今回は、味岡伸太郎著の『味岡伸太郎 書体講座』を紹介します。
本書はグラフィックデザイナーでもあり明朝体フォント「味明」シリーズを手がけた味岡伸太郎氏による書体、タイポグラフィに関する文章が収録されています。書体を作るに至った経緯、字体や書体、著作権等について論じられています。本全体が著者の手掛けた書体で組まれていて、書体の見本帳にもなっています。
「縦組横組考」の章では縦組が主流だった時代から、横組が増えて今では当たり前にそれを受け入れていることについて、歴史や文化を汲んだ日本の書体やタイポグラフィのあり方がどうあってほしいかを批判を交えながら書かれています。著者のように書体やタイポグラフィを批評する目を持ち、論じることができるのは重要で、自分はその言葉を持ち合わせているのかと顧みながら読みました。フォントメーカーで仕事をする私にとってはかなり耳が痛い話も多く、新しい視点を得られた本でした。
書籍情報:
『味岡伸太郎 書体講座』
著者:味岡伸太郎
発行:春夏秋冬叢書
購入情報:
https://www.shinchosha.co.jp/book/129891/
(RK)
用語
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