今回は、正木香子著の『文字の食卓』を紹介します。

本書は著者が主に写植書体に感じる滋味豊かな味わいを思い出と共に綴ったエッセイです。書体ごとに食にまつわることに例えて紹介しているところが特徴的です。各書体の説明には書体の制作背景などと共に、書籍や雑誌、漫画などの事例の一部分が掲載されているので、書体見本帳として眺めて楽しむこともできます。
書体の印象を言葉で伝えることはなかなか難しいことだと思うのですが、著者の書体に対する豊かな感性による観察と、「炊きたてごはん」や「キャラメル」、「珈琲」など理解しやすいように食にまつわることに例えて説明されているので難しいことは考えず感覚的に読むことができます。私自身も紹介されている39書体の中にいつかどこかで出会った書体を見つけて、著者の感性に共感したりまたは別の意見を抱いたり、その書体に出会った当時を思い出しながら読み進めました。特に読書が好きな方など文字に触れることの多い方におすすめの一冊だと思います。
書籍情報:
『文字の食卓』
著者:正木香子
発行:本の雑誌社
購入情報:
紀伊國屋書店
http://www.webdoku.jp/kanko/page/4860112474.html
(KT)
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