タイププロジェクトのデザイナーやエンジニアが、書体関連のあれこれを投稿していくブログです。書体デザイン・組版の豆知識や開発の裏話、スタッフおすすめの書籍紹介など幅広い内容でお届けします。

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TPフォント使用事例紹介「書籍のタイトル その3」

パッケージや書籍、Webサイト、広告など各媒体でのタイププロジェクトのフォントの使われ方を事例を元にご紹介していきます。 今回は、AXIS Font* が使用されている書籍をまとめてご紹介します。 *一部調整されている文字も含みます。 「音楽を操る マニピュレーターの世界 時代とともに進化し続ける音のプロフェッショナルたち」 企画・監修:INA 取材・構成:今津甲 発行:ヤマハ…

フォントの組版機能02「GPOSとGSUB」

OpenTypeフィーチャーには、「グリフの位置を動かして調整するもの」と「グリフを置き換えるもの」があります。前者をGPOS、後者をGSUBと呼びます。GPOSはGlyph POSitioningの略で、日本語(?)では「じーぽす」と発音します。GSUBはGlyph SUBstitutionの略で、「じーさぶ」です。 図は、一般的なStdNフォントに実装されているGPOS/G…

書体づくりの舞台裏:フォントの赤入れ01「新人へのチェック、W- W+」

タイププロジェクトでは、赤入れと修正を何度も繰り返してフォントの品質を高めていきます。今回からのシリーズでは、TPスカイファミリー制作時の資料からの赤入れをいくつか取り上げて、その指示内容を紹介していきます。 これは私が入社1年目の時、制作した漢字に先輩が赤入れをしてくれたものです。「紕」は偏と旁の間が狭いから糸偏の幅を狭くしてあいだを少し開けるように、「稱」は「冉」のカウンタ…

漢字と仮名の組み替え03「組み替えのポイント」

漢字と仮名を異なるフォントに組み替える際、明朝体とサンセリフ体のような違う系統を組み合わせることがあります。その場合は細部のニュアンス「ストロークに抑揚はあるか、角を丸めているか」「装飾は大ぶりか小ぶりか」「フトコロは広めか狭めか」など、なにか共通点があると馴染ませやすいです。もちろん明朝体同士やサンセリフ体同士のように同じ系統で組み替えるのも合わせやすいでしょう。 どちらの場…

フォントの組版機能01「OpenTypeフィーチャーって何?」

たとえば「にゃー」という文字列を横組みにしたときと縦組みにしたときでは、小書きの「ゃ」と音引き「ー」の形が違っています。当たり前と言えば当たり前の挙動なので、普段あまり意識されることはないかもしれませんが、これもOpenTypeフィーチャーが実現していることのひとつです。 OpenTypeフィーチャーは、文字を読みやすく、あるいは美しく並べるために、OpenTypeフォントが内…

TPの書庫から『江戸の本づくし-黄表紙で読む江戸の出版事情-』

今回は、鈴木俊幸著の『江戸の本づくし-黄表紙で読む江戸の出版事情-』を紹介します。山東京伝作の『御存商売物(ごぞんじのしょうばいもの)』を読みながら、江戸の出版事情を解説する内容です。 『御存商売物』は江戸時代に出版された黄表紙(大人向けの読み物、絵本)で「通」な読者へ向けた小ネタが満載、私の所感でまとめると出版物擬人化ラブコメディです。当時の絵本「青本」「赤本」「黒本」や、浮…

書体づくりの舞台裏:Instagram投稿より「フォントに含まれる様々な点」

今回はタイププロジェクトのInstagramから文字の「点」を集めた投稿の紹介です。「点」は文字の中の小さな要素ですが、それでもきちんとその書体らしさが出ています。 あつめた「点」は以下の5種類です。 「活」の一画目 「j」の点 「,」コンマ 「ぶ」の濁点 「ぷ」の半濁点 左は濱明朝 ディスプレイ H、右は金シャチフォント 姫 Bの点です。 濱明朝 ディスプレイはコンマの点から…

TPフォント使用事例紹介「書籍のタイトル その2」

パッケージや書籍、Webサイト、広告など各媒体でのタイププロジェクトのフォントの使われ方を事例を元にご紹介していきます。 今回は、TP明朝* が使用されている書籍をまとめてご紹介します。 *一部調整されている文字も含みます。 「分析哲学 これからとこれまで」 著者:飯田隆 発行:勁草書房 書籍情報:https://www.keisoshobo.co.jp/book/b51021…

漢字と仮名の組み替え02「SST JP」

今回はタイププロジェクトの漢字仮名組み替え事例としてSST JPをご紹介します。 SSTは、ソニー株式会社とMonotype社が共同開発したコーポレートフォントで、ソニーの製品パッケージや名刺などで使用されています。タイププロジェクトはMonotype社より委託を受け、和文フォントであるSST JPを開発しました。ソニーに提示された「プロダクト感」をデザインに展開したオリジナル…

フィットフォントサービスの紹介02「多様なパラメータの調整」

フィットフォントの最も重要な特徴は、欧文フォントにぴったり合った日本語フォントを提供できるという点です。もちろん、このような用途でバリアブルフォントを利用することも可能でしょう。しかし、バリアブルフォントはフィットフォントの代わりにはなりません。フィットフォントは、フィッティングという目的に焦点を当てて開発されてきたからです。 異なる言語のフォントを組み合わせることをタイププロ…

