タイププロジェクトのデザイナーやエンジニアが、書体関連のあれこれを投稿していくブログです。書体デザイン・組版の豆知識や開発の裏話、スタッフおすすめの書籍紹介など幅広い内容でお届けします。

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欧文イタリック06「イタリックの傾斜2」

本シリーズの前回記事「イタリックの傾斜角1」では、正体とイタリックを比較してイタリックをどれだけ傾けるかという話をしました。今回は、ひとつのイタリック書体の中でのそれぞれの文字の角度について取り上げたいと思います。 ひとつのイタリックの書体の中でも全てのグリフが幾何学的に同じ角度に傾いているというわけではありません。グリフごとに角度に変化をつける理由は大きく分けて2つあります。…

漢字・ひらがな・カタカナのデザイン03「太さ」

特に太いウェイトを制作する際の注意点として、筆画の太さ調整があります。漢字・ひらがな・カタカナの全ての筆画を数値的に同じ太さにしてもフォントは揃って見えません。 以前「字面」の回でも触れたように、仮名は漢字より画数が少なめでサイズも小さめです。そのため漢字と同じ太さにすると並んだ時に弱く見えてしまいます。付け加えて、この傾向はひらがなよりカタカナの方が強いです。逆に漢字は画数が…

今月の一冊(2021年12月)『街で出会った欧文書体実例集 -THE FIELD GUIDE TO TYPOGRAPHY-』

今回は、Peter Dawson 著、手嶋由美子翻訳の『街で出会った欧文書体実例集 -THE FIELD GUIDE TO TYPOGRAPHY-』をご紹介します。 約120の欧文書体の概要と実際の使用例写真、同カテゴリー書体の比較解説がまとめられています。300ページ越えとボリューミーですが、基本的に1書体1見開きなのでまずは気になる書体だけでも気軽に読めるのが嬉しい一冊です…

欧文イタリック05「イタリックの傾斜1」

本シリーズの前回記事「イタリックのデザインプロセス」の中でイタリックと正体の比較ポイントの一例として文字の傾斜を挙げました。傾斜の強弱は組まれた文全体の印象を左右するので、イタリックの制作やフォント選択の際に着目すべき重要な要素です。 イタリックはもともと速記用の筆記体を活字化した書体のため、傾斜角の強弱は筆記速度の強弱に関連しています。手書きで横書きの文章を書く場合、早く書こ…

TPフォント使用事例紹介「書籍のタイトル その1」

パッケージや書籍、webサイト、広告など各媒体でのタイププロジェクトのフォントの使われ方を事例を元にご紹介していきます。 今回は、AXISラウンド 100 コンデンス* が使用されている書籍をまとめてご紹介します。*一部調整されている文字も含みます。 「プロジェクト・ファザーフッド アメリカで最も凶悪な街で「父」になること」 著者:ジョルジャ・リープ 翻訳:宮﨑真紀 発行:晶文…

Webフォントの概要02「Webフォントの魅力・利点」

Webフォントの利用には、様々な魅力や利点があります。まず、印象の統制とブランドの向上です。前回の記事でも軽く触れたとおり、日本ではまだ Web フォントの利用は多いと言えませんが、ブランドや印象が重要な場面に限って言えば、使われる場面がとても多くなりました。これは、国内の Web デザイン参考サイトなどを見るとよく現れていることが分かるかと思います。 コーポレートサイト、ラン…

今月の一冊(2021年11月)『デザインワークにすぐ役立つ欧文書体のルール』

今回は、カレン・チェン(Karen Cheng)著、白井敬尚 監修、井原恵子 翻訳の『デザインワークにすぐ役立つ欧文書体のルール』を紹介します。 こちらは2006年に『Designing Type』として出版された本の日本語翻訳版です。 欧文書体の歴史や書体制作の基礎知識がまとめられています。欧文書体のデザインには、大文字・小文字・数字・記号などカテゴリーの異なる文字群を一つの…

漢字・ひらがな・カタカナのデザイン02「字面」

フォントの各グリフは「仮想ボディ」と呼ばれる四角い枠にデザインします。さらに和文グリフでは仮想ボディから一回り小さい枠「字面」を設定して、文字の大きさを揃える目安にします。この「字面」でも漢字と仮名で違いがあります。仮名は元々漢字の省略から成り立ったため画数が少めで内部の空間が広くなりやすく、漢字と同じ字面に合わせて作ると文字が大きく見えてしまいます。そのため、一般的には仮名の…

東京シティフォント開発ストーリー02「和文との調和」

和文はTPスカイローコントラストを採用しています。欧文のコンセプトとデザインがある程度固まったところで、和文との調和をとる作業が始まります。試作段階では欧文が小ぶりに見えたため、さまざまな大きさを試し、最適なサイズを探りました。 また、字幅の狭い文字に取り掛かった際には、そのまま欧文を組むと少し上がって見えてしまうという問題点がありました。それを解決するため、欧文を下げることで…

Webフォントの概要01「Webフォントとは」

Web フォントとは、フォントデータをインターネットから読み込み、Web ページをそのフォントで表示することができる技術です。 日本ではまだ常用とは言えませんが、英語圏では既に多くのサイトやサービスが Web フォントを利用しています。 試しに、同じサイトを別のフォントで制作してみました。※これらのサイト・画像の情報は本記事用に作成した架空のものです。 変えているのはフォントの…

