表示組み用フォント

サントリーコミュニケーションズ株式会社

清涼飲料水やアルコール飲料で知られるサントリーは、健康食品や化粧品などの広いジャンルにもさまざまな商品を提供しています。サントリーコミュニケーションズ株式会社デザイン部は、商品コンセプトの開発から、パッケージデザイン、ブランディングに至るまで広く商品化に関わっています。

清涼飲料水やアルコール飲料の容器には、栄養成分や原材料の表示が必要です。特定保健用食品(トクホ)や機能性飲料、冷凍ができる飲料などでは、注意喚起の記載が非常に多くなります。また、法律の変更などにより、表示内容は増える傾向にあります。一方、環境への配慮という観点から、ボトル全体を覆っていたフルシュリンクラベルから幅の短いロールラベルへと変わってゆく流れもあり、成分表示スペースがより小さくなってきているという現状があります。

タイププロジェクトは、原材料や注意表記などの表示組みのためのカスタマイズフォントAXIS SUNTORY TPを提供しました。表示組み用フォントには、狭いスペースに多くの情報を記載でき、かつ可読性を維持するという命題がありました。AXIS SUNTORY TPでは、「文章を区切るための正円や星などは文章に埋もれないように」、「アルコール飲料に使用する注意表示は他と雰囲気を変えて目立たせる」、「ハイフンを調整して可読性を高める」といった具体的な要望を実現し、現在、多くの新しい商品でAXIS SUNTORY TPが使われています。

正円や星は、コンデンス・コンプレスの長体フォントでも100%の正体で設定。注意マークは角を丸くすることで、他と雰囲気を変えています。 

「成分などの表示部分は、法律と業界の慣例によりクリアしなければならないポイントがあります。表示組みをコンパクトにかつ読みやすくすることが、店頭における商品の強さに直結すると考えています。AXIS SUNTORY TPを導入することで、作業効率が大幅に改良されました。」と、サントリーコミュニケーションズ株式会社 デザイン部 デザインディレクター 西川 圭氏は語ります。

AXIS SUNTORY TP導入以前、サントリーでは表示組み用にカスタマイズした別のフォントを10年ほど使用していましたが、長く使う中でいくつかの課題も見えていたと言います。当時のフォントは、そのまま使用するのではなく、縦横の比率がベストに見えるように60%、もしくは80%の長体に変更して使用することが前提の設計でした。

「表示組みでは、字詰めの情報をいれずに適切な場所で改行しながら、文字をそのまま入力するところから始めます。以前のフォントは、文字を入力してから文字幅を変更するというひと手間が必要でした。さらに、ドットなどの記号部分を100%に戻したり、欧文を読みやすくするなどの工程が加わっていました。いくつかの使いにくい点と、調整箇所は明確にわかっていましたので、AXIS Fontをベースにしたカスタマイズフォントであれば、様々な課題を一気に解決できると考えて提案しました。」

表示組みを変えるのは、手間のかかる作業です。AXIS SUNTORY TPの導入でその作業が軽減されました。実際の作業が3割ほど早くなったことに加えて、精神的な負担の軽減にも大きく貢献してくれています。

表示組みに使う文字はインフラに近いものと考え、社内でのAXIS SUNTORY TPの使用に関しては、ルール化するのではなくマニュアルを提示して運用しているといいます。

「デザイン部全体が自然にAXIS SUNTORY TPへと移行しているということは、ストレスなく満足して使えているからでしょう。従来どおりのフォントを使った方が慣れているのは間違いないのですが、あえてAXIS SUNTORY TPに変えているデザイナーが多いということは、作業効率がいいという以上のメリットを感じているのだと思います。やはり、早くて綺麗に組めるという効果は大きいですね。作業は3割ほど早くなったと体感しています。テキストを流しただけでも、完成が予測できるレベルに組むことができます。」

サントリーでは、表示部分以外のデザインにもAXIS Fontを活用しています。伝える情報の内容に応じてAXIS Fontベーシック、AXISラウンド 50と100を使い分けています。たとえば、GREEN DA・KA・RAでは、機能性飲料としての機能感や信頼感と併せて、「親子を笑顔に」というテーマに見合う「やさしさ」の表現も必要でした。

「カチッと伝える情報はAXIS Font、やわらかく伝えたいところはAXISラウンド50、明るく見せたい部分はAXISラウンド100という具合に使い分けています。角が丸くなるだけで、まったく雰囲気が変わります。GREEN DA・KA・RA では主にAXIS Fontを基本書体として使っているのですが、雰囲気の調整のためにAXIS Fontを AXISラウンド50やラウンド100に変えても、組み幅が変わらないというのは新しい感覚でした。」

表示組みはAXIS SUNTORY TP、「Na 補給」はAXIS ラウンド100、「人工甘味料」「冷凍も美味しい」の部分はAXIS ラウンド50。伝える情報に応じてラウンドやコンデンスを選択

また、伊右衛門シリーズの「ジャスミン」では、アイスとホットでAXIS FontとTPスカイを使い分けています。

伊右衛門シリーズの「ジャスミン」にはAXIS Font(右)を、ホットの「ジャスミン」には、TP スカイを使用(左)

「お客様は、パッケージデザインを愛玩するために商品を購入されるわけではありません。ご購入いただいた商品が、お客様の生活に少しでも潤いをご提供できるものでありたいと思っていますので、パッケージデザインはインパクトよりも、生活に馴染むことが大切だと思っています。AXIS SUNTORY TPは、商品のデザインにすっと馴染んでくれます。『縁の下の力持ち』という表現が一番しっくりくるのですが、今となっては手放すことのできない大切なツールです。」