メトリクスカーニングは、フォント内部の(フォントメーカーが設定した)情報に基づくカーニングです。和文のメトリクスカーニングでは、すでにプロポーショナルメトリクスが適用されていることを前提とした数値が設定されています。欧文はもともとプロポーショナルなので、直接カーニングを適用することが可能ですが、和文の場合、まずプロポーショナルにした上で特定の文字間をカーニングで調整するという二段構えの手順となります。プロポーショナルメトリクス抜きでメトリクスカーニングを適用するということはあり得ません。
そのようなわけで、InDesign/Illustratorでメトリクスカーニングを指定すると、プロポーショナルメトリクスも同時に適用されます。
ただ、ややこしいのはメトリクスカーニングを適用した上で、さらに手動で調整したいというケースです。手動でカーニングを行うと、InDesign/Illustratorではカーニングのモードがメトリクスカーニングから数値指定へと移行し、その結果、メトリクスカーニングのベースとして適用されていたプロポーショナルメトリクスも無効となるため、体感的には謎のアクションが発生します。これを避けるために、プロポーショナルメトリクスを明示的に適用した上でメトリクスカーニングを利用するのがおすすめです(こうすることで、カーニングのモードが移行してもプロポーショナルメトリクスの効果が残ります)。
(mm)
シリーズアーカイブ 和文組版 / フォントの組版機能
- フォントの組版機能17「ライニング数字とオールドスタイル数字(lnum/onum)」
- フォントの組版機能16「等幅数字とプロポーショナル数字(tnum/pnum)」
- フォントの組版機能15「エキスパート字形(expt)」
- フォントの組版機能14「任意の合字(dlig)その2」
- フォントの組版機能13「任意の合字(dlig)」
- フォントの組版機能12「欧文合字(liga)」
- フォントの組版機能11「JIS78字形(jp78)」
- フォントの組版機能10「分数の仲間(afrc/frac)」
- フォントの組版機能09「JIS90字形(jp90)」
- フォントの組版機能08「メトリクスカーニング」
- フォントの組版機能07「カーニングのいろいろ」
- フォントの組版機能06「プロポーショナルメトリクス」
- フォントの組版機能05「Adobeアプリの〈文字ツメ〉」
- フォントの組版機能04「どの詰め機能を使う?」
- フォントの組版機能03「詰め組みのしくみ」
- フォントの組版機能02「GPOSとGSUB」
- フォントの組版機能01「OpenTypeフィーチャーって何?」