プロダクションタイプとの協業

アルピーヌフィットフォントプロジェクト

Production Type (プロダクションタイプ) は、早くて楽しいをモットーとするフランスの伝統的な自動車メーカーであるAlpine (アルピーヌ) 社のために、包括的なフォントプログラム「Alpine Ascension」を開発しました。タイププロジェクトは、Alpine Ascensionファミリーに加わる日本語フォントとして、「Alpine AXIS」を提供しました。Alpine AXISは、フィットフォント技術により、Alpine Ascensionに合わせてAXIS Fontのウエイトを調整しています。タイププロジェクトが開発したフィットフォントは、フォントのウエイトやコントラスト、字幅を変更した場合でも、字画の比率が適正で常にバランスの取れた状態を保つ機能を備えています。

Alpine Ascensionを開発した、 プロダクションタイプの創業者であるJean-Baptiste Levée (ジーン・バプティスト・レビー)氏にお話をお聞きしました。

1. プロダクションタイプ社について教えてください。

フランス パリを拠点としたデジタル タイプデザインの会社です。私たちは、デザインプロフェッショナル向けのリテールフォントのオンラインショップでの販売から、製造業、ハイブランド、ファッションやメディア業界向けのカスタムフォントの開発まで幅広く行なっています。

私は芸術性の表現として、歴史とテクノロジーを両立させるというアプローチで系統的に作業を行い、デザイナーにとって機能的であり使用範囲の広いプラットフォームとしてフォントを制作しています。これまでに、製造業や映画業界、ファッションや出版向けに100を超えるタイプフェイスをデザインし、多くの賞を受賞しています。また、海外でも紹介され、フランス国立図書館と国立芸術センター、シカゴのニューベリー図書館やヨーロッパのいくつかの印刷博物館で常設コレクションとして展示されています。

2. アルピーヌプロジェクトはどのように始まったのでしょうか。

私たちは、アルピーヌのリブランディングを依頼されました。最初に取り組んだのは、ブランド価値を引き出す新しい専用フォント開発のために、アルピーヌのロゴを変更することです。まず、ロゴの「A」の先端部分の長さと鋭さを修正し、角度を調整しました。最終的に、それまでのロゴデザインへの微妙な改良点を加えることで、先端部分の角度と斜めのラインのバランスが向上し、まとまり感のあるワイドサンセリフになりました。新しい書体となるAlpine Ascensionは、このロゴを基本としてタイプフェイスをデザインし、フォントセットとして拡張しました。

3. Alpine Ascensionについて教えてください。

アルピーヌ社の車は、スピード、軽快さ、軽量感などで知られていますので、これらの要素をフォントに反映しなければなりません。また、紳士に選ばれてきたということも重要なポイントでした。私たちは50年代と60年代のフランスの書体について調べるところから始めましたが、すぐに21世紀の書体として開発するという決定をしました。

グローバル企業のためのフォントを開発するには、ラテン語以外の言語圏での使用を前提とする必要があります。アルピーヌ社の場合、最初に必要となる言語サポートは日本語でした。私たちは、タイププロジェクトのエキスパートと協業することで、Alpine Ascensionに合わせて調整したAXIS Fontを、Alpine AXIS として提供することができたのです。これにより、Alpine Ascensionファミリーは、アルピーヌ社のメッセージをヨーロッパ全土と日本に届けることができるようになりました。

4. どのようにしてタイププロジェクトを知ったのですか?

いくつかの国際カンファレンスに参加した際に知りました。タイププロジェクトのアプローチは、私たちととても良く似ていると思っています。革新的で進化的、そしてデザイン品質においてとても厳しい目を持っているところです。

5.タイププロジェクトについて、そしてAlpine AXISについてどう思いますか?

可用性、コミュニケーション、価格の明快さ、対応の柔軟さといったいくつもの要素のバランスがとても良いと思っています。タイププロジェクトは、これらすべての項目において最高得点でした。この評価により、私たちがデザインしたフォントとスムーズにマッチさせるフォントとしてAXIS Fontを選択しました。

6. フィットフォントサービスについてどう思いますか?

フィットフォントが、ブランドの一貫性を保つための重要なポイントでした。フィットフォントは、リテールフォントとカスタムフォント双方を最大限に活用し、最適な価格で、お客様への完璧な提案を実現してくれました。高い品質を維持したまま、ブランドの声を日本市場に広げることを実現したのです。

7. フランス国内、または世界的なコーポレートフォント、ブランドフォントのトレンドについて教えてください。 

ブランディング市場ではサンセリフ体が主流ですが、スクリプトフォントや表現力豊かなフォントも強いですね。カスタムフォント市場には、2つの傾向があります。私たちは、お客様に革新的であり、かつ長く使われる書体を提案しています。ですが、デザイン品質が高いとは言えない書体を短期間に提供するケースも目にします。

8.現在進めているプロジェクトと、これから始めたいと思っていることを教えてください。

私たちは、雑誌やブランディング向けなど幅広く使えるリテールフォントを増やしています。今年後半には、いくつかのフォントファミリーをリリースする予定です。また、同時にカスタムフォントの開発も続けていますが、そちらについては時期が来たら公表することにします。

 

(写真/Julien Lelièvre)