Tamotsu Yagi Design アートディレクター 八木 保氏

デジタルの対極から選んだ空気感のあるフォント

1984年にエスプリのアートディレクターとして渡米した八木氏は、広告やカタログ、パッケージ、プロダクト、ストアサイン等のビジュアルコミュニケーションでAIGAリーダーシップ賞を受賞するなど世界中から高い評価を得たのち、1991年にサンフランシスコにTamotsu Yagi Designを設立しました。1994年にはベネトンの香水『TRIBU (トリブ)』ボトルデザインでクリオアワードを受賞し、1995年にはアメリカ政府から芸術分野で活躍するアジア人に与えられる貢献賞を受賞しています。そして2000年にはアップル社に復帰したスティーブ・ジョブズ氏からの依頼で、世界で最初のアップルストアのプロジェクトディレクションを行いました。そのコンセプトは、現在でも世界中のアップルストアに展開されています。

日本では20年ぶりとなる八木氏の書籍『THE GRAPHIC EYE of Tamotsu Yagi ― 八木保の選択眼』では、サンセリフの本文テキストは和文・欧文ともすべてAXIS Fontが使われています。「AXIS Fontは発売当初から使っています。アクシス本誌で使われているのを見た時に、新しい空気感を感じてすぐに取り寄せました。ひとつひとつの文字に細かい配慮がされていると思いながら使っています。」

「アメリカではコミュニケーションツールとしてタイプフェースをよく使うので、使い方はいまだに勉強しています。タイプはずっと好きで、新聞を見ていいと思ったものは切り抜いています。」

原寸主義の八木氏は、現在でもコンピュータに頼ることなくデザインをしています。それは文字を組む場合でも同様です。「最終的にはスタッフがデジタル化しますが、私はコンピュータを一切使いません。原寸に切り抜いた文字を配置してスキャニングします。文字の選択は好みかどうかの一言につきますね。好みはその人のスタイルなのです。私が好きなのは変化よりも進化。AXIS Fontは私が求めていたテイストとスタイルにぴったりでした。」

日本で受けた文字を詰めるという教育と、アメリカで求められたものは違っていたと言います。「アメリカでは常にスマートフォンやタッチパネルに合う個性的な文字は何かと考えます。そこで大切にするのは詰めることではなく空気感。今は、印刷や映像媒体で文字を詰めてラインとして見せる時代ではありません。字数が多くても黒く見えないところもAXIS Fontが好きな理由のひとつです。ファミリーが増えているのもいいですね。」

広島市環境局中工場
ガラスに貼る切り文字にはAXIS Fontの抜け感が合う

クライアントからの依頼は書体選択を含めてデザイン全てにおける決定権を持つことがほとんどです。「ビジュアルコミュニケーションはデザインや書体を切り離して考えられない。だから全て任せたいというのがクライアントの希望なのです。デザインに合わせて書体を選択するということはありません。書体選びに迷いはないのです。AXIS Fontはいろいろなデザインで使っていますが、特にサインではほとんどがAXIS Fontです。切り抜き文字やエンボス、デボスの時の抜けがとてもいいのです。」

「紙とグラフィックデザイン—八木保の選択眼」展
株式会社竹尾 見本帖本店2F
「紙を収集していますが、それは印刷されたものが多い。良いデザインは、紙とデザ インが合っています。」