書体づくりの舞台裏「目玉」

弊社の以前の作業環境では、元データにエラーのあるグリフを「目玉」と呼ばれるアイコンへ置き換えてフォントを出力する設定がありました。一つ目の黒い球体に無数の枝か触手のようなものが生えたなんとも禍々しい姿をしています。視線を落としているのかこちらを見下ろしているのかわかりませんが、私にはこれが物言いた気な表情に見えなくもないのです。このデザインは、私たちを激励するための開発エンジニ…

TPの書庫から『印刷・紙づくりを支えてきた34人の名工の肖像』

今回は、雪朱里著の『印刷・紙づくりを支えてきた34人の名工の肖像』を紹介します。 以前紹介した『書体が生まれる』の中にも出てきた人物が取り上げられていることや、本書で紹介されている職人や技術者が辿ってきた時代や仕事と、自分の携わっている書体デザインに引き寄せてものづくりや仕事について考えてみたいと思い選書しました。 本書は活字、印刷加工や紙づくりを支えてきた職人や技術者へのイン…

TPスカイ モダン Blk 開発ストーリー 03「実験!」

このシリーズの前回の記事で「漢字の試作で骨格や太さの調整をした」という話を紹介しましたが、試作段階では他にもさまざまな調整や実験がありました。例えば、字面率を数パーセント毎に刻んだサンプルです。最終的にはギリギリまで大きめの字面率を採用したので、モダンBlkをベタ組にすると文字と文字の間が狭くみっちり並びます。 他にも太さを意識した実験として、平体をかけたサンプルを作ってみたり…

漢字と仮名の組み替え01「既存の組み替え」

和文組版では漢字と仮名を違う書体に組み替える手法がしばしば活用されています。 以前このブログで、明朝体は成り立ちの違う漢字と仮名が組み合わせられていると紹介しました。他に慣習となっている例としては漫画の組版があります。日本では漫画の台詞を組むのに、漢字はゴシック体、仮名は明朝体仮名に近い毛筆の印象がある書体を組み合わせて使うのが一般的です。また和文フォントの中には、漢字と仮名を…

今月の一冊(2022年6月)『「書体」が生まれる』

今回は、雪朱里 著の「『書体』が生まれる」を紹介します。 刊行記念のオンライントークイベントでは、著者の対談相手をタイププロジェクト代表・タイプディレクターの鈴木功が務めました。 本書では、金属活字における書体デザインを大きく変えた「ベントン彫刻機」と、日本における導入のきっかけとなった「三省堂」について、その歴史が描かれています。 かつて、金属活字は種字彫刻師によって彫られて…

書体づくりの舞台裏「豆腐」

表示できないテキストがあるとき代わりに表示される白い四角、これを無くすための戦いは古くから続けられていますが、それでもご覧になったことのある方は多いかと思います。この白い四角は見かけが似ているため「豆腐」と呼ばれることがあります。フォントによって違うデザインを設定できるので白い四角ではないこともあります。 AXIS Fontの場合「豆腐」は白抜きの四角にバツ印のデザインですが、…

Webフォントの概要05「Webフォントの配信形式:セルフホスティング」

Web フォントには、主に「フォント配信サービスの利用」と「セルフホスティング」の2つの配信形式があります。 ここでは「セルフホスティング」について説明します。 セルフホスティングとは、Web サイト制作者がサーバー上にフォントファイルを置き、サイト内で利用する方法です。 閲覧数や設定をあまり気にせず自由に利用できる反面、単にサーバーに置くだけでは、閲覧者に知識がある場合にフォ…

フィットフォントサービスの紹介01「フィットフォントとは」

タイププロジェクトが提供しているフィットフォントは、ウエイトやコントラスト、字幅などのパラメータを自由に調節できるデザインソリューションです。複数の軸のパラメータをシームレスに調整できるという特徴からバリアブルフォントを思い浮かべる方も多いかと思いますが、フィットフォントはバリアブルフォントとは異なる特徴を持っています。 バリアブルフォントがアプリケーション上のスライダーなどで…

TPの書庫から『日本レタリング史』

今回は谷峯藏 著の『日本レタリング史』を紹介します。 寺社扁額の構成書体(タイポグラフィ)さまざま、和様書流の系譜、江戸期各職域のタイポグラフィ、の三章立てで日本のレタリング史について書かれた本です。 巻頭にたっぷりと掲載されている扁額の書跡が、この本を読もうと思ったきっかけでした。個人的に意外で新鮮に感じたのは、楷書や行書の代表作で知られる平安時代の能筆家が、扁額で…

書体づくりの舞台裏「Slackのカスタム絵文字作ってみた」

ビジネスチャットツール「Slack」では絵文字でのリアクション機能などがあり、デフォルトの絵文字に加えてカスタム絵文字を登録することができます。 「お願いします」「ありがとうございます」などのカスタム絵文字はちょっとした受け答えにも使えて便利です。しかし、小さな正方形にテキストを収めるため過度な長体変形がされているケースを目にします。そこで今回は、字幅のバリエーションが用意され…