ゲヒルン株式会社 代表取締役 石森 大貴氏/専務取締役 糠谷 崇志氏 

視認性で選んだベストなフォント

ゲヒルン株式会社は、安全保障を軸に「インフラストラクチャ」「情報セキュリティ」「防災気象情報配信」の3つの分野でサービスを提供するセキュリティ会社です。情報セキュリティでは、検査対象に合わせた擬似攻撃を実施し、システムの脆弱性や、開発者が想定していない挙動や問題を見つけ出し、課題の改善案を提出します。防災気象情報配信では、天気や台風の予報、地震・津波の速報や特別警報などのさまざまな防災情報を、ひとつのアプリケーションで提供するサービス「特務機関NERV(ネルフ)防災」の提供を開始しました。発売から1ヶ月で 27万ダウンロードを記録した「特務機関NERV防災」では、AXIS Fontが採用されています。また、ゲヒルンでは、コーポレートフォントとしてAXIS Fontを採用し、名刺やパンフレット、作画エンジンで使用しています。

「AXIS Fontには一目惚れだったので、会社設立の時に迷わずコーポレートフォントにしました。『特務機関NERV防災』に採用するフォントを決める際には、他のいくつかのフォントも検討しましたが、表現したいイメージと違っていました。デザイナーや開発チームからも要望が出て、やはりAXIS Fontが一番良いということになりました。」と、ゲヒルン株式会社 代表取締役 石森 大貴氏は述べています。

ゲヒルンでは、約20名の社員のほぼ全員がデザイナーかエンジニアで、開発はすべて内製しています。アプリケーションのデザインとUI/UXを担当する専務取締役 糠谷 崇志氏は、「私たちの事業は、自分たちが最初のユーザーだと思っています。だから、自分たちが納得するものしか世に出したくない。情報セキュリティでは自分たちが受け取りたいと思う報告書、防災気象情報配信では自分たちが使いたいと思うアプリを作りたい。『ユーザー視点を大切に』というところに一番強い思いがあります。作画エンジンで見慣れていたのもありますが、他のフォントではしっくりこなかったので、防災アプリでは初めて目にしたときからずっと好きなAXIS Fontを採用したいと思いました。」と語ります。

右:石森大貴氏 左:糠谷崇志氏

特務機関NERV 防災アプリは、地震や津波、特別警報や土砂災害といった防災気象情報を、被害が予想される地域で的確に認識できるように、気象庁と連携して国内最速レベルで配信するスマートフォン用サービスです。ゲヒルンでは、既存の防災アプリに対し、情報提供のスピードやユーザービリティ、デザインの部分で優位性があると考え、アプリケーションの開発に着手しました。

「危機管理は、物理の世界でも情報セキュリティでも同じです。情報セキュリティは、事業継続計画のための一部であり、災害対応は外せないリスクファクターですので、情報セキュリティと防災気象情報配信サービスは、繋がっている分野だと思います。2011年の東日本大震災から8年ほど、特務機関NERVという個人のTwitterアカウントで防災情報を配信していました。Twitterの場合、ひとつのアカウントで全国の情報を出すことになります。そこで、地域ごとに詳しい情報を届けるために、プッシュ型で情報を出すことを考え、特務機関NERV防災アプリを開発しました。」(石森氏)

アプリケーションから緊急地震速報をプッシュ通知するためには、気象庁長官から予報業務の許可を受けなければなりません。特定の地域での地震到達予想時刻と、予想される震度を出すための計算式を記述した申請書を1ヶ月かけて作成し、気象業務支援センターから気象庁との専用ラインを引きました。また、マナーモード時でも緊急アラートを鳴らすための重大な通知の契約にも時間がかかったと言います。

「気象庁では、警報が出た際に各自で地域ごとの情報を確認することを期待しているのですが、それが活用されていないというのが現状でした。特務機関NERV防災アプリでは、土砂災害警戒情報がでると1キロメートルごとのメッシュ単位でどこが危ないかがわかります。震度1などTwitterでは細かすぎて出していなかった情報も、アプリでは該当地域だけに表示できるようになりました。」(石森氏)

アプリケーションは、「美術的なもの」「技術的なもの」そして「哲学」を含む芸術作品に近いものと捉えるゲヒルンは、特務機関NERV防災アプリに自分たちの哲学を反映していると言います。そのため、デザインのコントロールを優先し、アプリケーションのビジネスモデルとしての広告収入を考えず、ユーザー利用規約にも他社の広告への誘導をしないことを明記しています。

「もっとも危険な場所を濃い紫にするなど、色で自分のいる地域のどこが危ないかを判断できるようにしています。説明がなくても、自然に必要な詳細情報に辿りつくような設計、そこにわれわれの哲学があるのです。」(石森氏)

ドイツ語で「頭脳」という意味を持つゲヒルンは、エヴェンゲリオンに由来しています。エヴェンゲリオンのファンだった石森氏と糠谷氏は、アプリケーション開発の際に、改めて公認の承認を得たことで「特務機関NERV防災」のデザインを変更しました。そのデザインは開発チームが驚くものだったと言います。

「寄せてはいますが、エヴェンゲリオンを前面に出したデザインにはしていません。防災アプリなので、黒を基本として色を控えめにするという基本的な方向性がありました。紫や赤は警告色なので、必要なときだけ出すようにしています。デザインやAXIS Fontに関しては、気象庁とエヴァンゲリオンシリーズの映像企画・製作会社である株式会社カラーからも、とても読みやすいと喜んでもらえました。」(糠谷氏)

特務機関NERV防災アプリのユーザーからも、とても読みやすいという声が多く届いているといいます。「『AXIS Fontだからダウンロードした』というユーザーもいました。AXIS Fontはそこにあるだけで知的な感じがするのと、重心が低いから安定性があります。また、視認性が高いので防災情報を伝えるのにベストなフォントだと思って採用しました。」(石森氏)

『ユーザー視点を大切に』というところに一番強い思いがあります。開発チームを第一ユーザーとしてみて、フィードバックをもらいました。自分たちが納得するものを、みんなで作っている感じです。

アプリは芸術作品に近いものだと思っています。ピカソやモネの絵に意見しても実現しないのと同じで、ユーザーからの要望を取り入れるという形式ではなく、自分たちの哲学を優先しています。