「ATypI 2019 TOKYO」のレポート第2弾です。タイププロジェクトのインターン・日暮拓人によるプレゼンテーション「機械学習と書体開発」のダイジェストをお届けします。
「僕は今、芝浦工業大学の大学院でコンピューティングデザインの勉強をしています。学部時代は書体の特徴を維持した文字の自動デザインについての研究をしていました。今日はその研究をもとにお話しします」
「今回作成したシステムでは、既存のフォントからたくさんの文字をディープラーニングで学習させます。具体的には何百種類ものフォントから2文字のペアを作り、そのペアの特徴をディープラーニングによって見つけ出してもらいます。実際に自動デザインを行う際には、1文字を入力とすることで、学習した結果から、ペアになるであろうもう1文字を作り出すことができます。ここで注意したいのは、決して学習したものの中から近いものが出力されるのではなく、コンピュータがゼロからデザインした新しい文字が出てくるということです」
「次に品質保証に使える機械学習技術の紹介です。このFont Finderというのは僕の開発したサービスなのですが、たった1文字の画像から候補となる書体を提示してくれます。このような技術は、クオリティチェックに使えると考えられます。たとえば、メインデザイナーが作成した基本文字に対して、他のデザイナーの作成した文字がマッチするかといった場面や、デザイン案が複数ある文字で、最もその書体らしいデザインを判断することができます」
「最後に、今まで紹介してきた技術が実際の仕事などで使えるかどうか、僕の考えをお話ししたいと思います。現状として、仮名では人がデザインしたものと見分けのつかない精度でデザインができています。そして、画像を入力とすることで、その書体を数値化や書体判定を行うことができています。部分的には、すでに実用レベルで技術が発展しているのですが、課題もあります。まず第一に、まだ十分な精度があるとは言えません。また、これは書体開発に限らず多くの分野で言われていることですが、機械学習によって作られたデータの権利の問題があります。さらに、ディープラーニングでは内部がブラックボックス化されてしまうことが多いので、なぜそのようなデザインになったかコンピュータは説明してくれません」
「しかし、これらの問題が解決されていけば、自動デザインによる、大幅な作業の効率化が行えます。たとえば、先ほど紹介した自動デザインの技術では1文字デザインするのに1秒もかかりません。また、人の目だけではなく、機械的にデザインの品質確認を行えるため、より安定したデザインを提供することができるようになります。問題が解決されるのは遠い未来の話ではなく、今後数年の間には、本当に使える技術として登場すると考えられます。僕は現在、日本のフォントメーカーと共同開発を行なっており、大学でもこの研究を進めているため、また新しいことを発表できればと思います」
プレゼンテーションの動画はこちらでご覧いただけます。
https://www.youtube.com/watch?v=va0NnxdgrqA
ATypI 2019 東京大会 : https://www.atypi.org/