今回は、小宮山博史著の『明朝体活字 その起源と形成』を紹介します。
ずっしりと大きめの本で内容もぎっしりと詰まっているのですが、小宮山先生の柔らかな文体と、文章と関連図版を一緒に追えるよう設計された丁寧な紙面で、読み口は優しく感じます。
本書は「もしかすると金属活字の明朝体は中国人ではなくヨーロッパ人が作ったのか?」という疑問から始まりました。そして実際にアジアの国々に留まらず、フランス、イギリス、オーストリアなどヨーロッパの国々も明朝体の形成に関わったことが示されています。さらにそれがいかにして日本に伝わり、国内でどんな発達を経て現代に至るのか。広く長い明朝体の歴史を解き明かそうとする内容です。
豊富な資料がほぼ原寸大で収録されていること、都度細かく活字サイズが確認されていること、そして第八章本文の文字サイズにも注目したいです。金属あるいは木や粘土の活字は大きさが固定されています。大きさが明確であることはより極まったデザインを可能にします。この本が体験させてくれるリアルな大きさから、これは当時の文字がくっきりとした美しさをもつ要因の一つなのだと実感させられました。
書籍情報:
『明朝体活字 その起源と形成』
著者:小宮山博史
発行:グラフィック社
購入情報:
グラフィック社
http://www.graphicsha.co.jp/detail.html?p=42704
(担当T)
用語
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