タイププロジェクトのデザイナーやエンジニアが、書体関連のあれこれを投稿していくブログです。書体デザイン・組版の豆知識や開発の裏話、スタッフおすすめの書籍紹介など幅広い内容でお届けします。

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欧文イタリック07「傾ける文字・傾けない文字」

本シリーズの前回記事「イタリックの傾斜」では傾き具合がもたらす印象の差について書きましたが、今回はひとつのフォントの文字セットの中でどのグリフを傾けるのかについてお話ししたいと思います。 イタリックは横に傾いているデザインが一般的ですが、フォント内の全ての文字が傾いているというわけではありません。フォントに含まれているグリフをひとつひとつ見ていくと正体のままのデザインを保ってい…

Webフォントの概要03「Webフォントの課題」

前回は Web フォントの魅力や利点について書きましたが、Web フォントにはいくつか課題もあります。 一つは料金の問題で、フォント配信サービス・セルフホスティングライセンスは、ほとんどが有料で、これが一つのハードルとなっているようです。また、長い期間残す必要があるサイトの場合は、現在のフォント配信サービスの料金体系と相性が悪い場合があります。 「デザイナーとしては Web フ…

漢字・ひらがな・カタカナのデザイン04「肉付け」

明朝体は書籍の本文などでもよく使用される日本語組版でのスタンダートな書体です。その明朝体の漢字と仮名を見比べると、肉付けがずいぶん異なっています。もともと中国に起源がある明朝体は漢字だけの書体で、筆で書いた文字が木版印刷で効率的に彫刻できるよう整理されていったものが原形です。日本に輸入された後に別途用意された仮名は、筆で書いた楷書をベースに活字向けの調整をしたものでした。さらに…

TPの書庫から『されど鉄道文字』

今回は、中西あきこ著の『されど鉄道文字 駅名標から広がる世界』をご紹介します。 日ごろ電車を利用する中で欠かせない案内や駅名の表示に使用されている書体が、どのようにして選ばれたのか気になりました。タイププロジェクトのAXIS Fontも西武鉄道のサインシステムに使用されており、本書で言及されている鉄道で使われてきた旧い文字から現在までのつながりに興味を持ち選書しました。 職人に…

TPスカイ クラシック欧文開発ストーリー01「TPスカイ クラシックの特徴」

TPスカイ クラシックはサンセリフ体の簡潔明快さと、古典的な楷書の端正さを合わせ持つ書体です。和文の中に含まれる欧文として、開発当初は文字の形の相性が良いものを制作することだけ意識していました。しかし、制作と検証を重ね、形としての相性だけではなく、欧文においても古典的な骨格、トラヤヌス帝の碑文等に見られる大文字、オールドローマン系のスタイルをクラシックの典拠として位置付けていま…

欧文イタリック06「イタリックの傾斜2」

本シリーズの前回記事「イタリックの傾斜角1」では、正体とイタリックを比較してイタリックをどれだけ傾けるかという話をしました。今回は、ひとつのイタリック書体の中でのそれぞれの文字の角度について取り上げたいと思います。 ひとつのイタリックの書体の中でも全てのグリフが幾何学的に同じ角度に傾いているというわけではありません。グリフごとに角度に変化をつける理由は大きく分けて2つあります。…

漢字・ひらがな・カタカナのデザイン03「太さ」

特に太いウェイトを制作する際の注意点として、筆画の太さ調整があります。漢字・ひらがな・カタカナの全ての筆画を数値的に同じ太さにしてもフォントは揃って見えません。 以前「字面」の回でも触れたように、仮名は漢字より画数が少なめでサイズも小さめです。そのため漢字と同じ太さにすると並んだ時に弱く見えてしまいます。付け加えて、この傾向はひらがなよりカタカナの方が強いです。逆に漢字は画数が…

今月の一冊(2021年12月)『街で出会った欧文書体実例集 -THE FIELD GUIDE TO TYPOGRAPHY-』

今回は、Peter Dawson 著、手嶋由美子翻訳の『街で出会った欧文書体実例集 -THE FIELD GUIDE TO TYPOGRAPHY-』をご紹介します。 約120の欧文書体の概要と実際の使用例写真、同カテゴリー書体の比較解説がまとめられています。300ページ越えとボリューミーですが、基本的に1書体1見開きなのでまずは気になる書体だけでも気軽に読めるのが嬉しい一冊です…

欧文イタリック05「イタリックの傾斜1」

本シリーズの前回記事「イタリックのデザインプロセス」の中でイタリックと正体の比較ポイントの一例として文字の傾斜を挙げました。傾斜の強弱は組まれた文全体の印象を左右するので、イタリックの制作やフォント選択の際に着目すべき重要な要素です。 イタリックはもともと速記用の筆記体を活字化した書体のため、傾斜角の強弱は筆記速度の強弱に関連しています。手書きで横書きの文章を書く場合、早く書こ…

TPフォント使用事例紹介「書籍のタイトル その1」

パッケージや書籍、webサイト、広告など各媒体でのタイププロジェクトのフォントの使われ方を事例を元にご紹介していきます。 今回は、AXISラウンド 100 コンデンス* が使用されている書籍をまとめてご紹介します。*一部調整されている文字も含みます。 「プロジェクト・ファザーフッド アメリカで最も凶悪な街で「父」になること」 著者:ジョルジャ・リープ 翻訳:宮﨑真紀 発行:晶文…

