ブランドイメージを表現するフォント 株式会社ブリヂストン

ブリヂストンは1931年に設立されたタイヤ・ゴム業界におけるグローバルリーディングカンパニーです。コア事業であるタイヤ事業、タイヤ事業の強みを活かしたソリューション事業、免震ゴムやゴルフ用品、自転車等の化工品・多角化事業を展開しています。

ブリヂストンでは、ブランドマニュアルに推奨フォントが設定されていましたが、グローバルで使用が浸透せずブランド表現が統一されていないという課題がありました。そのためデザイン部門では2016年頃からブリヂストンブランドを表現するオリジナルフォントの研究を進め、2020年に新たなブランドアイデンティティを導入するにあたり、ブリヂストンらしさを表現するツールとしてMonotypeの協力のもと欧文書体Bridgestone Typeを開発しました。

「コーポレートフォントの導入の主目的は、社外に対して統一感のあるブリヂストンらしさ、ブランドイメージを表現することにありますが、ブリヂストングループ従業員にも日常業務で使用してもらうことでブランドに対する意識向上、一体感、プライドの醸成といったインターナルブランディング面での効果も意図しています。」とコーポレートブランド部門 BRIDGESTONE DESIGN部 上席研究主幹の酒本康平氏は述べています。

Bridgestone Typeのグローバル展開を進める中で、日本でのブランド表現のためにBridgestone Typeと組み合わせる和文書体の必要性が議論されました。そして、字形のマッチングスコアに加え、サインにも本文にも対応できる汎用性の高さ、コンデンス体を持っている点など和文書体の条件を最も満たす書体としてAXIS Fontが選ばれました。タイププロジェクトは、フィットフォント技術によりBridgestone Typeに合わせてAXIS Font のウエイトを調整し、「BridgestoneType TP」として提供しました。

「最終的にはデザイン面での親和性に加え、Webフォントを含む運用面や導入コストなどの点から総合的に判断した結果、AXIS Fontが最適であるとの結論となり採用に至りました。」とコーポレートブランド部門 ブランド管理課の森田明伸氏は語ります。

Bridgestone Typeはデザインコードという独自のプロセスでブリヂストンらしさを取り入れており、和文書体においてもこのプロセスによる広範な調査、検証を実施しました。また、検討時にはコーポレートフォントの有用性が関係部門内で認知されているだけでなく、綿密な検証の裏付けもあったため、決定後はスムーズに進んだといいます。

コーポレートブランド部門 BRIDGESTONE DESIGN部 上席研究主幹 酒本康平氏

「日本語の場合、欧文書体だけではコーポレートフォントとして完結することは難しく、せっかく作った欧文書体を活かすためには適切な和文書体との組み合わせが必要だと思いました。AXIS Fontの印象はすっきりと洗練されていて、とても現代的な和文書体という印象でした。今回のプロジェクトに当たり、実際にいろいろなテキストを組んで検討してみると、それだけではなく、柔らかさとかやさしさといった雰囲気もある書体であることに気づきました。しっかりとした機能に加えて、人に寄りそうしなやかさを感じさせる点で、ブリヂストンが目指すブランド表現との親和性を感じました。」(酒本氏)

欧文書体のBridgestone Typeは機能性、汎用性、デザイン性について妥協なく追求したコーポレートフォントとして2021年にグッドデザイン賞を受賞しています。和文書体のBridgestoneType TPでもこの特徴が引き継がれており、長期にわたり色あせない普遍性を感じると社外からも評価を得ているといいます。

「社内では既にブリヂストンらしいブランド表現の核として様々なグラフィックデザイン、ロゴや対外発表などに積極的に使われているのもその証左かと思います。」(酒本氏)

コーポレートブランド部門 ブランド管理課 森田明伸氏

「フォント一覧にBridgestoneの名前が出ていることに感動しました。使用した印象としては文字がくっきり、はっきり表示され受け手にとっても読みやすいフォントだと感じました。社内からはどのフォントを使えばよいか明確になったので、資料等作成時にフォント選択を気にする必要がなくなったという声もありました。」(森田氏)

BridgestoneType TPは名刺、封筒などのコーポレートアイテム、施設サイン、広報、広告宣伝、イベント、販促ツール、Webサイト等、さまざまな社外コミュニケーションでの使用が想定されています。

「まだ途上ではありますが、印刷物のような本文、Webサイトからサインシステムまで一貫性のあるブランド表現が実現してきていると思います。さらに、グローバル、関係会社においてもブランドの声を統一できることは非常に大きな成果だと感じます。」(酒本氏)

Webサイト

コーポレートガバナンスコードレポート

ブリヂストンでは、ブリヂストンらしいブランド表現と共にREGNOやPOTENZAといったプロダクトブランドらしい世界観の表現についても重要だと考えています。コーポレートフォントをブランドコミュニケーションの中心に持つことにより、ブランド表現の一貫性に加え、それぞれのプロダクトブランドらしい表現が活きる好循環が生まれることを期待しているといいます。

「今回のプロジェクトを通じ、ブランド表現やメッセージの統一という点で、フォントは非常に強力なツールだと感じています。また、オリジナルフォントがあることでグローバルを含めた社内のメンバーや部門の連携がスムーズになり、ブランド意識が高まるといった効果も感じています。」(酒本)

ブリヂストンは、「2050年 サステナブルなソリューションカンパニーとして社会価値・顧客価値を持続的に提供している会社へ」というビジョンの実現に向けて、2022年3月に、Eで始まる8つの価値(Energy、Ecology、Efficiency、Extension、Economy、Emotion、Ease、Empowerment)を定めた企業コミットメント「Bridgestone E8 Commitment」を制定しました。

「Bridgestone E8 Commitmentは、ブリヂストンらしい目的と手段で、従業員や社会、パートナー、そしてお客様と共に創出し、持続可能な社会を支えることにコミットしていくというものです。共創の実現には、ステークホルダーの皆さまから信頼されるブランドであり続けることが大切です。ブランド・デザインの立場から信頼されるブランドの醸成に努めたいと思います。」(森田氏)