今回は、中西あきこ著の『されど鉄道文字 駅名標から広がる世界』をご紹介します。
日ごろ電車を利用する中で欠かせない案内や駅名の表示に使用されている書体が、どのようにして選ばれたのか気になりました。タイププロジェクトのAXIS Fontも西武鉄道のサインシステムに使用されており、本書で言及されている鉄道で使われてきた旧い文字から現在までのつながりに興味を持ち選書しました。
職人による手書きから始まった国鉄の駅名標に使われた書体の「すみ丸ゴシック」。本書は当時を知る関係者やエピソードにあたって書体がどのようにして書かれその形になったのか、鉄道文字の現在までの変遷を丁寧に辿っています。
人々が鉄道を快適に利用するために、職人それぞれが腕を揮って文字を書いたことや、それを整備して鉄道をとりまく状況や時代の変化に合わせて永らえるために守ってきた人の「良くしていこう」という姿勢が伝わってきます。魅力的な鉄道文字から、長く愛され使われ続ける文字について考えられる一冊です。
続いて『されど鉄道文字』に関連して弊社の鈴木から選書へのコメントです。
終章にある中西さんの指摘「一つの書体が長らえるヒント、それはおそらくリデザインにある」は、私も同感。都市フォントのお手本的存在と考えてきたロンドンの地下鉄書体ジョンストン・サンズが例にあがったくだりでは思わず手を打ちました。鉄道書体とリデザインを主題として掘り下げたい人には『ジョンストンのロンドン地下鉄書体』がおすすめ。継続性の観点がますます重要になってきた昨今『されど鉄道文字』と合わせてどうぞ。
書籍情報:
『されど鉄道文字 駅名標から広がる世界』
著者:中西あきこ
発行:鉄道ジャーナル社
購入情報:
現在品切れで、アマゾンでは中古品が購入できます。
https://www.amazon.co.jp/されど鉄道文字―駅名標から広がる世界-中西-あきこ/dp/4415320899
書籍情報:
『ジョンストンのロンドン地下鉄書体』
著者:ジャスティン・ハウズ
翻訳:後藤吉郎
発行:烏有書林
購入情報:
https://www.amazon.co.jp/ジョンストンのロンドン地下鉄書体-―-Johnstons-Underground-type/dp/4904596013
(RK)