タイププロジェクトのデザイナーやエンジニアが、書体関連のあれこれを投稿していくブログです。書体デザイン・組版の豆知識や開発の裏話、スタッフおすすめの書籍紹介など幅広い内容でお届けします。

月末にひと月の更新内容を振り返るメールマガジンの配信も行いますので、ぜひご登録ください。

フォントを作る人に聞いてみた その6:数字・記号類の中で好きなグリフ

タイププロジェクトのスタッフ達に「数字・記号類の中で好きなグリフ」は何かを聞いてみました。 フォントの中には様々な数字・記号類があり和文由来のものと欧文由来のものを合わせるとかなりのグリフ数がありますが、回答に上がったのは使用頻度も高く馴染みのあるグリフたちでした。 ・ &: 意味としてはつなぎなのに主役級の華があるように感じていて、ついチェックしてしまう文字です。 ・…

フォントを作る人に聞いてみた その5:好きなラテンアルファベットのグリフ

タイププロジェクトのスタッフ達に「好きなラテンアルファベットのグリフ」は何かを聞いてみました。前回までは漢字・仮名といった和文のグリフについて好きなものを聞いてきましたが、今回は欧文のラテンアルファベットについて好きなグリフを聞いてみました。 回答が多く集まったのは「a」と「g」です。 ・ g:特徴量が多いので、いろんな足し引きがしやすく、バリエーションも多いので、見ても作って…

和文約物03「括弧」

今回はどうにもややこしい括弧類のお話です。丸括弧()やカギ括弧「」のようにいくつかの種類がある上に、それぞれに開きと閉じ、横組み用と縦組み用、全角と半角、と必要なグリフを考えるだけでもちょっとややこしく思えてきます。 括弧のデザインで気をつけたいのが、全角の括弧でも半分の幅でデザインするという点です。組版の括弧前後のアキには様々な設定があるため、半分の幅を超えてデザインすると隣…

純丸明朝 開発ストーリー 2「筆画の細部」

純丸明朝の漢字制作はスケッチから始めました。だいぶ前に描いたものを改めて見て振り返ると気になるところが多いのですが、形がかなり異なっています。先行して制作されていた仮名は、初期の段階ではもう少しコントラストがついていました。そのため、横画や、左ハライの先端はスケッチでは細くなっています。筆画の細部はぼてっとしていて重く、縦画の起筆やウロコのサイズは大きいです。 スケッチと純丸明…

和文約物02「音引き・踊り字」

今回扱うのは音引きと踊り字です。 音引き(ー)はシンプルな一本の線のようでいて、やはり各フォントに合わせてデザインする必要があります。縦組み用と横組み用の作り分けもあり、ただ回転させるのではなく起筆終筆の形を変えたり線の角度を調整したり同じくらいの太さに見えるように細かな調整を加えたりしています。音引きの制作は仮名のデザインが決まった後にしたいと思うこともあるのですが、カタカナ…

ベジエ曲線入門01「ベジエ曲線とは」

ベジエ曲線とは、コンピューターグラフィックでよく使われる、直線や曲線を描くための数学的な手法です。フォント制作や実際にフォントをスクリーンに描画する際も、このベジエ曲線が使われています。 ベジエ曲線は、始点と終点、そして曲がり具合を操作する制御点によって描かれます。 ベジエ曲線はN次の多項式からなる関数で表されるもので、1次・2次・3次…と一般に N 次のベジエ曲線がありますが…

フォントを作る人に聞いてみた その4:好きなカタカナグリフ

タイププロジェクトのスタッフ達に「好きなカタカナグリフ」は何かを聞いた回答を紹介します。 ・ ア: 直線と曲線のバランス ・ ム: きゅっと締まったような形が好きです。 ・ ス、ネ: 築地体5号やイワタ明朝オールドの潰れていて、左ハライが長く鋭い「ス、ネ」はカッコいいから。 ・ タ:鋭いかんじの形。 ・ ヱ:この一文字だけで時代感が出せる強烈さが良いと思います。 上記のようにカ…

和文約物01「句読点」

約物とは、組版で使われる文字数字以外の記号類(句読点や括弧など)の総称です。このシリーズでは約物の中でも主に和文と一緒に制作するグリフの制作ポイントや小話を紹介していきます。今回は使用頻度の高い約物である句読点(。、)です。 テンこと読点(、)は仮名や漢字の点とデザインを合わせます。少し四角っぽいTP明朝 ローコントラストの点や、次の文字への筆脈を思わせる金シャチフォント 姫の…

純丸明朝 開発ストーリー 1「仮名の脈絡」

純明朝と純丸明朝で骨格は同じですが、細部の設計方針には違いがあります。 純明朝では仮名の脈絡の長さが特徴的です。純明朝ヘアラインは特に鋭く長くなっており、筆の流れの優雅さにつながっています。引き締まった骨格とも相まって、クラシックな印象にも影響しています。 対して純丸明朝の特に細いウエイトでは、脈絡が純明朝よりも短く作られています。「あ、お、き」などの横画から縦の動きにつながる…

