タイポテーク ピーター・ビラク

Webフォントの先駆的な構想を導入

オランダのハーグに拠点を置く書体メーカーTypotheque(タイポテーク)の創業者であり、 ハーグ王立美術学院のタイプ & メディア研究科教授の Peter Bilak(ピーター・ビラク)氏に、 フォントの開発についてお話しをお聞きしました。

1.タイポテークについて教えてください。

1999年設立のタイポテークは、私と Johanna Bilak(ヨハンナ・ビラク)、Nikola Djurek (ニコラ・ジュレク)の3人で共同運営しています。私たちの書体は、これまで国際的に高い評価を受け、ニューヨーク TDC、グランシャン、ヨーロピアンデザインアワードなどの数々の賞を受賞し、多くの書籍や雑誌で特集されました。また私は、非ラテンタイポグラフィーへの貢献により、2012年にメトロポリス誌の「12人の変革者」の1人に選出されました。

2009年、私たちは商業的な書体メーカーとしてははじめて、書体ライブラリー全体のWebでの使用を許諾する Webフォントの先駆的な構想を導入しました。タイポテークには TPTQアラビックという姉妹企業もあります。TPTQアラビックはアラビア文字書体に特化しています。

2.タイポテークで、人気のあるフォントについて教えてください。

タイポテークの主力となっているフォントファミリーは Fedraです。これは、印刷でもスクリーン表示でも非常に使い勝手が良く、サンセリフ、サンセリフコンデンス、セリフ、モノスペース、ディスプレイがあり、ラテン系文字、キリル文字、ギリシャ文字、アルメニア文字、アラビア文字、ヘブライ文字、デーヴァナーガリー文字、タミール文字、ベンガル文字、マラヤーラム文字を含み、数百の言語に対応しています。

もう1つの重要で大きなフォントファミリーが Gretaです。セリフとサンセリフ、そしてモノスペースを複数の字幅で用意しています。Gretaのサンセリフには80のスタイル (10段階の太さと4段階の太さとそれぞれのイタリック) があります。Gretaは、アラビア文字、ヘブライ文字、キリル文字、ギリシャ文字、デーヴァナーガリー文字を用いる言語に対応しています。このようなフォントはユニークな存在であり、また現在のところこれらの言語を対象としたタイプフェイスの中では最大のファミリーです。

タイポテークの販売用ライブラリーは200以上のさまざまな書体ファミリーで構成しており、2000以上のフォントをご利用いただけます。

3.最近新しくリリースしたフォントはありますか?

私たちは毎年4回新しい書体を発表して、定期的に新しいデザインを加えています。最近では、冒険的に錯視を取り入れたWindというバリアブルフォントや、Brennerという他に類を見ない編集用書体システムを発表しました。

4.オリジナルフォントとカスタムフォント開発の割合はどれくらいですか?

タイポテークはコーポレートフォントも数多くデザインしています。たとえば、パリのメトロ、Mozilla、世界報道写真財団、ウィーン国際空港などで使用されている書体を手がけました。しかしながら、最も重要なのは依然として販売用の書体コレクションで、80%の作業時間を費やしています。

5.お客様はどのようにタイポテークのフォントを使用していますか?

私たちは、お客様と直接コミュニケーションをとり、フォントを最大限に活かす方法について助言させていただいています。お客様は世界各国のデザインエージェンシーおよびブランドエージェンシーで、特別なメッセージを発したり、ブランドを印象付けたいときに、私たちのフォントを使っています。

6.タイポテークのフォントは、どのようなデバイスに搭載されていますか?

私たちのフォントは、様々な方法で利用されています。モバイルアプリケーションへの組み込みや空港の電子サイネージなど、ソフトウェアとハードウェアの両方で利用されています。またその一方で、従来の印刷物やWebサイトでも使われています。Webフォントの標準策定の一助となり、また、Webフォントのライセンシングを最初に行った書体メーカーとなったことから、数多くのWebサイトで私たちのフォントが使われていることをとても誇らしく感じています。

7.タイポテークのフォントを購入できる国はどこですか?

私たちは主にオンラインで販売しています。200以上の言語への対応が可能となっているので、世界中の全ての国から購入いただけます。

8.現在進めているプロジェクトと、これから始めたいと思っていることを教えてください。

タイポテークでは複数のプロジェクトが同時進行しています。現在、最も売れ筋のフォントコレクションの拡充のために、デーヴァナーガリー文字とタミール文字の開発を行っています。また、とても遊び心のあるラテン文字系フォントの作業も行っており、2019年にその発表を予定しています。多くの進行中のプロジェクトは発表までに2、3年を要しますが、タイポテークとして満足のいく水準、数十年にわたってお客様にお使いいただける水準に達するまで、もっと長い時間を費やすこともあります。例えば、Fedra Sansは2001年のデザインですが、現在でも最も売れているフォントであり、今でも改善と言語サポートの拡張を図っています。つまり、私たちのフォントを購入されるお客様は、この先長期間にわたってお使いいただけます。

9.オープンソースやフリーフォントについてどのように思いますか?

関わる人の数が多くなり過ぎると、デザインと創造性が十全に発揮されなくなってしまいます。これがオープンソースのタイプフェイスにはあまり創造的価値が無い理由です。オープンソースによる取組みは、コミュニティによる協力に適していて、より技術的でデザイン主導ではない作業に向いていると言えます。

無料のフォントというものは有り得ません。フォント制作には費用と人材が必要で、誰かがその2 つを負担しなければフォント制作は出来ないのです。通常は大企業がそれらを負担しますが、その結果、完成するフォントが無料というわけにはいかなくなります。大企業が無料のフォント制作を行う時には、必ず意図を持って行うのだということに気づいておかなければなりません。そして、そうしたフォントに依存してよいのかを判断する必要があります。

10.タイププロジェクトについてどう思いますか?

私たちは、多くの言語を対象としてフォントをデザインしていますが限界もあります。日本語のフォントは制作できないのです。そのため、高品質のタイプフェイスを制作できる日本のエキスパートと協業することには大きな意味があります。私たちが制作するフォントが、さらに高い価値を持ち、新たなコミュニティの役に立つことを望んでいます。

11.フィットフォントサービスについてどう思いますか?

タイポテークはフィットフォントが重要なサービスであることを認識しています。フィットフォントは、他のフォントの可能性の幅を広げ、各地域のユーザーがグローバルにフォントを使用することを可能にします。私たちは、フィットフォントとの協業に心を躍らせています。