欧文イタリック07「傾ける文字・傾けない文字」

本シリーズの前回記事「イタリックの傾斜」では傾き具合がもたらす印象の差について書きましたが、今回はひとつのフォントの文字セットの中でどのグリフを傾けるのかについてお話ししたいと思います。 イタリックは横に傾いているデザインが一般的ですが、フォント内の全ての文字が傾いているというわけではありません。フォントに含まれているグリフをひとつひとつ見ていくと正体のままのデザインを保ってい…

欧文イタリック06「イタリックの傾斜2」

本シリーズの前回記事「イタリックの傾斜角1」では、正体とイタリックを比較してイタリックをどれだけ傾けるかという話をしました。今回は、ひとつのイタリック書体の中でのそれぞれの文字の角度について取り上げたいと思います。 ひとつのイタリックの書体の中でも全てのグリフが幾何学的に同じ角度に傾いているというわけではありません。グリフごとに角度に変化をつける理由は大きく分けて2つあります。…

欧文イタリック05「イタリックの傾斜1」

本シリーズの前回記事「イタリックのデザインプロセス」の中でイタリックと正体の比較ポイントの一例として文字の傾斜を挙げました。傾斜の強弱は組まれた文全体の印象を左右するので、イタリックの制作やフォント選択の際に着目すべき重要な要素です。 イタリックはもともと速記用の筆記体を活字化した書体のため、傾斜角の強弱は筆記速度の強弱に関連しています。手書きで横書きの文章を書く場合、早く書こ…

欧文イタリック04「イタリックのデザインプロセス」

書体デザインのプロセスはデザイナーによってそれぞれ異なりますが、正体とイタリックを持つ書体ファミリーでは正体のデザインがある程度定まった段階でイタリックのデザインを行うことが多いです。これは二つのスタイルを同時に組み立てていくよりも、一方のデザインの大枠が決まっていた方がもう一方のデザインを行う際に二者の差を比較しやすいためです。 傾斜角、字幅、字形、起筆や終筆といったパーツの…

欧文イタリック03「イタリックのデザイン」

イタリックのデザインは正体をほぼ機械的に傾けた様なものから、正体よりもかなり有機的で動きのあるものまで様々で、書体の用途や想定する使用場面によって正体とイタリックのデザイン差の大小が異なります。 本文用書体の正体は長文で組まれることを想定している為、デザイン性よりも読みやすさが優先されることが多いですが、イタリックは数文字から数行程度の量で組まれることが多く、デザインの自由度も…

欧文イタリック02「正体とイタリック」

前回の記事でイタリックの用途として正体と組み合わせることで情報の差別化を行う点に触れました。 この様な用途から、本文用の欧文書体では1つのファミリーの中に正体とイタリック両方を持っていることが多く、組版の際にもMicrosoft Wordやアドビ製品などのアプリケーションではショートカットやボタンを使用して同じ書体ファミリー内の正体とイタリックの切り替えを行うこともできます。 …

欧文イタリック01「イタリック」

タイププロジェクトでは2020年に濱明朝イタリックをリリースしました。イタリックは日本ではあまり馴染みがない書体スタイルですが、英語などラテンアルファベットを使用するいくつかの言語圏では書籍や辞書などに頻繁に登場します。 日本語の文章の中でよく見られるラテンアルファベットのスタイルは、正体(アップライト)と呼ばれる文字がまっすぐなものです。それに対してイタリックは文字が右向きに…