IllustratorやInDesignの字形パネルメニューに「エキスパート字形」という項目がありますが、これって何?という話をします。なるべく専門用語を使わずに短く言うと、昔、JISの文字コード規格が略字を多めに採用していたころに、おそらく「略字ではなく正しい字体を出力する」という意図で策定・実装された文字セットをルーツとするグリフが「エキスパート字形」です。
図は珊瑚の「珊」の字のバリエーションの一部で、右側がエキスパート字形です。その後2000年の表外漢字字体表、2004年の人名用漢字追加分に左側の字体が入ったこともあり、この先右側の字体を見かけたり使ったりする機会はなかなかないかもしれませんが、写植時代の書籍ではちょくちょく出会うことができました。個人的には、字源やら典拠やらがどうのこうのというような話は別にして、単純に形がかっこいいので気に入っています。
(mm)
シリーズアーカイブ 和文組版 / フォントの組版機能
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- フォントの組版機能16「等幅数字とプロポーショナル数字(tnum/pnum)」
- フォントの組版機能15「エキスパート字形(expt)」
- フォントの組版機能14「任意の合字(dlig)その2」
- フォントの組版機能13「任意の合字(dlig)」
- フォントの組版機能12「欧文合字(liga)」
- フォントの組版機能11「JIS78字形(jp78)」
- フォントの組版機能10「分数の仲間(afrc/frac)」
- フォントの組版機能09「JIS90字形(jp90)」
- フォントの組版機能08「メトリクスカーニング」
- フォントの組版機能07「カーニングのいろいろ」
- フォントの組版機能06「プロポーショナルメトリクス」
- フォントの組版機能05「Adobeアプリの〈文字ツメ〉」
- フォントの組版機能04「どの詰め機能を使う?」
- フォントの組版機能03「詰め組みのしくみ」
- フォントの組版機能02「GPOSとGSUB」
- フォントの組版機能01「OpenTypeフィーチャーって何?」