スターバックスコーヒージャパン株式会社 クリエイティブスペシャリスト 河上 聡氏

語りかける声としての文字

一杯のコーヒーを通じて人の心を豊かにするというミッションを掲げ、世界66カ国に2万を超える店舗を展開するスターバックス。その日本法人であるスターバックスコーヒージャパン株式会社は、日本語表記に用いるコーポレートフォントとしてAXIS Fontを採用し、店内のポスターやメニュー、パンフレット、Webなど、幅広い媒体で活用しています。

スターバックスのコミュニケーションでは、多くの場合、飲み物やフードのビジュアルがメインであり、文字は主役ではありません。また、英語と日本語の併記が基本となります。このため日本語フォントには、強い個性を主張するのではなく、ビジュアルにすっと溶け込めること、英文とバランスよく共存できることが求められました。同社のクリエイティブスペシャリスト河上聡氏は次のように語っています。

「AXIS Fontとの出会いは美大生のとき、友人のなかで『AXIS』誌の書体があるというのが大きな話題になりました。はじめて見たときは、不思議な感覚でした。文字が誌面に溶け込んでいて、雑音が聞こえない、そのことにびっくりしました」

「クリエイティブを表現するにあたっては、ワールドワイドのガイドラインが存在し、Avenir (アヴェニール) など主に使用する3種類の欧文フォントが定められています。加えて、スターバックス店内などでご覧になったことがあるかと思いますが、ハンドグラフィティ (手書き)もフォントではありませんけれど、指定書体のひとつとなっています。

個々の制作物では、伝えたいメッセージに合わせ、そのなかから最適な書体を選んで使用するわけです。これらの欧文書体のどれと組み合せてもしっくりくる日本語書体として採用したのが、AXIS Fontです」

「スターバックスにおける全資材の日本語書体はAXIS Fontで統一するということを社内でルール化し、外部のデザイン事務所などにもブランドセッションなどを通じてそのことを伝えています」

日本語書体の選定にあたって行われた他のフォントとの比較・検証では、英語のメッセージとぶつかり合わない、組み上がったときに違和感がないという点で、AXIS Fontのアドバンテージが確認されました。また、欧文書体によって日本語書体を使い分けるというシステムも検討されましたが、そうすると日本語書体のデザイン上の主張が見えてしまい、ブランドとして伝えたいことがブレるという理由から、結果としてAXIS Fontひとつに絞られることとなりました。

「単にコーヒーを提供するのではなくて、人の心を豊かにするために何ができるのかという点について、僕たちは日々知恵をしぼっています。ですから、たとえばアイキャッチ的なコピーを開発しようとは思いません。誇張や煽るような表現はしたくないのです。ポスターやパンフレットなどでも、お客様に敬意と親しみを込めて直接語りかけているような、人間味あふれるコミュニケーションを目指しています。そのときに、僕たちからのお客様へのメッセージを伝える声として、AXIS Fontはまさにうってつけだと感じています」

(写真/千房 輝)