TPの書庫から『ジョンストンのロンドン地下鉄書体』

今回は、ジャスティン・ハウズ著、後藤吉郎 翻訳の『ジョンストンのロンドン地下鉄書体』を紹介します。 1916年にロンドン交通局のために制作された地下鉄書体のジョンストン・サンズ。本書は書体を制作したエドワード・ジョンストンの功績や書体の制作過程、ブルズアイのロゴやリデザインされたニュー・ジョンストンについてなど豊富な資料とともに紹介、解説されています。 試行錯誤していくつも書か…

TPの書庫から『文字の美・文字の力』

今回は、杉浦康平編の「文字の美・文字の力」を紹介します。 この本にはアジア圏の様々な文字意匠がまとめられています。韓国の文字絵、京都の「大」文字焼きや、「壽」を印した中国の隈取り、クメールの男性の肌に広がる文字護符の文身など。筆者のアジア文字研究の資料の中から選ばれて掲載された文字意匠は、80点に及びます。 本書は、それらの文字意匠を特徴ごとに分けた5つの章で構成されています。…

TPの書庫から『されど鉄道文字』

今回は、中西あきこ著の『されど鉄道文字 駅名標から広がる世界』をご紹介します。 日ごろ電車を利用する中で欠かせない案内や駅名の表示に使用されている書体が、どのようにして選ばれたのか気になりました。タイププロジェクトのAXIS Fontも西武鉄道のサインシステムに使用されており、本書で言及されている鉄道で使われてきた旧い文字から現在までのつながりに興味を持ち選書しました。 職人に…

今月の一冊(2021年12月)『街で出会った欧文書体実例集 -THE FIELD GUIDE TO TYPOGRAPHY-』

今回は、Peter Dawson 著、手嶋由美子翻訳の『街で出会った欧文書体実例集 -THE FIELD GUIDE TO TYPOGRAPHY-』をご紹介します。 約120の欧文書体の概要と実際の使用例写真、同カテゴリー書体の比較解説がまとめられています。300ページ越えとボリューミーですが、基本的に1書体1見開きなのでまずは気になる書体だけでも気軽に読めるのが嬉しい一冊です…

今月の一冊(2021年11月)『デザインワークにすぐ役立つ欧文書体のルール』

今回は、カレン・チェン(Karen Cheng)著、白井敬尚 監修、井原恵子 翻訳の『デザインワークにすぐ役立つ欧文書体のルール』を紹介します。 こちらは2006年に『Designing Type』として出版された本の日本語翻訳版です。 欧文書体の歴史や書体制作の基礎知識がまとめられています。欧文書体のデザインには、大文字・小文字・数字・記号などカテゴリーの異なる文字群を一つの…

今月の一冊(2021年10月)『タテ書きはことばの景色をつくる-タテヨコふたつの日本語がなぜ必要か?-』

今回は、熊谷高幸著の『タテ書きはことばの景色をつくる-タテヨコふたつの日本語がなぜ必要か?-』をご紹介します。 縦書き減少・横書き増加の傾向にある現状を捉えつつ、様々な実験や調査の結果から日本語を分析し、縦書きと横書きが共存する日本語の魅力を再発見していく内容です。 タテヨコ共存を含む日本語の特異性は文中の要所要所でも示されますが、そのような言語を日常的に使い自身の感覚と擦り合…

今月の一冊(2021年9月)『漢字とカタカナとひらがな-日本語表記の歴史-』

今回は、今野真二著の『漢字とカタカナとひらがな-日本語表記の歴史-』をご紹介します。 日本語表記が現代の漢字仮名交じりに至るまでの紆余曲折を、様々な歴史資料から読み解いていく内容です。古墳時代の銅鏡に始まり『古事記』『万葉集』『平家物語』など誰もが知るような資料も扱われ、日本語学者である著者がそれらの表記をじっくりと細かく観察していきます。 私が特に興味が惹かれたのは書体に注目…

今月の一冊(2021年8月)『Scripts: Elegant Lettering from Design’s Golden Age』

今回は、Steven Heller、Louise Fili 著の『Scripts: Elegant Lettering from Design’s Golden Age』を紹介します。 欧文の筆記体(スクリプト体)の全盛期である19-20世紀のヨーロッパ、アメリカで描かれたスクリプト体を集めたビジュアルブック。看板やパッケージなどのレタリングから、活字書体の見本帳の…