今回は、竹村真一著の『明朝体の歴史』を紹介します。
本書は紙や布についてや印刷の起源から始まり、文字や書体の変遷、中国での明朝体の発生にいたるまでの経緯、そして日本に伝わって定着するまでの過程がまとめられています。
楷書が変形してどのように明朝体になっていったかについての章では、版下となる書かれた文字と書いた人に対する気持ちや、書道的な持ち味を捨てられずに残った楷書の筆跡が明朝体の読みやすい形として抽象化されていったという記述は、明朝体にいたるまでの形が文字の彫りやすさ、分業化、能率の向上のみではない変遷の仕方が興味深かったです。
明朝体の形の変化が追えるような、経典などの版本の図版も多く載っています。
それらの明朝体のウロコについて分類された表は、現代で目にしている三角形とは異なって上に高くはねあげているものなど形にバリエーションがあり面白く、筆の運びや流れからきているものだと改めて感じました。
続いて『明朝体の歴史』に関連して弊社の鈴木から選書へのコメントです。
画期をなした書体がどのような変遷を経て様式化され定着するに至ったか。書体デザインに携わる者にとって興味の尽きないテーマである。残念なことに書体の移り変わりを丁寧に読み解いた本は少ない。その意味で『明朝体の歴史』は貴重な一冊といえよう。加えて『文字の文化史』は、概説書ではあるものの、道具および素材の視点から漢字書体の変遷を把握するのに適している。
書籍情報:
『明朝体の歴史』
著者:竹村真一
発行:思文閣出版
購入情報:
https://www.shibunkaku.co.jp/publishing/list/4784204474/
https://www.kosho.or.jp/products/detail.php?product_id=369139647
在庫切れですが、古書で購入できます。
書籍情報:
『文字の文化史』
著者:藤枝晃
発行:岩波書店
購入情報:
https://www.amazon.co.jp/文字の文化史-同時代ライブラリー83-藤枝-晃/dp/4002600831
こちらも在庫切れですが、古書で購入できます。
(RK)