Webフォントの概要02「Webフォントの魅力・利点」

Webフォントの利用には、様々な魅力や利点があります。まず、印象の統制とブランドの向上です。前回の記事でも軽く触れたとおり、日本ではまだ Web フォントの利用は多いと言えませんが、ブランドや印象が重要な場面に限って言えば、使われる場面がとても多くなりました。これは、国内の Web デザイン参考サイトなどを見るとよく現れていることが分かるかと思います。 コーポレートサイト、ラン…

今月の一冊(2021年11月)『デザインワークにすぐ役立つ欧文書体のルール』

今回は、カレン・チェン(Karen Cheng)著、白井敬尚 監修、井原恵子 翻訳の『デザインワークにすぐ役立つ欧文書体のルール』を紹介します。 こちらは2006年に『Designing Type』として出版された本の日本語翻訳版です。 欧文書体の歴史や書体制作の基礎知識がまとめられています。欧文書体のデザインには、大文字・小文字・数字・記号などカテゴリーの異なる文字群を一つの…

漢字・ひらがな・カタカナのデザイン02「字面」

フォントの各グリフは「仮想ボディ」と呼ばれる四角い枠にデザインします。さらに和文グリフでは仮想ボディから一回り小さい枠「字面」を設定して、文字の大きさを揃える目安にします。この「字面」でも漢字と仮名で違いがあります。仮名は元々漢字の省略から成り立ったため画数が少めで内部の空間が広くなりやすく、漢字と同じ字面に合わせて作ると文字が大きく見えてしまいます。そのため、一般的には仮名の…

東京シティフォント開発ストーリー02「和文との調和」

和文はTPスカイローコントラストを採用しています。欧文のコンセプトとデザインがある程度固まったところで、和文との調和をとる作業が始まります。試作段階では欧文が小ぶりに見えたため、さまざまな大きさを試し、最適なサイズを探りました。 また、字幅の狭い文字に取り掛かった際には、そのまま欧文を組むと少し上がって見えてしまうという問題点がありました。それを解決するため、欧文を下げることで…

Webフォントの概要01「Webフォントとは」

Web フォントとは、フォントデータをインターネットから読み込み、Web ページをそのフォントで表示することができる技術です。 日本ではまだ常用とは言えませんが、英語圏では既に多くのサイトやサービスが Web フォントを利用しています。 試しに、同じサイトを別のフォントで制作してみました。※これらのサイト・画像の情報は本記事用に作成した架空のものです。 変えているのはフォントの…

21.11.02シリーズその他 / 機械学習と書体

機械学習と書体03「機械学習を用いた書体の品質保証」

※ 本記事はATypI 2019 Tokyoでの発表を元に作成しています。(https://www.youtube.com/watch?v=va0NnxdgrqA) 書体デザインの品質保証を行うのに、人によるチェックだけではなく、機械学習を用いたチェックが行えると考えられています。一貫した書体を持つ文字は、全ての文字で共通の「書体特徴」を持っていると考えられます。その書体特徴を…

今月の一冊(2021年10月)『タテ書きはことばの景色をつくる-タテヨコふたつの日本語がなぜ必要か?-』

今回は、熊谷高幸著の『タテ書きはことばの景色をつくる-タテヨコふたつの日本語がなぜ必要か?-』をご紹介します。 縦書き減少・横書き増加の傾向にある現状を捉えつつ、様々な実験や調査の結果から日本語を分析し、縦書きと横書きが共存する日本語の魅力を再発見していく内容です。 タテヨコ共存を含む日本語の特異性は文中の要所要所でも示されますが、そのような言語を日常的に使い自身の感覚と擦り合…

漢字・ひらがな・カタカナのデザイン01「骨格」

以前このブログでは「漢字・ひらがな・カタカナの組版」と題し3つの文字種を使った日本語表記の特徴を扱いました。 今回からは目線をデザイン作業に引き寄せ、3つの文字種の形状的な特徴や、複数の文字種を一揃いのフォントにするためにどの様な工夫をしているのか、全6回のシリーズでご紹介します。第1回目の今回のテーマは「骨格」です。漢字の骨格には「横画・縦画・点」などの要素があり、動きの違い…

欧文イタリック04「イタリックのデザインプロセス」

書体デザインのプロセスはデザイナーによってそれぞれ異なりますが、正体とイタリックを持つ書体ファミリーでは正体のデザインがある程度定まった段階でイタリックのデザインを行うことが多いです。これは二つのスタイルを同時に組み立てていくよりも、一方のデザインの大枠が決まっていた方がもう一方のデザインを行う際に二者の差を比較しやすいためです。 傾斜角、字幅、字形、起筆や終筆といったパーツの…

漢字・ひらがな・カタカナの組版05「縦組みと横組み」

日本語では縦組みと横組みが使い分けられています。漢字や仮名の多くはどちらの組み方向でも共用できる文字です。一方で、縦組み専用・横組み専用で違いのある文字もあります。例えば90度回転する括弧、位置が変わる小書きの仮名や句読点などです。フォントデータと組版アプリケーションの両方に機能があることで、これらが正しく表示されます。 (担当T)