今回は、杉浦康平編の「文字の美・文字の力」を紹介します。
この本にはアジア圏の様々な文字意匠がまとめられています。韓国の文字絵、京都の「大」文字焼きや、「壽」を印した中国の隈取り、クメールの男性の肌に広がる文字護符の文身など。筆者のアジア文字研究の資料の中から選ばれて掲載された文字意匠は、80点に及びます。
本書は、それらの文字意匠を特徴ごとに分けた5つの章で構成されています。「文字液が流れる文字」「文字を纏う」「文字を戴く(かぶる)」「文字を運ぶ」「文字と暮らす」の5つで、「文字を纏う」では民族衣装と文字。「文字を戴く」では宝冠と文字……といった具合に、章に関連する装飾品と文字が並び、作り手が装飾品に込めた想いを文字から垣間見ることができます。
著者のコメントに「いずれもが意表をつく場所に現れ、想像を超える姿態をもつ文字達です。」とある通り、現代ではあまり見ない文字の扱われ方とフォルムが載っています。先人達は文字に想いを乗せ、身近に扱い、文字の形そのものにも魅力を見出していたように感じます。「単なる記号に止まらない、記号性をはみ出した文字の活力」がそこにはあります。
全ての文字意匠に解説もついているので、字の形が好きな方や、人と文字の文化に興味がある方にオススメできる一冊です。先人達と文字の関わり方を知ることができます。
以下、タイププロジェクトの代表・鈴木功から『文字の美・文字の力』へのコメントと関連書籍の紹介です。
文字は身近にあって間口が広いため、興味をもちはじめるとキリがない。それに加え、奥が深くて鬱蒼としていて、いちど迷い込んだら出られなくなる。というのは大袈裟だが、文化の底力が文字に宿ることを『文字の美・文字の力』は教えてくれる。
本書への言及もある『文字と書の消息』の著者が書いた『書のひみつ』は、筆文字を線で読むための入門書。いっけんソフトだけど本格的なガイドブックです。文字に深入りするまえにどうぞ。
書籍情報:
『文字の美・文字の力』
構成・編:杉浦康平
発行:株式会社 誠文堂新光社
購入情報:
公式サイトでは現在品切れで、hontoから購入できます。
https://honto.jp/netstore/pd-book_03058138.html
書籍情報:
『書のひみつ』
著者:古賀弘幸
イラスト:佐々木一澄
発行:朝日出版社
購入情報:
https://www.asahipress.com/bookdetail_norm/9784255009988/
(NM)