タイププロジェクトのデザイナーやエンジニアが、書体関連のあれこれを投稿していくブログです。書体デザイン・組版の豆知識や開発の裏話、スタッフおすすめの書籍紹介など幅広い内容でお届けします。

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今月の一冊(2021年10月)『タテ書きはことばの景色をつくる-タテヨコふたつの日本語がなぜ必要か?-』

今回は、熊谷高幸著の『タテ書きはことばの景色をつくる-タテヨコふたつの日本語がなぜ必要か?-』をご紹介します。 縦書き減少・横書き増加の傾向にある現状を捉えつつ、様々な実験や調査の結果から日本語を分析し、縦書きと横書きが共存する日本語の魅力を再発見していく内容です。 タテヨコ共存を含む日本語の特異性は文中の要所要所でも示されますが、そのような言語を日常的に使い自身の感覚と擦り合…

漢字・ひらがな・カタカナのデザイン01「骨格」

以前このブログでは「漢字・ひらがな・カタカナの組版」と題し3つの文字種を使った日本語表記の特徴を扱いました。 今回からは目線をデザイン作業に引き寄せ、3つの文字種の形状的な特徴や、複数の文字種を一揃いのフォントにするためにどの様な工夫をしているのか、全6回のシリーズでご紹介します。第1回目の今回のテーマは「骨格」です。漢字の骨格には「横画・縦画・点」などの要素があり、動きの違い…

欧文イタリック04「イタリックのデザインプロセス」

書体デザインのプロセスはデザイナーによってそれぞれ異なりますが、正体とイタリックを持つ書体ファミリーでは正体のデザインがある程度定まった段階でイタリックのデザインを行うことが多いです。これは二つのスタイルを同時に組み立てていくよりも、一方のデザインの大枠が決まっていた方がもう一方のデザインを行う際に二者の差を比較しやすいためです。 傾斜角、字幅、字形、起筆や終筆といったパーツの…

漢字・ひらがな・カタカナの組版05「縦組みと横組み」

日本語では縦組みと横組みが使い分けられています。漢字や仮名の多くはどちらの組み方向でも共用できる文字です。一方で、縦組み専用・横組み専用で違いのある文字もあります。例えば90度回転する括弧、位置が変わる小書きの仮名や句読点などです。フォントデータと組版アプリケーションの両方に機能があることで、これらが正しく表示されます。 (担当T)

21.09.27シリーズその他 / 機械学習と書体

機械学習と書体02「機械学習を用いた書体デザイン」

※ 本記事はATypI 2019 Tokyoでの発表を元に作成しています。(https://www.youtube.com/watch?v=va0NnxdgrqA) CJK フォントの開発のために機械学習を用いて、書体デザインを自動的に行う研究がいくつかあります。それらの手法では数文字のデザインだけを書体デザイナーが行い、その他の全ての文字を機械学習により自動的にデザインします…

東京シティフォント開発ストーリー01「欧文デザインの特徴」

東京シティフォントは日本デザインセンターによる街区表示用書体として提供したことから始まりました。粋と言うテーマを中心に、程よい抑揚と少し長体で設計されたデザインを一つの答えとしています。その後、製品版にする際に今までの重要なテーマである交通機関などのサインに加えて、東京の建築群との相性を考慮したデザインを新たに制作しています。 全体的にジオメトリックな雰囲気を持ち、外側はやわら…

今月の一冊(2021年9月)『漢字とカタカナとひらがな-日本語表記の歴史-』

今回は、今野真二著の『漢字とカタカナとひらがな-日本語表記の歴史-』をご紹介します。 日本語表記が現代の漢字仮名交じりに至るまでの紆余曲折を、様々な歴史資料から読み解いていく内容です。古墳時代の銅鏡に始まり『古事記』『万葉集』『平家物語』など誰もが知るような資料も扱われ、日本語学者である著者がそれらの表記をじっくりと細かく観察していきます。 私が特に興味が惹かれたのは書体に注目…

漢字・ひらがな・カタカナの組版04「分かち書きをしない」

日本語では英語やその他の言語で用いられる「分かち書き」をしません。「分かち書き」とは、ワードスペース(空白)で語句の区切りを示すことです。日本語でこれと似た機能を担うのは「漢字仮名交じり」です。漢字・ひらがな・カタカナは表記上の役目に違いがあり、この3字種を使い分ることで語句の区切りも示します。図に①~④の全て同じ発音になり同じ意味を表す文章を用意しました。この中で④の漢字仮名…

