タイププロジェクトのデザイナーやエンジニアが、書体関連のあれこれを投稿していくブログです。書体デザイン・組版の豆知識や開発の裏話、スタッフおすすめの書籍紹介など幅広い内容でお届けします。

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フィットフォントサービスの紹介08「事例3」

これまで同シリーズではAlpine AXISやDENSOのコーポレートフォントをフィットフォントを利用した書体開発・提供の事例としてご紹介しましたが、3つ目の事例はTBSのブランディングフォントとコーポレートフォントのプロジェクトです。 この事例でタイププロジェクトはオリジナルの欧文フォントをデザインし、和文フォントと組み合わせて提供しました。TBSのブランディングフォントとし…

漢字の構成と制作ポイント05「整合性」

一つの部首の作り方に、ある筆画をテンにしたりハライにしたりと、いくつかのパターンが認められている場合があります。文字デザインを広く見たときには自由に選べる選択肢でも、1フォントのデザイン方針の中ではどれか一つだけに限定している場合が多いです。フォントの作りはじめの段階ではいくつかのパターンを試して良いものを選択していき、同じ部首ごとに漢字を並べて異なるパターンのものが混ざってい…

フィットフォントサービスの紹介07「事例 2」

同シリーズの前回記事でフィットフォントの技術を利用して書体開発・提供を行なった事例として「Alpine AXIS」をご紹介しましたが、2つめの事例はDENSOのコーポレートフォントのプロジェクトです。 この事例では、タイププロジェクトの和文フォントと企業側が指定した欧文フォントを組み合せた「組み合わせフォント」を提供しました。タイププロジェクトのAXISフォントのウェイトがKo…

TPの書庫から『書体を創る』

今回は、林隆男著の『書体を創る 林隆男タイプフェイス論集』を紹介します。 本書はタイプバンクの創立者、林隆男さんの追悼として刊行された一冊です。雑誌などに寄稿された書体に関する林さんの論文やインタビューと、親交の深かったデザイナーなど数々の人物から林さんへ寄せられた文章で構成されています。 論集は、フォントの基礎、書体の保護について、またデザインの側面からのみならず、印刷など出…

フォントの組版機能08「メトリクスカーニング」

メトリクスカーニングは、フォント内部の(フォントメーカーが設定した)情報に基づくカーニングです。和文のメトリクスカーニングでは、すでにプロポーショナルメトリクスが適用されていることを前提とした数値が設定されています。欧文はもともとプロポーショナルなので、直接カーニングを適用することが可能ですが、和文の場合、まずプロポーショナルにした上で特定の文字間をカーニングで調整するという二…

フィットフォントサービスの紹介06「事例1」

今回の記事では、フィットフォントの技術を利用して書体開発・提供を行なった事例を紹介します。1つめは、クライアントから提供された欧文フォントに合わせてタイププロジェクトの和文フォントを調整した事例です。 フランスの自動車メーカー AlpineにはProduction Typeによって開発された「Alpine Ascension」 という欧文コーポレートフォントがありました。彼らの…

TPの書庫から『文字の文化史』

今回は、藤枝晃著の『文字の文化史』を紹介します。 本書には象形文字から始まり漢字の誕生、印刷に至るまでの歴史や書体の変遷が書かれています。写経など貴重な図版も豊富です。 皇帝の文字、臣下の文字など現在までに生まれた書体がどのような立場の人のためのもので、その限られた人のものから万人のものになるまでの経緯は興味深かったです。 文字の造形や筆法にのみ焦点を当てたものではなく、筆など…

漢字の構成と制作ポイント04「囲む系」

囲む系の部首には「垂(たれ)」「繞(にょう)」「構(かまえ)」があります。囲む側は強め、中に入るものは弱めに見えるよう大きさを調整します。太さについては中に入るものを一段階細く作り、混雑を避け文字全体のトーンをならします。特に太いウエイトになるほどこの一段階で大きく差をつける傾向があります。以前紹介した「縦画は右に行くほど太く、横画は下に行くほど太く」という原則がありますが、こ…

フォントの組版機能07「カーニングのいろいろ」

特定の文字と文字の間の空きを調整するのが、カーニングです。InDesign/Illustratorのカーニングメニューには、和文等幅、メトリクス(Illustratorのバージョンによっては「自動」)、オプティカル、そして数値指定(手動)があります。 和文等幅は、ベタ組み用の設定です。ベタ組みの場合でも、欧文にはカーニングが効いて欲しいですよね。上図のカーニング0の例を見ると、…

フィットフォントサービスの紹介05「フィーチャーのマージツール」

わたしたちはこれまでの欧文組み合わせの経験からGPOS/GSUBフィーチャーを効率的に統合するためのツールを開発し、フィットフォントサービスでの和文フォントと欧文フォントの統合の際に利用しています。 欧文フォントと日本語フォントを組み合わせてひとつのフォントとする場合、OpenTypeフィーチャーの扱いには注意が必要です。日本語フォント側のグリフが欧文フォントのグリフで上書きさ…

