朝日新聞東京本社 メディアビジネス局 業務推進部 アートディレクター 末松 学史氏 株式会社 テキストハウス チーフグラフィックデザイナー 宮本 一歩氏

「スピード」で選ばれる書体

朝日新聞社メディアビジネス局は、コンテンツや取材力を活かしながら広告特集を制作し、トーン&マナーを管轄しています。1 ヶ月に60 件以上となる広告特集は、テキストハウス社を始めとしたブレーンとなる制作会社とともに、クライアントの要望を聞いてから平均3~4 週間で制作され、常に10 本以上のプロジェクトが同時進行しています。

「新聞広告の制作は、ほとんどを瞬時に決めていかなければなりません。それは制作本数の多さや期間の短さが理由ですが、『瞬時に決めること』が新聞づくりに合っているのです。読者は新聞を開くと同時に、興味があるかどうかを判断します。作り手も、時間をかけてこなれたものにしてしまうのではなく、瞬時に判断することで読者との感覚が合っていくと思っています」と、メディアビジネス局 アートディレクターの末松氏は語ります。

新聞広告制作では、初稿の段階でフォントやレイアウトの変更、カラーやトーンの修正などのすべてを決定するため、パソコンでの作業は数日でおこなわなければなりません。

「TP 明朝は他のフォントに比べて微調整が少ないという印象です。そのままで違和感がありません。小ぶりにつくられている仮名を大きくする、感嘆符の前後に半角スペースを入れるなどの指示で時間をとることがありません。分刻みでの入稿ですので、制作時間を削減して効率よく作業ができるので助かっています」(末松氏)

朝日新聞の本文は朝日新聞明朝と呼ばれているオリジナルの書体が使われていますが、広告ではいろいろなフォントが使用されています。ゼスプリ社の広告では、従来のフォントにはない新しさと、キウイの親しみやすさやフレッシュさを表現し、商品とよく馴染みながら読みやすいフォントを探していました。

TP 明朝はゼスプリの講演広告シリーズすべてで使用されている

テキストハウス チーフグラフィックデザイナーの宮本氏は「現代的で、ウロコが気にならない明朝体を探していました。それまで使っていた書体が時代に合っていない気がしてきたのです。一番よく使っているAXIS Font に合う明朝体を探していたのですが、選んだのはやはりTP 明朝でした」と語ります。宮本氏はTP 明朝に女性的な印象を持ったと言います。ゼスプリのセミナーでは講演者にも女性がいること、広告のターゲットが女性であることも採用の理由のひとつ です。

「TP 明朝は完成度が高くて現代的です。フォントの完成度の高さは、広告商品の完成度をより高くみせる効果があると思っています」(宮本氏)

朝日新聞社メディアビジネス局が制作する広告特集では、AXIS Font も多く使われています。従来は、ゴシックフォントのアウトラインを加工して新しい表現をする手法を使っていましたが、加工せずに使えるフォントとしてAXIS Fontを選択しました。明治メイバランスの広告では、購買者が興味をもつ情報を増やすとともに、読者に響くフォントとしてAXIS Font を選択し、前回の広告を上回る反響となりました。

「AXIS Font は現代的で、ふところが自然ですっきりして使いやすい。10 年ほど前から一番よく使っているフォントです。やはりAXIS Font とTP 明朝の組合せはぴったり合うので、意識していたわけではないですが、この組合せになることが多いですね」(宮本氏)

末松氏は、AXIS Font の導入によりデザインの幅が広がったと感じたそうです。「広告を作っていると、ひと文字の主張が気になることがあります。隣の文字まで侵食してお互いに攻め合っているようなイメージです。AXIS Font は、たとえば『ひ』などの長い部分が控えめだったり、『の』の周りが空きすぎないなど、研究されているなと感じます。ずっと気になっていた文字の細かい部分を解決してくれたAXIS Font は、『文字の特効薬』です」

宮本氏(左)
最初にTP 明朝を見た時は、あまり見たことはないけどすんなり入ってくるという印象でした。今ではすっかり馴染んでいるので、ずいぶん前からあるような気がしています。

末松氏(右)
ゴシックだと少し軽く感じ、明朝体だと真面目過ぎて商材に合わない。今までとは違う、それでいて読みやすいフォントをずっと探していていました。TP 明朝は、縦書きでも微調整がほぼ必要ないので助かっています。