タイププロジェクトのデザイナーやエンジニアが、書体関連のあれこれを投稿していくブログです。書体デザイン・組版の豆知識や開発の裏話、スタッフおすすめの書籍紹介など幅広い内容でお届けします。

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Webフォントの最適化03「ファイル形式」

Web フォントには、いくつかのファイル形式がありますが、現在ではほとんどのケースで WOFF または WOFF2 フォーマットを使うのが良いでしょう。 WOFF / WOFF2 の主な違いは圧縮アルゴリズムで、WOFF2 のほうが圧縮率が高いとされています。2つのフォーマット間には互換性がないため、WOFF2 を WOFF として、もしくは WOFF を WOFF2 として読…

フォントの組版機能15「エキスパート字形(expt)」

IllustratorやInDesignの字形パネルメニューに「エキスパート字形」という項目がありますが、これって何?という話をします。なるべく専門用語を使わずに短く言うと、昔、JISの文字コード規格が略字を多めに採用していたころに、おそらく「略字ではなく正しい字体を出力する」という意図で策定・実装された文字セットをルーツとするグリフが「エキスパート字形」です。 図は珊瑚の「珊…

漢字制作と部首03「作り分け」

フォントで之繞の文字を打ってみると「近送通」と「迚遙迴」のように之繞の点が1つのものと2つのものがあります。他にも、示偏の文字なら「祁祇禰」のような”示”形と「社祝福」のような”ネ”形の2種類です。このようにひとつの部首が複数のバリエーションをもつことがあります。文字セットによっては2種類両方作る文字もあるのですが、2種類目は漢字の意味合いに既視感を覚えつつの制作になります。 …

書体づくりの舞台裏:視覚調整02「線の太さ」

今回は縦画・横画の太さによる視覚調整のポイントを紹介します。 今回の記事で紹介する縦画・横画は、「下ほど太く」「右ほど太く」というルールに沿って制作することが多い例です。これも前回記事の空き部分と同様で、人の目には上部が膨張して見えるためです。 横画の多い「圭」を例に挙げて紹介します。横画の太さや、横画の間の広さを均一にしてしまうと、上側の「土」の方が大きく見えてしまいます。 …

フォントの組版機能14「任意の合字(dlig)その2」

前回は、欧文フォントであるHama Mincho Itilicを例として、オプショナルなリガチャを呼び出す「任意の合字(dlig)」について紹介しました。日本語フォント場合、「任意の合字」は、「FAX」を「℻」に、「ミリバール」を「㍊」に、「株式会社」を「㍿」に置き換えるようなパターンのほかに、「JIS」を「〄」のような例もあります。そう言えば、話は完全に脱線しますが、JISマ…

フォントの組版機能13「任意の合字(dlig)」

前回は「欧文合字(liga)」を取り上げました。今回は「任意の合字(dlig)」を紹介します。「任意の合字」という名前がちょっとわかりにくいですが、英語ではDiscretionary Ligaturesです。訳すと「自由裁量合字」とかでしょうか。むしろ、ますますわかりにくくなりましたね。 「欧文合字(liga)」がデフォルトでの利用を想定しているのに対して、「任意の合字(dli…

漢字制作と部首02「呼び名」

それぞれの部首がどう呼ばれているか、「木偏・竹冠・門構」というようにもとの漢字そのままの名前で呼ばれるものの他に、「さんずい」のように一捻りある名前を持つものもあります。例えば「釈釉釋」などの偏「のごめ」、「段穀殿」などの旁「るまた」といった部首は要素を分解した呼び名です。「酢酔酵」の偏「さけのとり・ひよみのとり」や、「照熱然」の脚「れんが・れっか」では名前が被りそうな他の部首…

書体づくりの舞台裏:視覚調整01「空き部分の広さ」

このシリーズでは、書体づくりの視覚調整について紹介します。 今回は「田」を例に紹介します。 書体づくりの大まかなルールとして、「下側を広く」「右側を広く」なるように調整します。これは、人の目には下部より上部の方が、右より左の方が膨張して見える錯視を考慮しています。 シンプルな構造の「田」で説明します。 「田」という漢字は左右対象な形をしていますが、見た時に同じ大きさに見えるよう…

フォントの組版機能12「欧文合字(liga)」

2つ以上の文字の組み合わせをまとめてデザインしたものを合字(リガチャ)と呼びます。図の例では、fとtが並んだときのくっつき加減の微妙さを、まとめてデザインすることによって解決しています。ftの横画をつなげるだけでなく、tの頭のカット角度も変えてありますね。 欧文合字はデフォルトでオンになっているアプリケーションも多いため、図に掲載したHama Mincho Italicの場合、…

フィットフォントサービスの紹介09「フトコロ軸」

タイププロジェクトではこれまでのフィットフォントサービスによる書体提供の経験をもとに、さらなるサービスの強化のため、技術開発を続けています。 以前の記事で、ウェイト、コントラスト、字幅の3軸を持つ日本で初めての書体ファミリーとして、TPスカイを紹介しました。その次のステップとして4つめの軸を加えたTPスカイを開発し、TPスカイクラシックとして2021年6月にリリースしました。 …

