純明朝開発ストーリー2「骨格の特徴 その2」

前回の記事では、純明朝の漢字は縦方向に引き締まっていると書きました。単にフトコロを同じ方向に引き締めればよいのではなく、各々作り方は異なります。純明朝で作り方が特徴的なものや、難しかった例をいくつか挙げてみます。

「日」や「幽」などは他の字とのバランスや大きさ、その字らしいシルエットを意識せずに、縦方向に引き締まった他の字と同じように作ると単に細長くなってしまいます。
「刈」は、りっとうの起筆位置の高さの差をやや強調したり、「斤」では一画目の始まる位置を左に寄せて下にくる横画との位置関係にメリハリをつけています。
「竺」の竹冠では、左右の大きさや太さの差をつけて動きが出るようにしています。右にややせり出すようなイメージです。「秀」の下にくる「乃」の要素はかなり小さめに、「告」は一番上にくる横画の位置を下げるなどして頭の部分を引き締めています。これらは要素の強弱をつけている作り方です。
「並」の点と左ハライなどの要素はやや短くして、すっと速く引く線の速度を意識しています。

上記の特徴や大きさの比率によって、横組みでは漢字と仮名の固有の表情、仮名の脈略や筆の動きが見えやすく、縦組みでは仮名と漢字がともに引き締まっているため縦方向に目が流れるようにラインが揃いフラットで、字面いっぱいの漢字を持った明朝体とは違う印象があります。それを特徴付けている引き締まった漢字の骨格をどのように制作していったか、次回の記事で紹介します。

(RK)

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