TPの書庫から『書体を創る』

今回は、林隆男著の『書体を創る 林隆男タイプフェイス論集』を紹介します。

本書はタイプバンクの創立者、林隆男さんの追悼として刊行された一冊です。雑誌などに寄稿された書体に関する林さんの論文やインタビューと、親交の深かったデザイナーなど数々の人物から林さんへ寄せられた文章で構成されています。

論集は、フォントの基礎、書体の保護について、またデザインの側面からのみならず、印刷など出力や書体制作の技術の側面からのデジタルフォントの品質についてなど多岐に渡ります。 ディレクターとしてデザイナーに対してどのような書体を作るべきかの要求が書かれた項目や、長い年数を耐えうる書体の必要性について繰り返し書かれている点、また林さんへ寄せられた文章からも文字に対する厳しい目や姿勢が窺えます。 書体の著作物としての保護の章では、書体が著作物として認められず軽視されることなく良い書体が自由に流通できるように尽力された側面も知りました。使う側や人々の生活にもたらされる文字がどうあるべきなのかを考えるのに今に通じることばかりで、現在の文字に携わる人へ向けられているものだと思いました。

続いて『書体を創る 林隆男タイプフェイス論集』に関連して弊社の鈴木から選書へのコメントです。

書体デザイナーになった当初から、書体をデザインする能力より書体をディレクションする能力のほうが稀少ではないかと感じていた。じっさい書体をつくってみないと気づけないことはたくさんあるが、書体をプロデュースしてヒットさせるむずかしさはまた別の次元にある。大きな見取り図を描いたり、俯瞰して書体デザインを見る能力を養う必要があるのではないか、そんなことをおぼろげながら考えはじめた頃、林隆男さんの存在を知った。

『書体を創る』と『味岡伸太郎 書体講座』を合わせて読むことで、日本語書体の課題を再点検できるだろう。
味岡伸太郎さんは、いうまでもなく仮名書体「良寛・小町」のデザイナーである。書と書体デザインをつなぎ、設計思想を自分の言葉で語る稀有な存在だ。本書には氏の考えかたが凝縮されている。

書籍情報:
『書体を創る 林隆男タイプフェイス論集』

著者:林隆男

発行:ジャストシステム

購入情報:

https://www.kosho.or.jp/products/detail.php?product_id=155009355

在庫切れですが、古書で購入できます。

書籍情報:

『味岡伸太郎 書体講座』

著者:味岡伸太郎

発行:春夏秋冬叢書

購入情報:

http://www.h-n-a-f.com/book-etc/syotaikouza2018.html


(RK)

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