漢字制作と部首01「多い部首」

漢字は部首で分類できることを以前このブログで紹介しました。部首の分類は辞書によって異なったりもするので数字にはブレがありますが、それでも群を抜いて頻出度の高い部首がいくらかあります。制作中特に多いと感じるのは草冠・木偏・さんずい、そして人偏や手偏なども目立ちます。実際にスタンダード版(StdN)の場合、ワ冠の漢字は10字ちょっとであるのに対し草冠は300字以上と文字数がはっきり…

フォントの組版機能11「JIS78字形(jp78)」

「強靱」「靱帯」などの語で使われる「靱」にはバリエーションが多く、字体おたく的には話が長くなりがちな例なのですが、ばっさり削って図には2つだけ並べました。 皆さん、なじみがあるのはおそらく左のほうではないでしょうか。右のほうは、一時期写植機の文字盤で使われていた形で、写植の時代には書籍でよく見かけました。この字体が、写植経由でJISの文字コード規格の1978年版に使用され、それ…

コピペできない“木”04「太さ」

文字の一体感を出すのに太さの調整は欠かせません。中心に来る「木」は横画の調整が多めで、一文字全体の横画の本数や強く見せるべき筆画を意識しながら太さを合わせていきます。逆に、木偏など縦長の「木」で様々な幅に対応するため調整するのは主に縦画の太さです。ハライについては、横に長いハライなら横画を目安に、縦に長いハライなら縦画を目安にしていますが、画数の多い漢字ではあえて細めにして混雑…

Webフォントの最適化02「font-display」

本記事では、前回の記事の知識を前提としています。以下からお読みいただけます。 前回の記事:Webフォントの最適化01「FOIT・FOUT」 CSS の @font-face ルールの中に、font-display という記述子があります。このプロパティではフォントデータの読み込みが完了するまでの間、どのようにテキストを表示するかを定義できます。 font-display には、…

今月の一冊(2023年9月)『味岡伸太郎 書体講座』

今回は、味岡伸太郎著の『味岡伸太郎 書体講座』を紹介します。 本書はグラフィックデザイナーでもあり明朝体フォント「味明」シリーズを手がけた味岡伸太郎氏による書体、タイポグラフィに関する文章が収録されています。書体を作るに至った経緯、字体や書体、著作権等について論じられています。本全体が著者の手掛けた書体で組まれていて、書体の見本帳にもなっています。 「縦組横組考」の章では縦組が…

書体制作の舞台裏「TPの書庫、蔵書について」

スタッフブログ「TPの書庫から」ではおすすめの一冊を紹介していますが、タイププロジェクトの書庫にはたくさん蔵書があります。絶版で手に取りづらい本や、文字にまつわる本の多さに入社した当初驚きました。書体、書の本はもちろん、日本語、そのほか言語にまつわるもの、和歌など広く日本文化にまつわるもの、等々種類は多岐にわたります。 それらのほとんどは弊社の鈴木が集めた本で、読んだものは付箋…

フォントの組版機能10「分数の仲間(afrc/frac)」

OpenTypeフォントの分数には、2種類のスタイルが用意されています。ひとつは横線を使った「分数(afrc)」もうひとつが「スラッシュを用いた分数(frac)」です。 ProN版のAXIS Fontには、分母が2から12までの約分できない真分数と「0/3」と「1/100」が入っています。分子が0の「0/3」が入っている理由は、野球のピッチャーの投球回を表現するため。アウトを1…

Webフォントの最適化01「FOIT・FOUT」

Webフォントの概要03「Webフォントの課題」にて、日本語フォントはフォントデータの容量が大きく、ページの表示に時間がかかるなどの課題があることを説明しました。本シリーズでは、この詳細と最適化手法を紹介します。 まずは、FOIT・FOUTについてです。 Web フォントを使用すると、フォントデータの読み込みに時間がかかります。その間のテキストの扱いは、大まかに以下の2つの選択…

書体制作の舞台裏「TP書体をみかけるとき」

電車の車内広告、本の表紙、商品のパッケージ、美術館のサイン、などなど挙げたらきりがないですがタイププロジェクトのフォントは至る所で見かけます。スタッフブログでも使用事例紹介の記事がありますが、見かけたときに社内で報告しあっています。 入社して間もない頃は、通勤中や出かけたとき目に入ってくる文字を見つつタイププロジェクトのフォントを意識的に探すようにしていました。最初は見分けるの…

TPフォント使用事例紹介 「webサイト その2」

パッケージや書籍、Webサイト、広告など各媒体でのタイププロジェクトのフォントの使われ方を事例を元にご紹介していきます。今回は、Webサイトをまとめてご紹介します。*2023年5月での情報です。 ソニーブランドサイト URL:https://www.sony.com/ja/brand/motionlogo/ 【使用されているタイププロジェクトのフォント】 SST JP ソニーの…