欧文イタリック05「イタリックの傾斜1」

本シリーズの前回記事「イタリックのデザインプロセス」の中でイタリックと正体の比較ポイントの一例として文字の傾斜を挙げました。傾斜の強弱は組まれた文全体の印象を左右するので、イタリックの制作やフォント選択の際に着目すべき重要な要素です。

イタリックはもともと速記用の筆記体を活字化した書体のため、傾斜角の強弱は筆記速度の強弱に関連しています。手書きで横書きの文章を書く場合、早く書こうとすればするほど文字は筆記方向である右側に傾いていく傾向があります。そのため、大きく右に傾いたデザインというのはスピード感のある動的な印象をもたらし、正体に近いほど落ち着いて静的な印象を与えることが多いと言えます。

また、傾きの強さは正体と混植されたときのイタリックの目立ち具合にも影響します。
傾きが強いと正体との字形の差が大きくなり、イタリックで組まれた部分が際立って見えてきます。

実際のイタリックの制作プロセスでも、初期の段階で角度の異なるデザインのパターンをいくつか用意し、正体との混植テストをするなどして全体の雰囲気や目立たせ方を調整することがよくあります。

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