォントの分数には、2種類のスタイルが用意されています。ひとつは横線を使った「分数(afrc)」もうひとつが「スラッシュを用いた分数(frac)」です。 ProN版のAXIS Fontには、分母が2から12までの約分できない真分数と「0/3」と「1/100」が入っています。分子が0の「0/3」が入っている理由は、野球のピッチャーの投球回を表現するため。アウトを1…

フォントの組版機能09「JIS90字形(jp90)」

図には2種類の「ちまた」という字を並べてみました。皆さん、なじみのある字はどちらでしょうか? 辞書に載っているのは、左のほうです。右は、一時期コンピュータでよく見られた形で、そのころは一部の雑誌や書籍でもこちらの形が使われていましたが、今ではもう、あまり見かけることはなくなりました。 現在タイププロジェクトが提供している日本語フォントは「AXIS Font ProN」「TP明朝…

フォントの組版機能08「メトリクスカーニング」

メトリクスカーニングは、フォント内部の(フォントメーカーが設定した)情報に基づくカーニングです。和文のメトリクスカーニングでは、すでにプロポーショナルメトリクスが適用されていることを前提とした数値が設定されています。欧文はもともとプロポーショナルなので、直接カーニングを適用することが可能ですが、和文の場合、まずプロポーショナルにした上で特定の文字間をカーニングで調整するという二…

フォントの組版機能07「カーニングのいろいろ」

特定の文字と文字の間の空きを調整するのが、カーニングです。InDesign/Illustratorのカーニングメニューには、和文等幅、メトリクス(Illustratorのバージョンによっては「自動」)、オプティカル、そして数値指定(手動)があります。 和文等幅は、ベタ組み用の設定です。ベタ組みの場合でも、欧文にはカーニングが効いて欲しいですよね。上図のカーニング0の例を見ると、…

フォントの組版機能06「プロポーショナルメトリクス」

InDesign/Illustratorの[プロポーショナルメトリクス]は、フォントが持っている詰め組み用の字幅情報に基づいて文字を詰める機能です。 フィーチャー・タグは横組み用ならpaltで「Proportional Alternate Widths」を短縮したものです。わたしはpaltを「ぴーあると」と読みますが、英語っぽく「ぴーおると」と読む人もいます。「ぱると」も聞いた…

フォントの組版機能05「Adobeアプリの〈文字ツメ〉」

InDesign/Illustratorには[文字ツメ]という機能があります。前回触れたトラッキングが一律詰めであるのに対して、[文字ツメ]では文字ごとに詰め量が変わります。 [文字ツメ]はパーセンテージで指定しますが、これは「サイドベアリングを何パーセント削るか」を意味しています。たとえば[文字ツメ]100%では、サイドベアリングを完全に削ります。これは前後の文字とバウンディ…

フォントの組版機能04「どの詰め機能を使う?」

Adobe InDesign/Illustratorには、文字を詰めるのに使える機能がいろいろありますが、みなさんどれをよく使いますか? InDesignでは、文字パネルに[カーニング][トラッキング][文字ツメ]があり、[文字パネルメニュー>OpenType機能]に[プロポーショナルメトリクス]があります(Illustratorでは[OpenTypeパネル>プロポーショナルメ…

フォントの組版機能03「詰め組みのしくみ」

前回、OpenTypeフィーチャーにはGPOS(グリフの位置を動かして調整する)とGSUB(グリフを置き換える)があるという話をしました。今回から数回にわたってGPOSについて説明します。 欧文フォントでは、カーニングに加えてアクセント記号などを適切な位置に配置するためにGPOSが使われますが、日本語フォントではGPOSは、主に詰め組みのために使われます。 詰め組みの話は少しや…

漢字と仮名の組み替え05「既製フォントで組み替え」

今回はTPスカイシリーズでできる組み替えサンプルを図に用意しました。漢字は全て同じですが、仮名をコントラストの高いものや、カウンターを絞ったものに組み替え、より漢字・仮名のメリハリがある組版を目指してみました。TPスカイシリーズは4つの軸を持った和文書体で、2段階のラウンド展開も合わせると計91フォントにもなるビックファミリーです。バリエーションが豊かで、そのうえシンプルでクリ…

漢字と仮名の組み替え04「フィットフォントで組み替え」

タイププロジェクトのwebサイトにあるフィットフォントのシミュレーターは、和文と欧文の組み替えだけでなく、漢字と仮名の組み替えにも対応しています。 フィッティングの手順ですが、例えばフォントAをベースに仮名だけをフォントBに組み替えるとして、私の場合は、まずフォントBの仮名の太さや字幅をフォントAの仮名に近づけるところから始めています。近づけた仮名を組替えてから微調整して、表示…

フォントの組版機能02「GPOSとGSUB」

OpenTypeフィーチャーには、「グリフの位置を動かして調整するもの」と「グリフを置き換えるもの」があります。前者をGPOS、後者をGSUBと呼びます。GPOSはGlyph POSitioningの略で、日本語(?)では「じーぽす」と発音します。GSUBはGlyph SUBstitutionの略で、「じーさぶ」です。 図は、一般的なStdNフォントに実装されているGPOS/G…

漢字と仮名の組み替え03「組み替えのポイント」

漢字と仮名を異なるフォントに組み替える際、明朝体とサンセリフ体のような違う系統を組み合わせることがあります。その場合は細部のニュアンス「ストロークに抑揚はあるか、角を丸めているか」「装飾は大ぶりか小ぶりか」「フトコロは広めか狭めか」など、なにか共通点があると馴染ませやすいです。もちろん明朝体同士やサンセリフ体同士のように同じ系統で組み替えるのも合わせやすいでしょう。 どちらの場…

フォントの組版機能01「OpenTypeフィーチャーって何?」

たとえば「にゃー」という文字列を横組みにしたときと縦組みにしたときでは、小書きの「ゃ」と音引き「ー」の形が違っています。当たり前と言えば当たり前の挙動なので、普段あまり意識されることはないかもしれませんが、これもOpenTypeフィーチャーが実現していることのひとつです。 OpenTypeフィーチャーは、文字を読みやすく、あるいは美しく並べるために、OpenTypeフォントが内…