漢字の構成と制作ポイント03「横割り系」

今回は横割り系として、上下分割で構成される漢字の制作ポイントの紹介です。漢字の上側にあるものが「冠(かんむり)」、下側にあるものが「足(あし)」と呼ばれています。 冠ではただ上下に並べるのではなく、被せる・中に入れるといったイメージで作る場合があります。例えば「安」なら「宀」の内側の空間に「女」の頭を食い込ませるようにして作り、見え方としては中の要素に冠が負けないよう調整してい…

今月の一冊(2023年2月)『The Visual History of Type』

今回は、Paul McNeil著、『The Visual History of Type』を紹介します。 本書は1400年代から2000年頃までの厳選された欧文書体を紹介しています。構成はシンプルで、見開きに一書体の見本帳図版、その解説が載っています。そして特筆すべきはその量です。約600年に渡る320書体以上が年代順に並べられ、ページをめくるとともに書体の歴史を感じることがで…

フォントの組版機能06「プロポーショナルメトリクス」

InDesign/Illustratorの[プロポーショナルメトリクス]は、フォントが持っている詰め組み用の字幅情報に基づいて文字を詰める機能です。 フィーチャー・タグは横組み用ならpaltで「Proportional Alternate Widths」を短縮したものです。わたしはpaltを「ぴーあると」と読みますが、英語っぽく「ぴーおると」と読む人もいます。「ぱると」も聞いた…

漢字の構成と制作ポイント02「縦割り系」

漢字の左側にあるものが「偏(へん)」、右側にあるものが「旁(つくり)」です。今回は偏と旁、縦に分割する構成の漢字を作る時のポイントを紹介します。 横に2つの要素をならべるからといって丁度半分ずつの幅で作っても、大抵の文字は綺麗なバランスに見えません。一文字全体で筆画の密度をならすように左右の構成要素の横幅を調整します。このとき間の空き具合も重要で、それぞれの固まりは見えつつも一…

フィットフォントサービスの紹介04「自動フィッティングツール」

タイププロジェクトでは、欧文フォントにぴったり合う日本語フィットフォントを見つける作業「フィッティング」を支援するツールを開発し、利用しています。 このツールは、ターゲットのグリフから水平ステム幅、垂直ステム幅、字幅、キャップハイトなどの情報を取得して比較し、組み合わせる候補となる日本語フィットフォント、組み合わせる際の欧文側の拡大率、ベースラインシフトなどを算出します。こうし…

TPの書庫から「明朝体の歴史」

今回は、竹村真一著の『明朝体の歴史』を紹介します。 本書は紙や布についてや印刷の起源から始まり、文字や書体の変遷、中国での明朝体の発生にいたるまでの経緯、そして日本に伝わって定着するまでの過程がまとめられています。 楷書が変形してどのように明朝体になっていったかについての章では、版下となる書かれた文字と書いた人に対する気持ちや、書道的な持ち味を捨てられずに残った楷書の筆跡が明朝…

Webフォントのデザインテクニック03「改行位置を指定しよう」

大きい見出しなどに Web フォントを利用する場合、画面やウィンドウサイズによっては、改行位置がデザインの意図通りでないものになることがあります。 これを解消するために、改行可能位置を示す<wbr> 要素がありますが、日本語の場合は、1文字1単語と解釈されてどこでも改行してしまうので、現状は、以下のように少し複雑な指定をする必要があります。 上が何もしていないもの、…

フォントの組版機能05「Adobeアプリの〈文字ツメ〉」

InDesign/Illustratorには[文字ツメ]という機能があります。前回触れたトラッキングが一律詰めであるのに対して、[文字ツメ]では文字ごとに詰め量が変わります。 [文字ツメ]はパーセンテージで指定しますが、これは「サイドベアリングを何パーセント削るか」を意味しています。たとえば[文字ツメ]100%では、サイドベアリングを完全に削ります。これは前後の文字とバウンディ…

フィットフォントサービスの紹介03「漢字・仮名・欧文の組み合わせ」

フィットフォントサービスでは、パートナーの欧文フォントとタイププロジェクトの日本語フォントを組み合わせて、ひとつのフォントとして提供することができます。 タイププロジェクトのサイトでは、漢字・仮名・欧文の様々な組み合わせをシミュレートすることができます。画面上のスライドバーでウエイト、コントラスト、字幅、フトコロを調整することで用途に合わせた最適な組み合わせを探すことができます…

今月の一冊(2022年12月)『Reading Letters』

今回は、Sofie Beier著、『Reading Letters』を紹介します。 本書は書体の視認性ついて詳しく解説しています。一見硬いテーマですが、見るだけで納得がいく図版も豊富に取り入れている為、簡単に理解できるように工夫されています。また、視認性という大きなテーマはありつつ、文字の歴史、形状、視点移動や人と文字との距離などといった本当に様々な方面から掘り下げているため飽…