21.11.02シリーズその他 / 機械学習と書体

機械学習と書体03「機械学習を用いた書体の品質保証」

※ 本記事はATypI 2019 Tokyoでの発表を元に作成しています。(https://www.youtube.com/watch?v=va0NnxdgrqA) 書体デザインの品質保証を行うのに、人によるチェックだけではなく、機械学習を用いたチェックが行えると考えられています。一貫した書体を持つ文字は、全ての文字で共通の「書体特徴」を持っていると考えられます。その書体特徴を…

今月の一冊(2021年10月)『タテ書きはことばの景色をつくる-タテヨコふたつの日本語がなぜ必要か?-』

今回は、熊谷高幸著の『タテ書きはことばの景色をつくる-タテヨコふたつの日本語がなぜ必要か?-』をご紹介します。 縦書き減少・横書き増加の傾向にある現状を捉えつつ、様々な実験や調査の結果から日本語を分析し、縦書きと横書きが共存する日本語の魅力を再発見していく内容です。 タテヨコ共存を含む日本語の特異性は文中の要所要所でも示されますが、そのような言語を日常的に使い自身の感覚と擦り合…

漢字・ひらがな・カタカナのデザイン01「骨格」

以前このブログでは「漢字・ひらがな・カタカナの組版」と題し3つの文字種を使った日本語表記の特徴を扱いました。 今回からは目線をデザイン作業に引き寄せ、3つの文字種の形状的な特徴や、複数の文字種を一揃いのフォントにするためにどの様な工夫をしているのか、全6回のシリーズでご紹介します。第1回目の今回のテーマは「骨格」です。漢字の骨格には「横画・縦画・点」などの要素があり、動きの違い…

欧文イタリック04「イタリックのデザインプロセス」

書体デザインのプロセスはデザイナーによってそれぞれ異なりますが、正体とイタリックを持つ書体ファミリーでは正体のデザインがある程度定まった段階でイタリックのデザインを行うことが多いです。これは二つのスタイルを同時に組み立てていくよりも、一方のデザインの大枠が決まっていた方がもう一方のデザインを行う際に二者の差を比較しやすいためです。 傾斜角、字幅、字形、起筆や終筆といったパーツの…

漢字・ひらがな・カタカナの組版05「縦組みと横組み」

日本語では縦組みと横組みが使い分けられています。漢字や仮名の多くはどちらの組み方向でも共用できる文字です。一方で、縦組み専用・横組み専用で違いのある文字もあります。例えば90度回転する括弧、位置が変わる小書きの仮名や句読点などです。フォントデータと組版アプリケーションの両方に機能があることで、これらが正しく表示されます。 (担当T)

21.09.27シリーズその他 / 機械学習と書体

機械学習と書体02「機械学習を用いた書体デザイン」

※ 本記事はATypI 2019 Tokyoでの発表を元に作成しています。(https://www.youtube.com/watch?v=va0NnxdgrqA) CJK フォントの開発のために機械学習を用いて、書体デザインを自動的に行う研究がいくつかあります。それらの手法では数文字のデザインだけを書体デザイナーが行い、その他の全ての文字を機械学習により自動的にデザインします…

東京シティフォント開発ストーリー01「欧文デザインの特徴」

東京シティフォントは日本デザインセンターによる街区表示用書体として提供したことから始まりました。粋と言うテーマを中心に、程よい抑揚と少し長体で設計されたデザインを一つの答えとしています。その後、製品版にする際に今までの重要なテーマである交通機関などのサインに加えて、東京の建築群との相性を考慮したデザインを新たに制作しています。 全体的にジオメトリックな雰囲気を持ち、外側はやわら…

今月の一冊(2021年9月)『漢字とカタカナとひらがな-日本語表記の歴史-』

今回は、今野真二著の『漢字とカタカナとひらがな-日本語表記の歴史-』をご紹介します。 日本語表記が現代の漢字仮名交じりに至るまでの紆余曲折を、様々な歴史資料から読み解いていく内容です。古墳時代の銅鏡に始まり『古事記』『万葉集』『平家物語』など誰もが知るような資料も扱われ、日本語学者である著者がそれらの表記をじっくりと細かく観察していきます。 私が特に興味が惹かれたのは書体に注目…

漢字・ひらがな・カタカナの組版04「分かち書きをしない」

日本語では英語やその他の言語で用いられる「分かち書き」をしません。「分かち書き」とは、ワードスペース(空白)で語句の区切りを示すことです。日本語でこれと似た機能を担うのは「漢字仮名交じり」です。漢字・ひらがな・カタカナは表記上の役目に違いがあり、この3字種を使い分ることで語句の区切りも示します。図に①~④の全て同じ発音になり同じ意味を表す文章を用意しました。この中で④の漢字仮名…

21.09.09シリーズその他 / 機械学習と書体

機械学習と書体01「機械学習と書体開発」

※ 本記事はATypI 2019 Tokyoでの発表を元に作成しています。(https://www.youtube.com/watch?v=va0NnxdgrqA) 人工知能や AI というワードをよく見かけますが、これらに使われている技術が機械学習という手法です。現在、この機械学習を書体開発にも活用するために、世界中で研究が進められています。 書体開発の過程の中で機械学習が活…