TPの書庫から『日本レタリング史』

今回は谷峯藏 著の『日本レタリング史』を紹介します。

寺社扁額の構成書体(タイポグラフィ)さまざま、和様書流の系譜、江戸期各職域のタイポグラフィ、の三章立てで日本のレタリング史について書かれた本です。

巻頭にたっぷりと掲載されている扁額の書跡が、この本を読もうと思ったきっかけでした。個人的に意外で新鮮に感じたのは、楷書や行書の代表作で知られる平安時代の能筆家が、扁額では書風を変え、装飾的で筆太な文字など変化に富んだ意匠を残していることです。

あとがきに『その書体それぞれの呼称も今日では、あいまいになり、「江戸文字」と一括呼称にひっくるめられてしまっている。』とある江戸期のタイポグラフィについて、本文ではその書体の成り立ちとともに各呼称が細かに紹介されているのも印象的でした。

「レタリング」の他に内容から浮かんだ言葉はロゴタイプ・作字・コーポレートフォントなどでした。私はそういった自分自身がリアルタイムで目にしている文字デザインと繋げたり置き換えたりして読み進めるのが楽しかったです。

続いてタイププロジェクトの代表・鈴木功から『日本レタリング史』へのコメントと関連書籍の紹介です。

歴史を目いっぱいさかのぼって日本の書き文字(おもにディスプレイ書体)を収集した本書は、レタリングという言葉のさす範囲を広くとった点において近年の嗜好にかなう内容だろう。レタリング史に書史を加えることの可否はあろうが、日本の文字とりわけ江戸文字を語るうえでレタリングの視点は欠かせない。

筆文字を対象にした『日本レタリング史』の領域をさらに広げ、彫った文字を含めてレタリングを考えたい人は『祈りの文字』と『町まちの文字』(蓜島庸二 著)がおすすめ。2020年にこの二冊が合冊となって眺められるようになったのは喜ばしい。
レタリングは、いつしかタイポグラフィ・描き文字・作字と呼ばれるようになったが、看板文字にletter(文字を書く)の現在進行形をあてた人の感覚はすばらしい。

書籍情報:

『日本レタリング史』

著者:谷峯藏

発行:岩崎美術社

購入情報:

発行元は廃業、アマゾンで現在新品の在庫はなく中古品が購入できます。

https://www.amazon.co.jp/日本レタリング史-谷-峯蔵/dp/475341261X

書籍情報:

『町まちの文字 完全版』

著者:蓜島庸二

発行:グラフィック社

購入情報:

グラフィック社

http://www.graphicsha.co.jp/detail.html?p=42540


(担当T)

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