書体づくりの舞台裏:フォントの赤入れ04「たてる ねかせる、OK」

赤入れでは文字の一画一画も入念にチェックします。ここまでに紹介した「W、S、C、<、><」は文字全体や部首などに書き込まれることが多いのに対し、「たてる、ねかす」は筆画に対して書き込まれることが多い赤入れです。 たてるは「角度を垂直によせる」、ねかせるは「角度を水平によせる」の意味です。どのくらい角度を変えるかは他の文字とのバランスをみて判断します。 必要性から修正指示が多くな…

フォントを作る人に聞いてみた その3:好きなひらがなグリフ2

タイププロジェクトのスタッフ達に「好きなひらがなグリフ」は何かを聞いてみました。 前回の記事ではひらがなのデザインに言及したも回答を紹介しましたが、今回はその次に多かった「名前に使われている文字」というものを紹介します。 ・ も: 自分の名前に入ってることもあり常に向き合ってきた文字だと思います。シルエットはスマートに、横画は繋げて書くのが好きです。 ・ ひ: 「ひ」は名前で一…

フォントを作る人に聞いてみた その3:好きなひらがなグリフ1

タイププロジェクトのスタッフ達に「好きなひらがなグリフ」は何かを聞いてみました。 今回の質問に対しては回答したひらがなを選んだ理由として「書体全体の特徴がよく現れるグリフだから」というものが多くありました。前回の「好きな漢字グリフ」についての回答でもそうでしたが、一つのグリフから書体全体の個性を読み取るのは普段から様々な書体に触れ、いかに個性を持った書体を制作するかを考えている…

意外と多い仮名系グリフ04「まだまだあるよ」

このシリーズではここまでStdNに収録されるグリフを紹介してきました。シリーズ最後の今回はProNなどもっと大きな文字セットになるとさらに増える仮名系グリフの紹介です。 まずは囲み仮名。括弧、丸、四角などの中に仮名が入っているグリフです。StdNでも「㈱㊙︎」のように囲み漢字が収録されていますが、これの仮名バージョンがあります。つぎに組文字、「ユーロ、ルピー、ヘクトパスカル、オ…

今月の一冊(2024年11月)『そこに文字が』

今回は、金田理恵著の「そこに文字が」を紹介します。 文字に関わる人と、その現場を書き記したエッセイが収録されています。印章店、学級通信、時刻表、台本印刷、酒屋の看板、外国語学習など、普段あまり意識しない文字と人の関係を、ゆっくり堪能できます。 色んな人の、文字との接し方を聞ける一冊です。 文字を作るほど、使うほど、文字は奥深いと常々思いますが、この本を読むと文字はもっと身近な存…

書体づくりの舞台裏:フォントの赤入れ03「<、><」

今回紹介するのはV字の赤入れです。V字は書き込む位置や向きで様々な指示ができます。 要素同士のあいだに書き込まれる1つのV字は「あいだが狭くなっているから、空ける」という指示です。横向きでも縦向きでも使えて、縦向きは上図の「組」のように偏と旁の間に書かれたりします。「穐」は横画を細くしてあいだを空けるといいよ、と先輩からアドバイスをもらったのでメモがしてあります。 向かい合った…

今月の一冊(2024年10月)『人間と文字』

今回は、「人間と文字(監修:矢島文夫 / 構成:田中一光)」を紹介します。 エジプト文字体系、メソポタミア文字体系、アルファベット体系、漢字大体系、未解読を含むその他の文字と、文字体系の歴史を文字の誕生から辿ることができる一冊です。 文字が刻まれた様々な壁画や彫像などの解説、収集の際のエピソード、解読状況や、文字と密接な関係にある「文明」についても解説があります。使われていた文…

フォントを作る人に聞いてみた その2:好きな漢字グリフ3

タイププロジェクトのスタッフ達に「好きな漢字グリフ」は何かを聞いてみました。これまでの2記事では部首や構成など複数のグリフをまとめて回答しているものを多く紹介しましたが、今回の記事では1つのグリフを挙げているものを紹介します。 ・ 脩: 好きなというのとはちょっと違うかもしれませんが、この道に進む後押しをしてくれた恩師の名前です。 ・ 矢: 一番馴染み深いものだから ・ CID…

フォントを作る人に聞いてみた その2:好きな漢字グリフ2

タイププロジェクトのスタッフ達に「好きな漢字グリフ」は何かを聞いてみました。今回は漢字の構成について言及されていたものを紹介します。 ・ 東: そのフォントのフトコロや重心がよくわかるから。 ・ 愛:よく見るグリフだからというのもありますが、字面、フトコロ、締まり、抑揚など書体のコンセプトや特性がバランス良く判断できるように思います。 ・ 立春大吉のような左右対称の文字: 細か…