THROUGH 代表/アートディレクター 大津 厳氏

TP明朝で広がるWebデザイン

Webデザインを軸に、ロゴ、名刺、パンフレットなどのグラフィックを一貫して手がけるデザイン事務所THROUGH代表の大津厳氏。2015年春に渋谷ヒカリエで開催されたデザイン展『NIPPONの47人』では、岐阜県代表に選ばれ、そのシンプルで洗練された作品が注目を浴びました。以前からAXIS Fontを愛用していた大津氏は、デジタルディスプレイでの利用を前提として開発されたTP明朝にいち早く着目し、さまざまな企業のためのグラフィックで活用しています。

「2014年の初頭に、タイププロジェクトからTP明朝という新しい明朝体がリリースされたという情報をTwitterで目にしました。AXIS Fontの使いやすさを知っていたので、さっそくサイトをチェックしてみたのですが、まず、コントラストという概念が新鮮でした。ハイコントラストとローコントラストは、ともに知的な印象の明朝体でありながら、同時にまったく異なるテイストを持っていて、それぞれに最適な使用場面を想定できるのではないかと感じました」(大津氏)

TP明朝は、次世代の明朝体を目指してデザインされた書体です。ハイ、ミドル、ローの3つのコントラストを持ち、横組みで読みやすく、全角ベタ組みで美しく見えるように設計されています。「ディスプレイでの表示に最適化された明朝体というコンセプトに共感したので、Webデザインというフィールドで、これを使わない手はないなと思いました」と言う大津氏。ハイコントラストとローコントラスト、各6ウエイトの導入を決定しました。

大津氏が手がけたサイトのなかで、「mikketa(ミッケタ)」では、TP明朝のハイコントラストが効果的に使われています。シャープなハイコントラスト、そして、細いウエイトが選ばれたTP明朝は、余り糸などを活かしたデザインプロジェクトである「mikketa」製品のテクスチュアとシンクロし、空間に心地よい緊張感をもたらしています。「実はこのサイトのなかで、TP明朝は1箇所しか使っていません。にもかかわらず、そこに存在するだけで、サイトのイメージが変わってくる、そういう強さがこの書体にはあると思います」

一方、「渡邊万洋税理士事務所」「一宮西病院研修医募集」「株式会社ヤクセル」などのサイトでは、ローコントラストが選ばれました。「Webデザインで明朝体を使用するときは、しばしばアンチエイリアスの調整が必要となります。それに時間がかかったり、希望する印象にならない場合もあるのですが、TP明朝はウエイトが揃っていてコントラストの選択肢もあるので調整の過程でイメージがブレるようなこともありません。特にローコントラストは可読性が高く、Webで使い勝手のいいフォントです。落ち着いた表情なので、信頼感、清潔感を求められるシーンにぴったり合います」

「AXIS FontもTP明朝も好きで、さまざまな場所で使っています。デザイナーとしては珍しいと思うのですが、フォントは年間契約のライセンスではなく、自分が好きなものを購入して使いたいというスタンスでやっているので、タイププロジェクトには、また欲しくなるような素敵なフォントを出してほしいですね。AXIS Fontとは違う欧文フォントを見てみたい気もします。」

「AXIS Fontはシンプルで読みやすいというだけでなく、細字を見出しとして大きく使ったり、太字を見出しとして小さく使ったりすることで、デザインにメリハリを作れる、僕のなかでは万能のフォントです」