21.09.09シリーズその他 / 機械学習と書体

機械学習と書体01「機械学習と書体開発」

※ 本記事はATypI 2019 Tokyoでの発表を元に作成しています。(https://www.youtube.com/watch?v=va0NnxdgrqA) 人工知能や AI というワードをよく見かけますが、これらに使われている技術が機械学習という手法です。現在、この機械学習を書体開発にも活用するために、世界中で研究が進められています。 書体開発の過程の中で機械学習が活…

欧文イタリック03「イタリックのデザイン」

イタリックのデザインは正体をほぼ機械的に傾けた様なものから、正体よりもかなり有機的で動きのあるものまで様々で、書体の用途や想定する使用場面によって正体とイタリックのデザイン差の大小が異なります。 本文用書体の正体は長文で組まれることを想定している為、デザイン性よりも読みやすさが優先されることが多いですが、イタリックは数文字から数行程度の量で組まれることが多く、デザインの自由度も…

漢字・ひらがな・カタカナの組版03「漢字が多い」

文章中に多いのは仮名ですが、文字の種類が多いのは漢字です。日本の義務教育では2000字ほどの漢字を習います。なおかつ、様々なシーンで使われるフォントはさらに多くの漢字が必要です。例えばタイププロジェクトの多くのフォントも該当する文字セット「StdN(スタンダード版)」では全体が9500字ほどで、そのうち約7000字の漢字が収録されます。 (担当T)

TPフォント使用事例紹介「伊右衛門 ジャスミン」

パッケージや書籍、webサイト、広告など各媒体でのTPフォントの使われ方を事例を元に紹介していきます。今回は、飲料水の伊右衛門シリーズ「ジャスミン」です。 「現代的なすっきりとした文字で爽やかな香りを表現」伊右衛門 ジャスミンは、華やかな香りと緑茶由来の心地よい渋み・キレが感じられる、 緑茶仕立てのジャスミン茶です。 パッケージの和文部分には、現代的なすっきりとした文字が、 軽…

欧文イタリック02「正体とイタリック」

前回の記事でイタリックの用途として正体と組み合わせることで情報の差別化を行う点に触れました。 この様な用途から、本文用の欧文書体では1つのファミリーの中に正体とイタリック両方を持っていることが多く、組版の際にもMicrosoft Wordやアドビ製品などのアプリケーションではショートカットやボタンを使用して同じ書体ファミリー内の正体とイタリックの切り替えを行うこともできます。 …

漢字・ひらがな・カタカナの組版02「仮名が多い」

現代の日本語の漢字仮名交じり表記では文章のうち6~7割ほどが仮名になることが多いです。ひらがな・カタカナの基本的な文字はそれぞれ46字しかないので、和文フォントの中では使用頻度の高いグループです。仮名だけを別の書体に組換えたり、オリジナル仮名を制作したりすることで、表現したい組版のイメージを調整する手法もあります。 (担当T)

今月の一冊(2021年8月)『Scripts: Elegant Lettering from Design’s Golden Age』

今回は、Steven Heller、Louise Fili 著の『Scripts: Elegant Lettering from Design’s Golden Age』を紹介します。 欧文の筆記体(スクリプト体)の全盛期である19-20世紀のヨーロッパ、アメリカで描かれたスクリプト体を集めたビジュアルブック。看板やパッケージなどのレタリングから、活字書体の見本帳の…

欧文イタリック01「イタリック」

タイププロジェクトでは2020年に濱明朝イタリックをリリースしました。イタリックは日本ではあまり馴染みがない書体スタイルですが、英語などラテンアルファベットを使用するいくつかの言語圏では書籍や辞書などに頻繁に登場します。 日本語の文章の中でよく見られるラテンアルファベットのスタイルは、正体(アップライト)と呼ばれる文字がまっすぐなものです。それに対してイタリックは文字が右向きに…

漢字・ひらがな・カタカナの組版01「3種類の文字」

現代の日本語表記の基本は、漢字・ひらがな・カタカナの3つの文字種を混用する「漢字仮名交じり」です。漢字は中国で生まれた表意文字です。その漢字から音だけを借り、日本独自の表音文字であるひらがなとカタカナができました。漢字を書きくずしたものがひらがな、漢字の一部をとったものがカタカナ、とそれぞれの成り立ちに違いがあります。また、この3字種に加えて英単語や名称などにラテンアルファベッ…

21.08.17シリーズその他 / その他

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