TPの書庫から『文字の美・文字の力』

今回は、杉浦康平編の「文字の美・文字の力」を紹介します。 この本にはアジア圏の様々な文字意匠がまとめられています。韓国の文字絵、京都の「大」文字焼きや、「壽」を印した中国の隈取り、クメールの男性の肌に広がる文字護符の文身など。筆者のアジア文字研究の資料の中から選ばれて掲載された文字意匠は、80点に及びます。 本書は、それらの文字意匠を特徴ごとに分けた5つの章で構成されています。…

欧文イタリック07「傾ける文字・傾けない文字」

本シリーズの前回記事「イタリックの傾斜」では傾き具合がもたらす印象の差について書きましたが、今回はひとつのフォントの文字セットの中でどのグリフを傾けるのかについてお話ししたいと思います。 イタリックは横に傾いているデザインが一般的ですが、フォント内の全ての文字が傾いているというわけではありません。フォントに含まれているグリフをひとつひとつ見ていくと正体のままのデザインを保ってい…

Webフォントの概要03「Webフォントの課題」

前回は Web フォントの魅力や利点について書きましたが、Web フォントにはいくつか課題もあります。 一つは料金の問題で、フォント配信サービス・セルフホスティングライセンスは、ほとんどが有料で、これが一つのハードルとなっているようです。また、長い期間残す必要があるサイトの場合は、現在のフォント配信サービスの料金体系と相性が悪い場合があります。 「デザイナーとしては Web フ…

漢字・ひらがな・カタカナのデザイン04「肉付け」

明朝体は書籍の本文などでもよく使用される日本語組版でのスタンダートな書体です。その明朝体の漢字と仮名を見比べると、肉付けがずいぶん異なっています。もともと中国に起源がある明朝体は漢字だけの書体で、筆で書いた文字が木版印刷で効率的に彫刻できるよう整理されていったものが原形です。日本に輸入された後に別途用意された仮名は、筆で書いた楷書をベースに活字向けの調整をしたものでした。さらに…