書体づくりの舞台裏「目玉」

弊社の以前の作業環境では、元データにエラーのあるグリフを「目玉」と呼ばれるアイコンへ置き換えてフォントを出力する設定がありました。一つ目の黒い球体に無数の枝か触手のようなものが生えたなんとも禍々しい姿をしています。視線を落としているのかこちらを見下ろしているのかわかりませんが、私にはこれが物言いた気な表情に見えなくもないのです。このデザインは、私たちを激励するための開発エンジニアの遊びだったようですが、エラーが多くてたくさんの目玉が並ぶと無言の圧力を感じます。ともかく早くエラーを直して目玉にはいなくなってもらわなければなりませんでした。

フォント制作の現場以外でもいろいろなところで近い姿の妖怪や神などが確認できるので、このアイコンも「目玉」ではなく正式な名称があって、エラー修正を訴える以外の能力があるのかもしれません。しかしそういった謎を解決するタイミングは見つけられないまま、社内フォント制作のシステム更新があったために最近「目玉」が表示されることはなくなってしまいました。会えなくなるとそれはそれで寂しいものです。

おまけ
「目玉」と近い姿の妖怪や神などは、知る人ぞ知る存在ではないでしょうか。ゲゲゲの鬼太郎「バックベアード」、クトゥルフ神話「シアエガ」、ダンジョンズ&ドラゴンズ「ビホルダー」というように複数の創作で登場していて、それらもさらにいつくかのモデルが推察されていたりします。おそらく日本で最も有名なのは「バックベアード」で、アニメにも繰り返し登場していますし、グッズ販売があったり、ネットミームになっていたりもします。エンジニアの遊びならネットミームの「バックベアード」かと最初は思ったのですが、「バックベアード」の場合は球体から生えているものが枝っぽく直線的で何股かに別れている形状で描かれることが多く、その点「シアエガ」はウネウネとした触手で描かれるのでこちらの方が「目玉」に近いと私は考えています。そういえば、今年5月に劇場公開のドクター・ストレンジに登場するモンスターも「目玉」の仲間かもしれませんね。

(担当T)

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